【完結】カミサマの言う通り

みなづきよつば

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3.ルーナ

3-3

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「さっきから失礼な。
なんですの? 
妙とか、ヘンって」

「だって、変なものは変なんだもの。
植物たちが、まるでおびえているように力を貸していたわ。
あなたの魔法は、無理矢理上から命令して押さえつけているみたい」

「この魔法は、村の……えーと、その、
由緒ある方から教わった、歴史ある魔法ですのよ!」

 思わず、「カミサマ」に習ったと言いそうになったが、
 なんとかごまかせた。
 カミサマのことは、絶対に秘密だ。カエデは胸をなでおろす。

「ふうん……。
あの村、わたしたち妖精は入れないのよねー。
あれも妙だわ」

「そりゃあ、魔物よけの結界がはってありますもの。
そんなの、アナタみたいな自称妖精は入れなくて当然ですわ」

「なんですって!」

 カエデとルーナはにらみあう。
 そこに、まあまあとサカキののんきな声が割って入った。

「ルーナもカエデも、そこまでにしとけよ。
ほら、ここで言い合いしてる場合じゃないだろ? 
早く熱病の薬を探しに行かないと」

 それを聞いて、カエデはルーナへの文句をぐっと飲みこみ、苦々しい顔になった。

「……悔しいけど、サカキの言う通りですわね」

「あら、何かワケありなのね。
熱病? 薬? 
薬を買いに、町へ行くの?」

 ルーナは興味津々だ。サカキは苦笑した。

「いや、薬になるのは特別な木の葉なんだと。
悪ィ、ほんとに時間がないんだ。
おれの大切な人たちが、おれたちの帰りを待ってる」

「ええ! 
じゃあ、森の中に入っていくの? 
やめておきなさいよ。あなたたち、まだこどもじゃない。
おとなは何をしてるのよ!」

「それは、カミサ……もごっ」

 カエデはあわててサカキの口を手でふさぐ。
 ここで、
「カミサマの助言によって、こどもふたりで行くことになった」
 なんて言えない。
 ルーナは話に夢中になって、ふたりのやりとりには気づいていないようだ。

「あの村の人たち、どこかヘンだものねー。
いつもこそこそしてるっていうか。
何か隠してるっぽいわね。
わたしのカンだけど。
それに、常識がない! 
わたしたち妖精を見つけたら、襲ってくるもの。
野蛮だわ~」

 ルーナはぶるぶると身震いした、のだろう。
 黒いもやがふるふるとゆれる。
 その間に、サカキは口元にあったカエデの手をはずし、
 ルーナを厳しい目でにらみつけた。

「……常識がない、とか、野蛮は言い過ぎだ。
村のみんなを、おれの家族を侮辱(ぶじょく)するな!」

 サカキの強い口調に、ルーナだけでなく、カエデもびくりと身をすくませた。

「常識のないヤツが、捨て子だったおれをひろってくれるか? 
野蛮なヤツが、おれをここまで育ててくれるか? 
何も知らないくせに、いいかげんなことを言うなよ!」

 昔、狩りに出ていた村人たちが偶然森の中で見つけた赤子がサカキだ。
 その後、サカキはカミサマに生誕の祝福をもらい、村長にひきとられた。
 なぜ捨てられたのか、本当の家族はどこにいて、何をしているのか。
 気にならないと言えばうそになる。
 それでも、サカキは本心からこの村の居心地がよいと感じていた。

「村全体がおれの家族みたいなもんなんだ。
だから……、だから、おれは絶対に熱病の薬を持ち帰らなきゃいけないんだ!」

 サカキの真剣な瞳に、カエデの胸が、とくんと脈打つ。
 ああ、なんてまっすぐな心なんだろう。
 カエデはそっとサカキの肩に手を置いた。

「そうですわね。必ず、任務を果たさなければ。
……ってことで、自称妖精さん、あなたとはここでお別れですわ。
ごきげんよう」

 今度こそ、ふたりは立ち去ろうとした。
 が、ルーナはカエデのサイドテールの先っちょをつかみ、引っ張った。
 思わずカエデはつんのめる。

「ちょっと! 
なんですの⁉ 
やめてくださいまし!」

「その、えっと……。
ごめんなさい! 
わたし、すっごく悪いこと言っちゃった」

 ふたりの行く先にふわんと移動し、ルーナは話を続ける。

「いろんな理由があって、あなたたちはここにいるんだものね。
それこそ、『何も知らないくせに』、
わたし、ひどいことばかり言っちゃったわ。
本当にごめんなさい……」

 サカキの言葉を引用して、しょんぼりとした声でルーナは謝罪した。
 それになんだか毒気をぬかれて、カエデはふう、と息をつく。
 サカキの次の言葉が予測できる。

「……よし、許してやろう。
次からは気をつけろよ?」

 にっかりと笑顔で、サカキはルーナの頭のあたりをぽんぽんと軽く指でたたいた。
 まったく、本当にどこまでもまっすぐなヤツだ。

「ありがとう、サカキ!」

 ルーナはふたりの周りをくるくると飛び回った。

「あのね、あのね。
わたし、この辺には詳しいの。
だから、おわびに、あなたたちを案内するわ!」

 カエデは嫌な予感に、ひくりと顔をひくつかせた。

「邪悪な気配にも敏感だから、魔物に襲われない道も知ってるしー。
回復魔法も使えるでしょ。
絶対役に立つわ!」

このあやしすぎる自称妖精は、どこまでついてくるつもりなんだろう。
カエデは考える。
目的地を知られたらまずいだろう。
ルーナに魔物の仲間がいたとしたら、待ちぶせされて襲われるかもしれない。

「残念ですけれど、間に合って……」

「おー、助かるよ。
この地図で分かるか? 
ここなんだって、ここ」

 サカキは地図を広げ、カミサマがつけた印を指差してルーナに見せた。

「だから、どうしてアナタはそうほいほいと教えるんですの!」

 ぐにににに。

「いひゃい、いひゃい、あにすんらよ!
(痛い、痛い、何すんだよ!)」

 カエデに思い切りほっぺたをつねられ、サカキは手足をばたつかせながら抗議の声を上げるのだった。
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