【完結】カミサマの言う通り

みなづきよつば

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4.まさかの仲間割れ?

4-1

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 結局、ルーナに先導されるかたちで、サカキとカエデは森を歩いていた。
 サカキは地図を見せた後のルーナの言葉を思い返す。

「ここかぁ……。
この辺り、邪悪な気配がすごいのよね。
だから、あんまり近づきたくないの。
残念だけど、案内できるのは途中までね」

 おや、とサカキは思ったが、笑顔でそれを隠した。

「おお、途中まででも十分ありがたいって。
サンキューな、ルーナ」

 サカキはカエデにほっぺをぐにぐにされた後、
 ひっそりと、ルーナの仲間の待ちぶせの危険性について教えてもらったのだ。
 まさか、本当にカエデの言う通り、
 こうやって途中で抜けて、仲間を集め、
 待ちぶせするのだろうか。
 ……分からない。

「遺跡が見えてきたわよ」

 空からのルーナの声に、サカキは考えを打ち切った。
 なるようになれ、だ。
 気づけばもう夕方だ。
 サカキはぐっとのびをした。

「遺跡かー。
これ、このまま真っ直ぐ行けないかなぁ」

 カミサマの話では、この遺跡は魔物が巣食う、危険な場所だとされている。
 また、侵入者をはばむため、
 いろいろなしかけが古代からそのまま残っているというのだ。
 だから、サカキとカエデは村を出る前に相談して、
 ここは回り道をしていこうと決めていた。

「サカキ、ここは安全が第一ですわ」

 カエデはサカキをなだめる。
 サカキは、相談の時もここを迂回(うかい)することをしぶっていた。
 それを、カミサマと村長、カエデで説得し、どうにか納得させたのだ。

「あら、いいじゃない、普通に通っていけば」

 空から降ってきたルーナの提案に、サカキとカエデは顔を見合わせた。

「えっ、マジで? 行けるの? じゃあ、行こうぜ」

「そんな、危なすぎですわ。拒否します」

 ふたりでまったく別のことを言い、また顔を見合わせる。

「危ないって……。
森と違って、魔物はいないわよ。
神聖な場所だもの。
わたしはよく水浴びに行くわ。
あそこの水、特別なのよ。
清らかでとても澄んでいて、あらゆる邪気をはらってくれるんだから」

「ちょっと待ってくださいまし。
魔物がいない? 
わたしたちの村では、あそこは魔物たちの巣になっている、
というのが常識ですわ」

 カミサマの言葉に従い、村人は遺跡に近づこうとしない。
 それなのに、ルーナはまったく逆のことを言っている。

「ええ? そんなことないわよ。
うーん、どうして、そんな話になってるのかしら」

 ルーナは、本心から疑問に思っているような声だ。
 それは、演技なのか否か……。
 必死に考えるカエデ。

「遺跡に行ってみてもいいんじゃねーか? 
もしかしたら、昔とは事情が違うかもしれないし」

 サカキの提案に、カエデの心はぐらつく。
 いや、でも、カミサマの言う通りにした方がいいのだ。
 カミサマの言葉は、絶対なのだから。

「サカキ、やはりここは回り道を……」

「それに、もし魔物がいたって、おれたちならなんとかなるさ」

 カエデの言葉をさえぎり、サカキは自信満々といった声で言った。
 サカキはウサギモドキの件を思い返す。
 初めての戦闘なのに、カエデとの息はばっちりあっていた。
 自身の剣も魔物に通用すると分かったし、カエデの魔法も強力だ。

「これが、ルーナの罠だったとしたら、どうしますの?」

 カエデはサカキの耳元でささやいた。

「罠だって?」

「そうですわ」

 カエデと小声で会話しつつ、サカキは片手で頭をぐしゃぐしゃとかきまわした。
 困った時のクセだ。

「でもさ、カエデ。
ルーナはおれのケガを治してくれたじゃん。
魔物の中でも、いいやつなんじゃないか?」

「それすら、わたしたちのことを油断させる罠だとしたら?」

 サカキは段々といらついてきた。

 カエデは、用心しすぎではないだろうか。
 ルーナに導かれて森を歩いている間、魔物にあうことはなかった。
 それこそ、ルーナが自分たちを気づかってくれた証拠なのではないだろうか。
 それに、一刻も早く薬をとりに行く必要があるのだ。
 そのことは、カエデもよく知っているはずなのに。

「おまえ、村の皆を早く助けたくないのか? 
この遺跡を通っていけば、かなり時間が短縮できるんだぞ」

 遺跡はちょうど、山を切り開いた中にできている。
 だから、回り道をすれば、遺跡を大きく回りこんで、
 山を登らなければならないのだ。
 それだけで、一日以上消費してしまうだろう。

「おまえも、おばさんのこと、心配じゃないのかよ?」

「心配に決まっているでしょう!」

 母のことを持ち出され、カエデの感情が爆発した。

「でも、ここで……、ここでわたくしたちが死んでしまったら、
もう終わりですのよ! 
あなた、それを分かってまして⁉」

 それを聞いて、サカキは頭に一気に血がのぼるのを感じた。
 なんだ、コイツ!

「死ぬ? 
おれたちがそんなに簡単に死ぬわけがないだろ? 
ウサギモドキの時だって……」

「毎回そう簡単にいくとは限りませんわ。
サカキ、確かにアナタの剣の才能にあふれている。
でも、今回ばかりは、うぬぼれがすぎるんじゃなくて?」

「はあ⁉ 
うぬぼれか、うまぼれなんて知らねーよ! 
でも、おまえがおれをバカにしてるのは分かった」

 サカキはそばに生えていた木の枝を折り、
 カエデにむかって剣のようにかまえてみせた。

「あら、失礼。
おバカさんにも分かりやすく言うと、うぬぼれっていうのは、
『たいして実力もないのに、自分がすごいと思いこんでいる』
ってことですわ」

 カエデもサカキにむかって、杖をかまえる。
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