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9.究極の選択
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しおりを挟む「精霊様……。
なんとか、なんないのか?
おれ、どうしても村のみんなを助けたいんだ!
おれにできることなら、なんでもするよ!」
サカキはそう口走っていた。
ここであきらめるなんて、絶対にしたくない。
「……。なんでも、ですか?」
「ああ!」
精霊はしばらく考え、静かに言った。
「方法がないわけではありません」
座りこんでいたカエデは、反射的に顔を上げた。
まだ、希望がある!
「っ⁉ あるのかよ!
じゃあ、それを教えてくれ!」
サカキも声をはずませて続きをうながした。
しかし、精霊は静かに首を振った。
「しかし、この方法は、あまりにも……」
「いいから、早く!」
サカキは精霊につかみかからんばかりの勢いで言った。
精霊は、あきらめたように目を閉じ、そっと唇から言葉をつむいだ。
「……あなたの命を、いただきたいのです」
「……え?」
あまりにも予想外の言葉に、
サカキとカエデの思考回路が固まる。今、何と言った?
「精霊様、どういうことですの……?」
どうにかカエデは言葉をしぼり出した。
精霊はひどく悲しく、ふたりをあわれむかのような顔をしている。
「ですから、そこにいるサカキの命をいただきたいのです。
彼は、特別な力を持っています。
魂の力が他の人間よりも、飛び抜けて強いのです。
それゆえ、その魂をわたしが吸収すれば、
木は復活し、再び木の葉がおおいしげるでしょう」
ふたりとも、精霊の言葉が、理解できなかった。
いや、理解はしているのだが、受け入れたくないと言った方が正しい。
それは、あまりにも残酷すぎた。
「精霊様、他に、他に方法はないんですの⁉」
「残念ながら、この方法以外にはありません」
カエデの願いもむなしく、精霊は無慈悲に答えた。
その間、サカキはじっと押し黙っていた。
「サカキ、いったん村に戻りましょう。
カミサマにこのことを伝えるのです。
そして、どうにかして新たな熱病をおさえる薬を探していただいて……」
「いや、いいよ、カエデ」
サカキは静かに言った。
その表情は、どこか穏やかで、
そして、強い覚悟をしているように見えた。
「まさか、アナタ……」
「ああ、おれの命を、精霊様にささげる」
カエデの頭の中が、真っ白になる。
「そんな……。そんなことって……」
唇がわなわなと震え、うまく言葉が出ない。
カエデは、思わずサカキの手をとって、ぐいっとひっぱった。
だが、サカキは動かない。
「アナタ、正気ですの?
それ、『死ぬ』ってことですのよ! まずは、村に帰るのです!」
ぐいぐいとひっぱり続けるが、サカキは石のように動かない。
サカキの手は、震えるカエデの手をしっかりとにぎり返していた。
旅の最初、不安におびえるカエデの手を包みこんでくれたように。
「カエデ、頭では分かってるんだろ?
方法は、これしかない」
静かな声だった。
カエデはひゅっと息をのんでサカキを見つめる。
「旅に出て二日、この間に、
きっと、熱病にかかった人はもっと増えた。
それに……、考えたくないけど、死んじゃった人もいるかもしれない」
不気味なほど落ち着いた声で、サカキは話し続ける。
カエデの背筋が凍るように優しい声。
「これ以上、時間をかけるわけにはいかないんだ。
ここで、おれが熱病を終わらせる」
「この、おバカ!
死ぬのが怖くありませんの!」
「そりゃあ、怖いさ。
それに、熱病にかかったやつらの約束をやぶっちまうのも悪いと思ってる」
「約束?」
「ああ。
ちびのアオギリには、治ったら、剣の相手をしてやるって、約束した。
ウツギばーちゃんには、一緒に畑の野菜の収穫をするって」
サカキはゆっくりと、思い返すように語っていく。
「ニワトコおじさんとは、狩りを教えてもらう約束をしたし、
ブナじーちゃんには、一緒に……」
「その人たちのためにも、生きるべきです!
サカキ、考え直してくださいまし!」
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