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4.探せ! 借りもの返却競争
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見ると、マナトが感心した顔で拍手していた。
「すげー。よくそんなにすらすらとウソをつけるな」
うるせー。
悲しくも身についちまったんだよ。
「うむ、才能豊かでよろしい」
マナトの影からは、ノワールの声がした。
そんなとこにいたのか……。
って、ん? なんでマナトはこんなに余裕があるんだ?
ま、まさか……。
マナトはふふんっと笑った。
「ま、勝負はおれの勝ちなんだけどな」
マジかよ⁉
「どうやったんだよ⁉」
「しーっ、そんなに大声出すなよ。いったん教室にもどろう」
おれはしぶしぶマナトについて、結界のはってある教室にもどった。
「さて、リキくん。何か貸してもらえないかい?」
マナトは演技がかった口調としぐさでそんなことを言った。
おれはムカつきつつ、
ブレザーのポケットからくしゃくしゃになったハンカチを取り出す。
マナトはそれを片手に、もう片方の手に杖を持った。
「その身を隠し、人々の目をあざむけ。
カレード・ウィッカ・レトール」
瞬間、ふっとハンカチの姿が消える。
続いて、マナトはまた呪文を唱えた。
「つれさられしものよ、
風の精霊の力を借りて、あるじのもとにもどれ。
キューリオス」
……、もしかして。
おれはそっとブレザーのポケットに手をやった。
すると、中にはさっきマナトにわたしたはずの、くしゃくしゃのハンカチ。
「……はあああ⁉
こんなに簡単に持ち主のもとにもどるとか、アリかよ!」
「アリなんです~。
おまえ、『仲間』をなかなか見つけられなかったみたいだからな。
人探し系は苦手だと思った。
予想通り、おれの勝ちだな!」
ぐぬぬぬと、腹が立ったけど、それと同時に……。
「ぶっ、ふふふ。ははは!」
なんだか、笑えてきた。
「うお、なんだいきなり」
マナトがちょっとひいてるのも、なんだかおかしい。
だって、おれの超能力とかにはまったくひかなかったくせに、
ただの「おれ自身の行動」にひいてるんだぜ?
「あはは。
だってさ、おれ、エスパーなのに、一般人に負けちまって……」
「はあ⁉ だれが一般人だ。おれは、魔法使いだってーの」
「いや、そうなんだけどさ。
……オマエ、すげーよ」
二回戦で負けてから。
いや、一回戦が終わった時からか。
素直に思えるようになったんだ。
「杖と呪文が必要でも、オマエって、
おれに張り合えるくらいすげーってことが、よくわかった。
……バカにして、悪かったよ」
マナトは、びっくりしたように目を大きく見開いた後、
もごもごと「おれも、オマエがすごいって思った……」
と小さな声で言った。
「魔法使いに勝てるなんて、すげーよ。一般人のくせに」
「一般人じゃありません~。エスパーです~」
「……そうなんだけどさ。おれも、オマエのこと軽く見て悪かった」
似たようなやりとりを繰り返して、お互いぶふっと吹き出す。
「あはは。なんだよ、瞬間移動とか、ありえねーから!」
「オマエこそ、なんでそんな、
『もとの持ち主にもどれ~☆』みたいな、
ふわっとした感じで能力使えんだよ!
ふははっ、抽象的すぎんだろ!」
「ははは、確かに。
でもさ、その抽象的すぎる魔法のおかげで、おれたち会えたんだぜ?」
マナトの言葉に、はっとする。
「……そうだな、オマエのおかげなんだよな」
おれは笑うのをやめ、姿勢を正してまっすぐ立つと、マナトにむかって口を開いた。
「おれが願ったのは、
『どうか、おれと同じさびしさをもつ仲間と出会えますように』。
今日実際オマエにあって、さびしさなんてふっとんじまった」
マナトは笑い顔から、だんだんと真剣な顔になっていった。
じっと、おれの話を聞いてくれてる。
「だから、その……。
ありがとうな。おれを見つけてくれて」
照れくさいけど、早口にならないように気をつけて、しっかりと思いを伝える。
「別に、礼なんていい。
……おれも、さびしさとか、全部なくなったし」
マナトはぽつりと言い、顔を赤くしてふいっとそっぽを向いた。
マナトも、同じ気持ちだったんだ。
なんだか心がじわりと温かくなる。
「なあ、マナト。オマエのこと、『仲間』だって思っていいか。
エスパーと魔法使いで、いといろ違うところはあるけど……。
でも、絶対バレちゃいけない『能力』をもってるもの同士、
同じさびしさをかかえてたもの同士でさ」
マナトは驚きの表情を浮かべた。
えっ……。もしかして……、イヤだったとか?
「オマエ、おれの心読んだ?
おれ、まったく同じこと、考えてたんだけど……」
……ああ、もう、最高だ!
「読んでねーよ!
それだけ、おれたちは似た者同士ってことだろ!」
「似た者同士……」と、その言葉をかみしめるように、マナトがつぶやく。
「……うん。確かに、そうかもな。ほら」
マナトはおれに向かい、手を差し出した。
「なんだ?」
「握手。最初のは、あいさつの握手。
これは……。今後とも、よろしくの握手だ」
「わ~、マナトくんってば、イケメ~ン!」
「うるせえ! おれがイケメンなのは、当然なんだよ!」
軽口をたたきながら。
そして、照れで顔を赤くしながら。おれたちは再び握手をかわした。
「おれたち『ヒミツかかえたさびしんぼ同盟』だな。」
「ははっ、マヌケな響き! でも、確かにな!」
マナトの的確なネーミングに、ふたりで笑い合う、
「お? 勝負はもういいのか?」
いつの間にか姿をあらわしたノワールに、
おれたちは「ああ」、「そうだな、もういいか」とこたえた。
お互いのすごいところもわかった。だから、引き分け。
それでいいんじゃないか?
「なんじゃ、次は大食い競争にしようと思ってたのに……」
しょんぼりとつぶやいたノワールに、
おれたちは「それ能力関係ねーだろ!」と
同時にツッコミをいれたのだった。
「すげー。よくそんなにすらすらとウソをつけるな」
うるせー。
悲しくも身についちまったんだよ。
「うむ、才能豊かでよろしい」
マナトの影からは、ノワールの声がした。
そんなとこにいたのか……。
って、ん? なんでマナトはこんなに余裕があるんだ?
ま、まさか……。
マナトはふふんっと笑った。
「ま、勝負はおれの勝ちなんだけどな」
マジかよ⁉
「どうやったんだよ⁉」
「しーっ、そんなに大声出すなよ。いったん教室にもどろう」
おれはしぶしぶマナトについて、結界のはってある教室にもどった。
「さて、リキくん。何か貸してもらえないかい?」
マナトは演技がかった口調としぐさでそんなことを言った。
おれはムカつきつつ、
ブレザーのポケットからくしゃくしゃになったハンカチを取り出す。
マナトはそれを片手に、もう片方の手に杖を持った。
「その身を隠し、人々の目をあざむけ。
カレード・ウィッカ・レトール」
瞬間、ふっとハンカチの姿が消える。
続いて、マナトはまた呪文を唱えた。
「つれさられしものよ、
風の精霊の力を借りて、あるじのもとにもどれ。
キューリオス」
……、もしかして。
おれはそっとブレザーのポケットに手をやった。
すると、中にはさっきマナトにわたしたはずの、くしゃくしゃのハンカチ。
「……はあああ⁉
こんなに簡単に持ち主のもとにもどるとか、アリかよ!」
「アリなんです~。
おまえ、『仲間』をなかなか見つけられなかったみたいだからな。
人探し系は苦手だと思った。
予想通り、おれの勝ちだな!」
ぐぬぬぬと、腹が立ったけど、それと同時に……。
「ぶっ、ふふふ。ははは!」
なんだか、笑えてきた。
「うお、なんだいきなり」
マナトがちょっとひいてるのも、なんだかおかしい。
だって、おれの超能力とかにはまったくひかなかったくせに、
ただの「おれ自身の行動」にひいてるんだぜ?
「あはは。
だってさ、おれ、エスパーなのに、一般人に負けちまって……」
「はあ⁉ だれが一般人だ。おれは、魔法使いだってーの」
「いや、そうなんだけどさ。
……オマエ、すげーよ」
二回戦で負けてから。
いや、一回戦が終わった時からか。
素直に思えるようになったんだ。
「杖と呪文が必要でも、オマエって、
おれに張り合えるくらいすげーってことが、よくわかった。
……バカにして、悪かったよ」
マナトは、びっくりしたように目を大きく見開いた後、
もごもごと「おれも、オマエがすごいって思った……」
と小さな声で言った。
「魔法使いに勝てるなんて、すげーよ。一般人のくせに」
「一般人じゃありません~。エスパーです~」
「……そうなんだけどさ。おれも、オマエのこと軽く見て悪かった」
似たようなやりとりを繰り返して、お互いぶふっと吹き出す。
「あはは。なんだよ、瞬間移動とか、ありえねーから!」
「オマエこそ、なんでそんな、
『もとの持ち主にもどれ~☆』みたいな、
ふわっとした感じで能力使えんだよ!
ふははっ、抽象的すぎんだろ!」
「ははは、確かに。
でもさ、その抽象的すぎる魔法のおかげで、おれたち会えたんだぜ?」
マナトの言葉に、はっとする。
「……そうだな、オマエのおかげなんだよな」
おれは笑うのをやめ、姿勢を正してまっすぐ立つと、マナトにむかって口を開いた。
「おれが願ったのは、
『どうか、おれと同じさびしさをもつ仲間と出会えますように』。
今日実際オマエにあって、さびしさなんてふっとんじまった」
マナトは笑い顔から、だんだんと真剣な顔になっていった。
じっと、おれの話を聞いてくれてる。
「だから、その……。
ありがとうな。おれを見つけてくれて」
照れくさいけど、早口にならないように気をつけて、しっかりと思いを伝える。
「別に、礼なんていい。
……おれも、さびしさとか、全部なくなったし」
マナトはぽつりと言い、顔を赤くしてふいっとそっぽを向いた。
マナトも、同じ気持ちだったんだ。
なんだか心がじわりと温かくなる。
「なあ、マナト。オマエのこと、『仲間』だって思っていいか。
エスパーと魔法使いで、いといろ違うところはあるけど……。
でも、絶対バレちゃいけない『能力』をもってるもの同士、
同じさびしさをかかえてたもの同士でさ」
マナトは驚きの表情を浮かべた。
えっ……。もしかして……、イヤだったとか?
「オマエ、おれの心読んだ?
おれ、まったく同じこと、考えてたんだけど……」
……ああ、もう、最高だ!
「読んでねーよ!
それだけ、おれたちは似た者同士ってことだろ!」
「似た者同士……」と、その言葉をかみしめるように、マナトがつぶやく。
「……うん。確かに、そうかもな。ほら」
マナトはおれに向かい、手を差し出した。
「なんだ?」
「握手。最初のは、あいさつの握手。
これは……。今後とも、よろしくの握手だ」
「わ~、マナトくんってば、イケメ~ン!」
「うるせえ! おれがイケメンなのは、当然なんだよ!」
軽口をたたきながら。
そして、照れで顔を赤くしながら。おれたちは再び握手をかわした。
「おれたち『ヒミツかかえたさびしんぼ同盟』だな。」
「ははっ、マヌケな響き! でも、確かにな!」
マナトの的確なネーミングに、ふたりで笑い合う、
「お? 勝負はもういいのか?」
いつの間にか姿をあらわしたノワールに、
おれたちは「ああ」、「そうだな、もういいか」とこたえた。
お互いのすごいところもわかった。だから、引き分け。
それでいいんじゃないか?
「なんじゃ、次は大食い競争にしようと思ってたのに……」
しょんぼりとつぶやいたノワールに、
おれたちは「それ能力関係ねーだろ!」と
同時にツッコミをいれたのだった。
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