【完結】カミサマの言う通り

みなづきよつば

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9.究極の選択

9-2

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「精霊様……。
なんとか、なんないのか? 
おれ、どうしても村のみんなを助けたいんだ! 
おれにできることなら、なんでもするよ!」

 サカキはそう口走っていた。
 ここであきらめるなんて、絶対にしたくない。

「……。なんでも、ですか?」

「ああ!」

 精霊はしばらく考え、静かに言った。

「方法がないわけではありません」

 座りこんでいたカエデは、反射的に顔を上げた。
 まだ、希望がある!

「っ⁉ あるのかよ! 
じゃあ、それを教えてくれ!」

 サカキも声をはずませて続きをうながした。
 しかし、精霊は静かに首を振った。

「しかし、この方法は、あまりにも……」

「いいから、早く!」

 サカキは精霊につかみかからんばかりの勢いで言った。
 精霊は、あきらめたように目を閉じ、そっと唇から言葉をつむいだ。

「……あなたの命を、いただきたいのです」

「……え?」

 あまりにも予想外の言葉に、
 サカキとカエデの思考回路が固まる。今、何と言った?

「精霊様、どういうことですの……?」

 どうにかカエデは言葉をしぼり出した。
 精霊はひどく悲しく、ふたりをあわれむかのような顔をしている。

「ですから、そこにいるサカキの命をいただきたいのです。
彼は、特別な力を持っています。
魂の力が他の人間よりも、飛び抜けて強いのです。
それゆえ、その魂をわたしが吸収すれば、
木は復活し、再び木の葉がおおいしげるでしょう」

 ふたりとも、精霊の言葉が、理解できなかった。
 いや、理解はしているのだが、受け入れたくないと言った方が正しい。
 それは、あまりにも残酷すぎた。

「精霊様、他に、他に方法はないんですの⁉」

「残念ながら、この方法以外にはありません」

 カエデの願いもむなしく、精霊は無慈悲に答えた。
 その間、サカキはじっと押し黙っていた。

「サカキ、いったん村に戻りましょう。
カミサマにこのことを伝えるのです。
そして、どうにかして新たな熱病をおさえる薬を探していただいて……」

「いや、いいよ、カエデ」

 サカキは静かに言った。
 その表情は、どこか穏やかで、
 そして、強い覚悟をしているように見えた。

「まさか、アナタ……」

「ああ、おれの命を、精霊様にささげる」

 カエデの頭の中が、真っ白になる。

「そんな……。そんなことって……」

 唇がわなわなと震え、うまく言葉が出ない。
 カエデは、思わずサカキの手をとって、ぐいっとひっぱった。
 だが、サカキは動かない。

「アナタ、正気ですの? 
それ、『死ぬ』ってことですのよ! まずは、村に帰るのです!」

 ぐいぐいとひっぱり続けるが、サカキは石のように動かない。
 サカキの手は、震えるカエデの手をしっかりとにぎり返していた。
旅の最初、不安におびえるカエデの手を包みこんでくれたように。

「カエデ、頭では分かってるんだろ? 
方法は、これしかない」

 静かな声だった。
 カエデはひゅっと息をのんでサカキを見つめる。

「旅に出て二日、この間に、
きっと、熱病にかかった人はもっと増えた。
それに……、考えたくないけど、死んじゃった人もいるかもしれない」

 不気味なほど落ち着いた声で、サカキは話し続ける。
 カエデの背筋が凍るように優しい声。

「これ以上、時間をかけるわけにはいかないんだ。
ここで、おれが熱病を終わらせる」

「この、おバカ! 
死ぬのが怖くありませんの!」

「そりゃあ、怖いさ。
それに、熱病にかかったやつらの約束をやぶっちまうのも悪いと思ってる」

「約束?」

「ああ。
ちびのアオギリには、治ったら、剣の相手をしてやるって、約束した。
ウツギばーちゃんには、一緒に畑の野菜の収穫をするって」

 サカキはゆっくりと、思い返すように語っていく。

「ニワトコおじさんとは、狩りを教えてもらう約束をしたし、
ブナじーちゃんには、一緒に……」

「その人たちのためにも、生きるべきです! 
サカキ、考え直してくださいまし!」

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