【完結】カミサマの言う通り

みなづきよつば

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5.見た目が違っても

5-3

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「なんだよ、それ? 
バカにしてんのか? 
『何族? ハイ、わたしの家族ですー』なんて……」

「バカにしてなんかいませんわ!」 

 その大きな声に、思わずサカキはひるむ。
 いつの間にか、カエデの目には、涙がにじんでいた。

「サカキは、わたくしの家族。
特徴は、食いしん坊で、宿題をいつもサボって、剣術ばかりに打ちこんで……。
でも、優しくて、困っている人を放っておけない。
わたくしのお兄様みたいで、
そうかと思えば弟みたいにも感じられる……。 
それが、アナタ。間違いがありまして? 
いいえ、百点満点の解答ですわ!」 

 カエデの涙が、ぽつんとサカキの腕に落ちた。
 熱い。
 そこからじんじんと熱が広がっていき、心にまでそれが達する。 

「民族がなんなんですの? 
見た目が違ったって、いいじゃないですの! 
アナタは、『サカキ』という、かけがえのない、わたくしの家族ですわ!」 

 サカキの心臓が、どくん、どくんと音を立てる。体中が熱い。

「このわたくしが言うんだから、
もっと自分に自信をもってくださいまし! 
あなたがそうやって、心を閉ざして半端に言葉を聞いていると、
わたくしたちはみんな困りますの!」 

 今までだれもが、みんな、
 サカキは村全体の家族だと言ってくれた。
 カエデの父母も、
「本当の家族のように思ってちょうだい」
 と言っていた。
 それでも、サカキは、それらの言葉を薄い膜をへだてて聞いているように思えた。
 言葉は全部、どこか、他人事のように感じられた。
 でも、それはサカキ自身の問題だったのだ。
 サカキは自分で自分をかわいそうなやつだと決めつけて、
 その悲しさにひたっていたのだ。
 それを、カエデは遠慮も何もなしに、ずばっと言ってみせた。
 「なんてかわいそうなサカキ」と自分に酔うのはやめなさい、と。
 徐々に心臓の鼓動がおさまってきて、サカキはようやく息をついた。

「おまえって、相当な自信家だな」

 サカキの顔が、穏やかになったのを見て、
 カエデも泣きながら笑顔を作る。

「ええ、この村始まって以来の優秀な頭脳だと自負してますわ」

「ギフってなんだよ」

「自負ですわ、自負。
『誇りに思っている』ってことですわ」

「カエデの言葉は、難しすぎるんだよ……」

 ふたりは顔を見合わせ、くすくすと笑い合った。
 もう、サカキの心の海の嵐はすっかりおさまっていた。

「師匠、いつもごめんな。
おれ、行くよ」

 立ち上がったサカキは、涙のあとをごしごしと腕でこすった。

「ああ、目元が赤くなりますわ。
ほら、ハンカチを……」

「いいって。
子ども扱いすんなよ」

 そんな風にじゃれあっているカエデとサカキを見て、キキョウは胸をなでおろした。
 そして、同時に思ったのだ。カエデにはかなわないな、と。
 学校へ帰る道中で、カエデはぽつりと言った。 

「サカキ、わたくしは、
アナタの髪も瞳の色も、すばらしいと思っていますのよ。
夜の色ですわ。
夜は、安らぎを連れてきてくれる。
夜がこなければ、みんな眠れませんわ。
だから……。そのままの、アナタでいてくださいまし」

「……ん、分かった」

 そう言っている、カエデの瞳こそ、サカキの大好きな新緑の色だ。
 生命の色。
 優しくて心をいやしてくれる色。
 この色を、守りたい。
 サカキは改めて、強く思った。
 今回のことで、見た目に対する負い目は吹き飛んでしまった。
 だって、家族であるカエデがそのままでいいと言ってくれるのだ。
 見た目なんて、違ってもいい。
 今まで面と向かって、サカキの髪や目の色をほめてくれる人はいなかった。
 どこかくすぐったさを感じながら、サカキはカエデとともに学校へと向かうのだった。


★★★

「どこかのだれかさんって、だぁれ?」

 ルーナの問いに、サカキはイタズラっぽく、
「ナイショ」
とこたえたのだった。
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