【完結】カミサマの言う通り

みなづきよつば

文字の大きさ
17 / 31
7.遺跡を守りしもの

7-1

しおりを挟む
「あれは、ゴーレム!」

 ルーナが叫ぶのと同時に、
 岩と土でできた化け物――ゴーレムは、剣を振り上げた。

「全員散れ!」

 サカキの声に、はじかれたように皆でちりぢりになる。
 ガキィンッ!
 ゴーレムの剣は、床の石畳に打ちつけられた。
 衝撃でびりびりと床が震える。

「ルーナ、あの変なやつのこと知ってるのか⁉」

 サカキの声に反応したのか、
 偶然なのか、ゴーレムはサカキ目がけて突進してきた。 

「やべっ」 

 サカキは瞬時に剣を抜き、ゴーレムの剣と打ち合う。
 ギィンッ!
 鋭い金属音の後、サカキは吹っ飛ばされ、壁に激突した。

「かはっ!」

 背中から壁に打ちつけられ、肺の中の空気が全部外に出た。
 手がじんじんとしびれ、思わずサカキは剣を放してしまう。

「きゃっ!」

 サカキを吹っ飛ばした後、ゴーレムは標的をカエデに変え、剣を振った。
 かろうじてよけるカエデ。
 ゴーレムの剣は大振りで、一回剣を振るった後に隙ができた。

「なんじらの主にかわり命ずる! 
遺跡にはびこる蔓草よ、このものの動きを封じよ!」

 カエデは早口で呪文をとなえた。
 とたんに、遺跡に入りこんでいた蔓がざわりと動き、
 しゅるしゅるとゴーレムに向かって行った。
 そして、ゴーレムをがんじがらめにしばりつけてしまった。

「ルーナ、サカキを頼みますわ!」 

「分かった!」

 ルーナはぐったりとしているサカキのもとに飛んでいき、回復呪文を唱えた。

「生命の源は海。
荒れ狂う血潮よ、おさまりたまえ。
穏やかなる海へと変われ」

 白い光が、サカキの全身を包みこんでいく。 

「げほっ、げほっ。サンキュー、ルーナ」

 サカキは咳きこんだものの、なんとか体のしびれがとれ、
 剣をにぎるまでに立ち直った。

「ルーナ、ゴーレムって、なんなんだ?」

「岩と土でできた、遺跡を守るために存在している魔導人形よ。
古代魔法で動いているの」

「倒す方法は?」 

「あの土と岩の体に埋まっている、
核になっている魔鉱石を壊すこと……」 

「マジか……。そいつは、やべぇな」

 今、ゴーレムはカエデの魔法で動きが止まっているものの、
 蔓草がぶちぶちと音を立てて切れていくのが分かる。
 動き出すのも時間の問題だ。
 それに、ゴーレムの核がどこにあるかも分からない。
 人間ならば、急所は心臓や脳がある胸か頭なのだろうが……。
 これは、人型の化け物だ。

「サカキ、大丈夫ですの⁉」

 駆け寄ってきたカエデに、サカキは立ち上がって答える。

「ああ、それより、逃げるが勝ちだ! 
ルーナ、どっちが出口だ?」

「それが、ゴーレムが出てきたのと同時に、
この広間の扉が全部ふさがっちゃって……。
出口、ナシなの」

 それでは、この広間でゴーレムと戦うしかないということか。

「やるしかねぇなら、先手必勝だよなぁ!」  

 サカキはまだ蔓草にからまっているゴーレムに向かい、剣を突き立てた。
 が、伝わってくるのは硬い岩の感触。
 再び、腕がじんとしびれた。 

「くそっ! かってえ!」

 いったん引くサカキ。
 と、とうとう蔓草が完全に切れ、ゴーレムは自由になった。

「サカキ、関節部分の隙間をねらうのです!  
そこは土だから、剣が通ると思いますわ!」 

 なるほど、ゴーレムは土の体に岩の鎧をまとっている。
 だが、カエデの言う通り、全体が岩というわけではない。
 関節が曲がるように、土がむき出しになっている場所があった。

「わかったカエデ! 援護頼む!」

 再びカエデは蔓草の呪文を唱え、ゴーレムをしばりつけようとするも……。
 ゴーレムは鎧の中に腕や足をひっこめて、亀のようになると、
 そのまま猛スピードでカエデの方へ転がっていった。
 砂ぼこりが辺りに巻き起こる。

「きゃあっ!」

 避けられない! 
 とカエデが覚悟した瞬間、ルーナが前に出た。

「古代に造られし石畳よ、われは悪しきものにあらず。
どうか力を貸したまえ!」

 すると、カエデの目の前の石畳が盛り上がり、坂のようになった。
 転がってきたゴーレムは勢いよくその坂をのぼり、
 そのままぽーんと空中へと飛び上がった。
 ちょうど、カエデの頭上を飛んでいったのだ。
 そして、そのままカエデの後ろにあった広間の壁に激突した。
 がらがらと石のレンガがくずれ、ゴーレムはその下じきになる。
 なんと、壁には大きな穴が空いてしまっていた。
 へなへなとへたりこむカエデ。
 もう少しで、岩のかたまりとなったゴーレムにすりつぶされるところだった。 

「ルーナ! カエデ! よかった、無事で」

「うわーん、石畳、なんとかわたしの言うこと聞いてくれたよぅ!」

 駆け寄ってくるサカキに向かい、
ルーナは力なく、空からサカキの肩に着地した。

「ルーナ、その魔法であのゴーレムもなんとかなんないか?」

「ダメだと思う……。
侵入者を倒すために、今日まで命令通りに動いてきたゴーレムだもの。
わたしの魔法じゃあ、その目的を書き換えられないわ」 

「そっか……。カエデ、何かいい案はないか? ……カエデ?」

 座りこんでしまったカエデに手を差しのべながら、サカキは問う。
 だが、カエデは答えなかった。
 サカキの手にも気づかず、ひたすら立ち上がろうとしている。

「このっ、足が……っ。動いてくださいまし!」

 ガクガクと体は震えていた。
 無理もない。命を奪われるギリギリのところだったのだ。
 カエデは、完全に恐怖にのみこまれてしまっていた。 

「カエデ、大丈夫よ。大丈夫……」

 ルーナはカエデの頭にぴょこんと移動し、優しくなだめた。
 カエデの荒い息が、徐々におさまっていく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

オバケの謎解きスタンプラリー

綾森れん
児童書・童話
第3回きずな児童書大賞 奨励賞をいただきました! ありがとうございます! ――七不思議を順番にめぐると、最後の不思議「大階段踊り場の鏡」に知らない自分の姿が映るんだって。 小学六年生の結菜(ユイナ)が通う三日月(みかづき)小学校では、そんな噂がささやかれていた。 結菜は難関中学に合格するため、塾の夏期講習に通って勉強に励んでいる。 だが一方で、自分の将来にひそかな期待と不安をいだいてもいた。 知らない自分を知りたい結菜は、家族が留守にする夏休みのある夜、幼なじみの夏希(ナツキ)とともに七不思議めぐりを決意する。 苦労して夜の学校に忍び込んだ二人だが、出会うのは個性豊かなオバケたちばかり。 いまいち不真面目な二宮金次郎のブロンズ像から、二人はスタンプラリーの台紙を渡され、ルールを説明される。 「七不思議の謎を解けばスタンプがもらえる。順番に六つスタンプを集めて大階段の鏡のところへ持って行くと、君の知らない君自身が映し出されるんだ」 結菜と夏希はオバケたちの謎を解いて、スタンプを集められるのか? そして大階段の鏡は二人に何を教えてくれるのか? 思春期に足を踏み入れたばかりの少女が、心の奥底に秘めた想いに気付いてゆく物語です。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

まぼろしのミッドナイトスクール

木野もくば
児童書・童話
深夜0時ちょうどに突然あらわれる不思議な学校。そこには、不思議な先生と生徒たちがいました。飼い猫との最後に後悔がある青年……。深い森の中で道に迷う少女……。人間に恋をした水の神さま……。それぞれの道に迷い、そして誰かと誰かの想いがつながったとき、暗闇の空に光る星くずの方から学校のチャイムが鳴り響いてくるのでした。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

処理中です...