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10.疑問
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カエデの問いに、精霊はゆっくりと目をまたたかせた。
「『何者』とは、どういうことでしょうか?」
「言葉のままの意味ですわ」
精霊を強く見すえたままのカエデに、サカキはとまどう。
しかし、何か考えがあるのだろうと思いなおし、
そのまま話の行く末を見守ることにした。
「わたくし、遺跡に行きましたわ。
そこにある、聖なる水場で水浴びした結果、
まぶたにぬっていた薬が落ちたみたいですの」
精霊は目を見開く。
サカキもそれは初耳だった。
「驚きでしたわ。
わたくしたちに協力してくれた妖精。
その姿は最初、黒いもやののように見えたのですが……。
まぶたの薬が落ちたとたんに、
美しい姿へとかわったのですから」
精霊はほほに手を当て、眉をひそめる。
「それは、おそろしい話ですね。
妖精などというのはウソです。
この辺りには、妖精のような姿をした魔物がいます。
美しい姿をして、人々をだますのです。
魔物の正体を明かす薬の効能がたまたま切れたから、
あなたにはその魔物が美しい姿に見え……」
「あら、わたくし、
ただ『まぶたにぬっていた薬』が落ちたと言っただけですわ。
それが、『魔物の正体を明かす薬』だなんて、言ってませんわよ?」
ぴく、と精霊の眉が動いた。
「なぜアナタは薬の効能を知っていたのでしょう?」
「そ、それは……」
精霊はうろたえた。
それに追い打ちをかけるように、
「ああ、そういえば」とカエデは話を続ける。
「さっきも、おかしなことをおっしゃっていましたわよね。
わたくしたちが名乗ってもいないのに、
『サカキの命をいただきたい』と。
この少年が『サカキ』だと、初めからわかっていたのですね」
「……!」
あきらかに、精霊は動揺している。
「アナタのねらいは、初めからサカキの命だった!
さあ、こたえてくださいまし。
アナタ、いったい何者ですの?
本当に、精霊ですの?」
サカキは話についていくのにやっとだった。
命を差し出す覚悟をしたのに、この精霊は本物の精霊ではない?
じゃあ、熱病は?
カミサマとコイツの関係はなんなんだ?
「……ふう、バカな村人にも、
ちょっとは頭の回るヤツがいるのね。
あたしの言うことを、ただホイホイ聞いてればよかったのに」
精霊は口調を荒っぽいものに変え、にやりと笑った。
「こたえてあげるわよ。
あたしは、魔物。種族はアルラウネ。
精霊なんかじゃ、ありませーん」
あははは!
と笑いながら、アルラウネはその姿をかえていく。
緑の美しい髪は、毒々しさを感じさせる赤紫に。
雪のように白かった肌の色は、鮮やかな緑色に。
口元はつりあがり、ぎらりとするどい刃のような歯が並んでいる。
めきめきと音を立てて、その体からは何本もの太い蔓がはえてきた。
蔓は巨大で、まるで何本も手があるように見える。
「残念だけど、あんたたちはここでおしまい。
大丈夫、熱病なんてウソだから。
ちょこっと長引く毒を、食料にばらまいただけよ。
薬なんて飲まなくても、そのうち勝手に治るわ」
「なんだって⁉」
サカキはさけんだ。
あの熱病が、ウソ⁉
しかも、コイツが毒をばらまいた張本人だなんて!
「オマエ、どうやって村の食料に毒を……」
「ああ、カンタンよ。
あんたたちがとっても大事にしてた、『カミサマ』。
アレは魔法でつくりだした、わたしの分身なの。
カミサマが、あんたたちに毒をもったのよ」
「……!」
あまりのことに、サカキもカエデも言葉が出なかった。
じゃあ、村はずっと……、
この魔物に、支配されていたというのか⁉
「どうして……、どうして、
アナタはカミサマを演じていたのですか⁉」
「そりゃ、エサの飼育のため。
デカいエサを待ってたからよ。
デカいエサがかかったら、
本体であるあたしのとこに持ってくるためにね」
「エ、エサですって⁉」
驚きにカエデの声が裏返る。
「そうよ~。人間はみんな、あたしのエサ。
感謝してよ? 飼育してやったんだから」
ぶちり、とサカキの中で何かが切れた。
剣をすばやく鞘から抜き取ると、地を蹴り、アルラウネにせまる。
しかし、その右足は、
アルラウネからのびた太い蔓によって、簡単にからめとられてしまった。
右足を持ち上げられ、サカキは逆さにぶらりとつるされた形になる。
「ふふふ、おいしそう。
あのね、人間の中には、数百年に一度、
信じられないくらい魂の力が強い子が出てくる時があるの。
食べると寿命がものすご~く延びるのよ。
それが、アンタってワケ」
アルラウネはべろりと長い舌で舌なめずりした。
「サカキをはなしなさい!
なんじらの主にかわり、命ずる!
蔓草よ、悪しきものをとらえよ!」
カエデは呪文を唱えた。
これで、アルラウネの動きをとめられる!
「『何者』とは、どういうことでしょうか?」
「言葉のままの意味ですわ」
精霊を強く見すえたままのカエデに、サカキはとまどう。
しかし、何か考えがあるのだろうと思いなおし、
そのまま話の行く末を見守ることにした。
「わたくし、遺跡に行きましたわ。
そこにある、聖なる水場で水浴びした結果、
まぶたにぬっていた薬が落ちたみたいですの」
精霊は目を見開く。
サカキもそれは初耳だった。
「驚きでしたわ。
わたくしたちに協力してくれた妖精。
その姿は最初、黒いもやののように見えたのですが……。
まぶたの薬が落ちたとたんに、
美しい姿へとかわったのですから」
精霊はほほに手を当て、眉をひそめる。
「それは、おそろしい話ですね。
妖精などというのはウソです。
この辺りには、妖精のような姿をした魔物がいます。
美しい姿をして、人々をだますのです。
魔物の正体を明かす薬の効能がたまたま切れたから、
あなたにはその魔物が美しい姿に見え……」
「あら、わたくし、
ただ『まぶたにぬっていた薬』が落ちたと言っただけですわ。
それが、『魔物の正体を明かす薬』だなんて、言ってませんわよ?」
ぴく、と精霊の眉が動いた。
「なぜアナタは薬の効能を知っていたのでしょう?」
「そ、それは……」
精霊はうろたえた。
それに追い打ちをかけるように、
「ああ、そういえば」とカエデは話を続ける。
「さっきも、おかしなことをおっしゃっていましたわよね。
わたくしたちが名乗ってもいないのに、
『サカキの命をいただきたい』と。
この少年が『サカキ』だと、初めからわかっていたのですね」
「……!」
あきらかに、精霊は動揺している。
「アナタのねらいは、初めからサカキの命だった!
さあ、こたえてくださいまし。
アナタ、いったい何者ですの?
本当に、精霊ですの?」
サカキは話についていくのにやっとだった。
命を差し出す覚悟をしたのに、この精霊は本物の精霊ではない?
じゃあ、熱病は?
カミサマとコイツの関係はなんなんだ?
「……ふう、バカな村人にも、
ちょっとは頭の回るヤツがいるのね。
あたしの言うことを、ただホイホイ聞いてればよかったのに」
精霊は口調を荒っぽいものに変え、にやりと笑った。
「こたえてあげるわよ。
あたしは、魔物。種族はアルラウネ。
精霊なんかじゃ、ありませーん」
あははは!
と笑いながら、アルラウネはその姿をかえていく。
緑の美しい髪は、毒々しさを感じさせる赤紫に。
雪のように白かった肌の色は、鮮やかな緑色に。
口元はつりあがり、ぎらりとするどい刃のような歯が並んでいる。
めきめきと音を立てて、その体からは何本もの太い蔓がはえてきた。
蔓は巨大で、まるで何本も手があるように見える。
「残念だけど、あんたたちはここでおしまい。
大丈夫、熱病なんてウソだから。
ちょこっと長引く毒を、食料にばらまいただけよ。
薬なんて飲まなくても、そのうち勝手に治るわ」
「なんだって⁉」
サカキはさけんだ。
あの熱病が、ウソ⁉
しかも、コイツが毒をばらまいた張本人だなんて!
「オマエ、どうやって村の食料に毒を……」
「ああ、カンタンよ。
あんたたちがとっても大事にしてた、『カミサマ』。
アレは魔法でつくりだした、わたしの分身なの。
カミサマが、あんたたちに毒をもったのよ」
「……!」
あまりのことに、サカキもカエデも言葉が出なかった。
じゃあ、村はずっと……、
この魔物に、支配されていたというのか⁉
「どうして……、どうして、
アナタはカミサマを演じていたのですか⁉」
「そりゃ、エサの飼育のため。
デカいエサを待ってたからよ。
デカいエサがかかったら、
本体であるあたしのとこに持ってくるためにね」
「エ、エサですって⁉」
驚きにカエデの声が裏返る。
「そうよ~。人間はみんな、あたしのエサ。
感謝してよ? 飼育してやったんだから」
ぶちり、とサカキの中で何かが切れた。
剣をすばやく鞘から抜き取ると、地を蹴り、アルラウネにせまる。
しかし、その右足は、
アルラウネからのびた太い蔓によって、簡単にからめとられてしまった。
右足を持ち上げられ、サカキは逆さにぶらりとつるされた形になる。
「ふふふ、おいしそう。
あのね、人間の中には、数百年に一度、
信じられないくらい魂の力が強い子が出てくる時があるの。
食べると寿命がものすご~く延びるのよ。
それが、アンタってワケ」
アルラウネはべろりと長い舌で舌なめずりした。
「サカキをはなしなさい!
なんじらの主にかわり、命ずる!
蔓草よ、悪しきものをとらえよ!」
カエデは呪文を唱えた。
これで、アルラウネの動きをとめられる!
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