【完結】カミサマの言う通り

みなづきよつば

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4.まさかの仲間割れ?

4-2

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「おれの実力、おまえ自身で味わってみるか? 
ちょっと魔法が使えるからって、
えらそうに説教しやがって」

「……やる気ですの?」

 ふたりとも、怒りをあらわにし、互いをにらみつけていた。
 いや、怒り以上の、憎しみがそこにはあった。
 このまま同士討ちを始めそうだ。

「沈みゆく太陽よ、われに力を貸したまえ。
閃光よ、はじけろ!」

 ルーナの呪文とともに、
 目を開けていられないほどのまぶしい光がサカキとカエデを包んだ。

「うわっ!」

「きゃあっ!」

 思わずふたりは目をおおった。

「しっかりして、ふたりとも!」

 ルーナの声だ。
 サカキは目をしぱしぱさせて、ルーナを探そうとするが、どこにいるか分からない。
 カエデも同じような状況だった。

「サカキは、右足のズボンのすそをめくってみて! 
カエデはたぶん、左の首筋の辺りよ!」

 わけがわからず、言われるまま、サカキは右足のズボンのすそをめくってみた。
 すると、ふくらはぎあたりで、何かヒルのようなものがうごめいてる。

「これは……?」

 取ろうとしても、
 ヒルのようなものはしっかりくっついいていてなかなか離れない。
 無理矢理ぶちっと取ると、くっついていた辺りから血が出た。
 が、痛くはない。
 とった瞬間、サカキの頭はすうっと冷静になった。
 どうしてあんなに怒りに燃えて、カエデに木の枝を向けていたのか、不思議に思うほどに。

「きゃあ! 魔物! 
サカキ、これ、カンノムシですわ!」

 カンノムシは、ヒルやナメクジのような姿をした小さい魔物だ。
 サカキのものは、地面からはい寄ってきて、
 ブーツをよじ登って中に入ってきたのだろう。
 カエデのものは、木の上から落っこちてきて、
 肩から移動し、露出していた首筋に吸いついたのだ。
 この魔物に吸いつかれると、血を吸われるだけではなく、
 どうにもイライラが止まらなくなる。
 くっつかれた者たちは、最初は小さなことでケンカを始め、
 だんだんとそれがエスカレートしていき、
 ついには仲間割れを起こして、互いを攻撃し合うのだ。
 サカキはカエデのカンノムシもまとめて、剣で串刺しにした。
 すると、カンノムシは霧のように消えてしまった。

「ふたりとも、
話しかけても全然聞いてくれないんだもの……。
どうしようかと思っちゃった」

「それで、閃光の魔法を使ったのですわね。
光によるショックで、正気を取り戻せましたもの」

 カンノムシを取ったため、
 カエデはルーナの行動を冷静に分析できるようになったようだ。
 サカキはルーナのとっさの行為に、ただただ感心するばかりだ。

「気づくのが遅くなってごめんなさい。
この魔物、気配が薄くて」

「いや、助けてくれただけでありがたいって。
このままじゃ、おれたちどうなってたか分かんねーもん」

 サカキはしょげるルーナをフォローしつつ、ちらりとカエデを見た。
 今までのケンカの、どこからカンノムシの影響があったか分からない。
 でも、カエデがルーナをあやしんでいたのは確かだ。
 またこれも、ルーナの罠だというのだろうか? 
 これで少しでもルーナを信じてくれてもよさそうだが……。

「……わたくしからも、お礼を言わせてくださいまし。
ルーナ、助けてくださって、ありがとう」

 カエデはそう言うと、静かに頭を下げた。
 それを聞いたルーナはうれしそうに、ふたりの周りをぴょんぴょんと飛び回る。

「えへへー、そう? 
もっとほめてもいいのよ!」

「それは調子にのりすぎですわ。
わたくし、まだアナタのことを完全には信用していませんからね」

「えー、そんなぁ」

 やっぱりそう簡単にはいかないか。
 ルーナの残念そうな声を聞きながら、サカキはふうっと息をついた。

「サカキ、さきほどは、
その、失礼なことをたくさん言ってしまって、
申し訳ありませんでした」

 カエデに謝られ、サカキははっとする。
 そうだ、自分も、ずいぶんとひどいことを言っていた気がする。

「おれこそ、ごめん。
……カエデのこと、絶対に守ってやるって言ったのに」

 それが、カエデを傷つけようとしてどうするのだ。
 頭が冷えると、あの時の自分の言動は最低だったと、改めて感じる。
 サカキはこぶしをぎゅっとにぎりしめた。

「やっぱおれ、カエデの言う通り、うまぼれてたんだと思う。
ウサギモドキをやっつけたくらいで調子にのってた。
魔物を甘くみてたんだ」

「……『うまぼれ』じゃなくて、『うぬぼれ』ですわよ」

「うん。……バカでごめん」

 ずーんという音が聞こえそうなほど、サカキは落ちこんでしまった。
 こんなサカキはめずらしい。カエデはどうしようかと困り顔だ。
 ぐう。
 その時、サカキの腹の音が辺りに響いた。
 サカキはタイミングの悪さに顔を赤くし、思わず手で顔をおおった。
 そんな様子を見て、くすりとカエデは笑った。
「サカキ、それに、ルーナ。
ご飯にしましょう。
空腹は、判断をにぶらせますわ。
食べて、それから今後のことを考えましょう」
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