【完結】でも、だって運命はいちばんじゃない

鯖猫ちかこ

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 実際、どこもかしこも悠真さんのにおいがして堪らない。
 頭がばかになってしまいそうなくらい、甘くてくらくらして、蕩けそうで、でもふわふわして、しあわせ。
 だってずっと足んなかった。
 悠真さんがうちに来てくれたって、どれだけ近くにいたって、車の方がにおいがするなって思うくらいだった。
 この家全部が悠真さんのにおいがして、大きな巣みたいだ。家なんだからそのままその意味通り、当然ではあるんだけど。
 勿論悠真さんの服はまだ欲しくて、包まれたいっていう欲求はあるんだけど、おれの家よりもこの家の方が落ち着いてしまうくらい、悠真さんのにおいが溢れててしあわせ。

「今日の和音、すぐトんじゃいそう」
「んぇ……」
「もっと話したいけど……でもヒート中だもんね、こっちが優先だ」
「んッ……ん、う!」

 胸元をそっと指の腹で潰して、また腫れちゃってる、と呟く。
 自分じゃ加減出来ない?と訊かれて頷くと、次からは俺が触ってあげるね、と言われて、腰が揺れてしまった。
 お腹がきゅう、とした。
 ……そうか、もうひとりでしなくても、悠真さん、おれの発情期にあわせて休暇を取ってくれるんだ。
 多分、丸々一緒にいてくれるから、自分で慰める必要もなくなるってこと。

「痛い?」
「んっ、い、いたいぃ……」
「後で薬塗ったげる。暫くこっちは触らないでおこうね」
「うん……っひあ!」

 触らないでおこうね、なんて言った口でぺろっと舐めたりするから。
 変な声、出た。
 なのに悠真さんはにこにこしている。……引かないんだ?

「もー……和音が何したってかわいくて。嬉しい」
「……嬉しい?」
「嬉しいよ、だってやっとこうやって……ちゃんと和音といていいんだと思ったら、なんか……にやけちゃって、かお、戻んないかも」
「……」

 にこにこじゃないんだ、それ、にやけてるんだ?
 近くでその表情が見たくて、腕を着いて上半身を起こした。
 それを悠真さんは違う意味で取ったのだろう、ちゅう、と軽いキス。
 ……それだって欲しかったし、嬉しいけど。
 悠真さんの頬に触れて、じいと瞳を覗いて、でも恥ずかしくなって先に逸らしてしまうのは自分。
 誤魔化すように頬を首元に寄せた。
 ……やっぱりここ、においが強い気がする。

 強いにおいをかいでしまえば、猫がまたたびを与えられたように酔ってしまう。
 元々この部屋のにおいにくらくらしていたというのに。

「ゆうましゃ……さ、ん」
「うん?」
「も、おなか、っ、あつい……!」
「……挿入れてほしい?」
「んゔ……」

 耳元と頬にキス。
 自分から抱き着いてしまったから、離れないと悠真さんも動くことは出来ないのに、腕を離すことが出来なかった。
 甘えたり我儘を言う権利があるとわかったらこれだ、心を開いたひとにはすぐ甘ったれてしまう。

「……昨日はナカに挿入れたのは指だけ?」
「ンっ、ん~……」
「じゃあ少し慣らしておこうか、奥の方」
「ん、あ、う……ゔッ、ぁ、んっ」

 ゆっくりと悠真さんの指がナカに挿入ってくる。自分の指じゃ届かないとこまで。
 いつも慣らさなくてももいいって言うのに、悠真さんは必ず指で慣らす。少しだって痛い思いをさせたくないと。
 ……でもおれはその指だって気持ちよくて、でもすぐに足りなくなっちゃって、早く挿入れてって、そればっかりになっちゃうんだけど。
 慣らさなくたって、痛いのも一瞬だと思うけど。

「和音……」
「ん、ン、っう、ん……うぐ」

 悠真さんはおれの首元に触れるのがすきだと思う。
 おれをひっくり返したりまではしないんだけど、こうやって首元が近いと、首筋や噛み痕を舐めたり触れたりする。
 確かめてるのかな、その痕が消えたりしてないか。
 おれが悠真さんの首元のにおいにくらくらするように、悠真さんもおれのにおいにくらくらしてくれるだろうか。
 おれのにおいに夢中になってくれるだろうか。

「も、ッいい、ゆびっ、もういいからっ……」

 堪え性がないのもわかってる。
 でもこの躰で我慢しろっていう方がきつい。
 早くしてほしくて、誘う意味を込めて悠真さんの頬にキスをすると、驚いた表情をして、それから嬉しそうにはにかんだ。
 ……なにそれ、かわいい。

 悠真さんの短くなった髪を撫でる。
 前の髪型も格好良かったけど、これくらいも爽やかでいい。いいな、どんな髪型でも、すき、似合ってる。
 でもちょっと、いじわるな笑い方は似合わないかな。今の嬉しそうな笑顔の方が合う。
 どんな悠真さんだってもう構わないけど。

「……かわいいなあ、和音」
「え」
「和音は笑ってる時がいちばんかわいい」
「……笑ってた?おれ」
「うん、ごめんね、ずっと笑えない状態にしてて」
「んっ」

 本当は、頬への流れで唇にもキスをしようと思ったのだけれど、おれが悠真さんの笑顔に見惚れてしまったのと、またベッドに倒されたのとで距離が出来てしまった。
 自分で早くと強請っておきながら性急だな、とも思う。
 いつもより愛撫が少ないから。それを望んでる訳ではなくて、寧ろ、求められてるようで嬉しかった。
 悠真さんだって我慢をしていたのだと、おれがほしかったんだと、態度から、表情からわかるのが愛おしかった。
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