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11.エマの家出
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★★★
次の日。
学校が終わり、マナトが家に遊びに来るということで、
おれたちは一緒に帰っていた。
道路を歩いていると、いきなり車がキキッと音を立てて止まった。
黒塗りでいかにも高そうな車だ。
おれたちがとまどっていると、ウィーンと後部座席の窓が開いた。
「こんにちは、リキくんに、マナトくん」
後部座席から顔を出したのは、エマだった。
「ちょ、オマエ、なんでこんなとこにいるんだよ!」
家出中じゃなかったのか⁉
もう、自由を満喫して帰ってきたのだろうか。
「ちょっとね。
ねえ、それより、リキくんたち今ヒマ?」
「いや、マナトとうちで遊ぶ予定なんだけど……」
「リキくんの家で?
わあ、なら、わたしもついていっていい?」
「えー……」
できれば、なるべくかかわりたくない。
だって、コイツ、おれのことエスパーだって思ってるみたいだし。
エスパーなの? どうなの? って、話をされたら困る。
迷っていると、運転席の窓が下がり、女の人の顔が見えた。
うお、すっげー美女!
エマのお母さん?
いや、それにしては若すぎるか。
「エマのマネージャーの、霧浦(きりうら)です。
わたしからも、お願いします。
どうやら、エマ、そうとうストレスがたまっているみたいで……。
この子も、芸能人である前に、まだ中学生ですからね。
普通に、遊びたいんでしょう」
霧浦さんの言葉に、うっとなる。
ストレスか……。
また家出なんてしたら、
父さんのテレビ局の仕事に迷惑がかかるよな。
ちら、とマナトをみるオッケーサインをされた。
まあ、マナトがいるなら、エスパーの話はしてこないだろ……。
エマは、マナトのことは、一般人だと思ってるんだから。
マナトのやつ、ホントは魔法使いなのにな。
「えっ……、と。
じゃあ、わたしがお送りしますね」
おれたちは霧浦さんの好意に甘えることにした。
「じゃあ、エマ。二時間後に、迎えに来るから」
そう言い残して、霧浦さんは去っていった。
家に入ると、エマはいやにきょろきょろと辺りを見回しだした。
そんな珍しくもない、フツーの家だと思うんだけどな。
おれの部屋へ案内すると、ある一点にエマの視線が集中した。
「これ……」
げっ! やべえ!
エマが見てるのは、
壁にとりつけた棚にかざってあるジュエルドラゴンのウロコだ。
宝石展の虹隕石が盗まれてから、
虹隕石の画像がたくさんテレビに映った。
だから、エマがこれを見て驚くのも無理はない。
「あ、これ? 虹隕石のレプリカなんだ。
よくできてるだろ? あはは」
マナトが乾いた笑いでごまかそうとするも、
エマはさっとそれを手にとった。
「あ、おい! なにすんだよ!」
「ごめん、リキくん!
……見つけた!
見つけました、だから、もう……、ウチを家に帰して!」
虹隕石を手にして、エマは突然叫びだした。
必死な表情。
いったい、どうしたんだ⁉
「ご苦労さま」
おれの部屋に、いるはずのない人の声が響く。
おれのベッドに足を組み、腰かけていたのは……。
霧浦、さん?
え? どうして?
だって、さっき、車で去っていっただろ?
それなのに、なんでいきなりおれの部屋に⁉
こんなの、瞬間移動したとしか……。
「ピンポーン、正解。瞬間移動してきました」
霧浦さんはそう言って楽しそうに笑う。
コイツ、まさかおれの心を読んだ⁉
「さ、行きましょ、エマ。
まだまだ探してもらうわよ」
霧浦さん……いや、
霧浦はベッドから立ち上がり、エマの腕をとった。
「イヤ! お願い、もう帰して……。助けて!」
エマはもう片方の手を、おれにむかってのばす。
おれがその手をつかもうとした瞬間……、
エマは霧浦とともに、瞬時にこの部屋から消えてしまった。
しばし呆然とするおれとマナト。
「おい、今の、なんだよ!
エマのやつ、『助けて』って……!
それに、さっきの、瞬間移動⁉
あの霧浦ってヤツ、何者だ⁉」
「落ち着け、リキ! ……まずは、状況を整理しよう」
次の日。
学校が終わり、マナトが家に遊びに来るということで、
おれたちは一緒に帰っていた。
道路を歩いていると、いきなり車がキキッと音を立てて止まった。
黒塗りでいかにも高そうな車だ。
おれたちがとまどっていると、ウィーンと後部座席の窓が開いた。
「こんにちは、リキくんに、マナトくん」
後部座席から顔を出したのは、エマだった。
「ちょ、オマエ、なんでこんなとこにいるんだよ!」
家出中じゃなかったのか⁉
もう、自由を満喫して帰ってきたのだろうか。
「ちょっとね。
ねえ、それより、リキくんたち今ヒマ?」
「いや、マナトとうちで遊ぶ予定なんだけど……」
「リキくんの家で?
わあ、なら、わたしもついていっていい?」
「えー……」
できれば、なるべくかかわりたくない。
だって、コイツ、おれのことエスパーだって思ってるみたいだし。
エスパーなの? どうなの? って、話をされたら困る。
迷っていると、運転席の窓が下がり、女の人の顔が見えた。
うお、すっげー美女!
エマのお母さん?
いや、それにしては若すぎるか。
「エマのマネージャーの、霧浦(きりうら)です。
わたしからも、お願いします。
どうやら、エマ、そうとうストレスがたまっているみたいで……。
この子も、芸能人である前に、まだ中学生ですからね。
普通に、遊びたいんでしょう」
霧浦さんの言葉に、うっとなる。
ストレスか……。
また家出なんてしたら、
父さんのテレビ局の仕事に迷惑がかかるよな。
ちら、とマナトをみるオッケーサインをされた。
まあ、マナトがいるなら、エスパーの話はしてこないだろ……。
エマは、マナトのことは、一般人だと思ってるんだから。
マナトのやつ、ホントは魔法使いなのにな。
「えっ……、と。
じゃあ、わたしがお送りしますね」
おれたちは霧浦さんの好意に甘えることにした。
「じゃあ、エマ。二時間後に、迎えに来るから」
そう言い残して、霧浦さんは去っていった。
家に入ると、エマはいやにきょろきょろと辺りを見回しだした。
そんな珍しくもない、フツーの家だと思うんだけどな。
おれの部屋へ案内すると、ある一点にエマの視線が集中した。
「これ……」
げっ! やべえ!
エマが見てるのは、
壁にとりつけた棚にかざってあるジュエルドラゴンのウロコだ。
宝石展の虹隕石が盗まれてから、
虹隕石の画像がたくさんテレビに映った。
だから、エマがこれを見て驚くのも無理はない。
「あ、これ? 虹隕石のレプリカなんだ。
よくできてるだろ? あはは」
マナトが乾いた笑いでごまかそうとするも、
エマはさっとそれを手にとった。
「あ、おい! なにすんだよ!」
「ごめん、リキくん!
……見つけた!
見つけました、だから、もう……、ウチを家に帰して!」
虹隕石を手にして、エマは突然叫びだした。
必死な表情。
いったい、どうしたんだ⁉
「ご苦労さま」
おれの部屋に、いるはずのない人の声が響く。
おれのベッドに足を組み、腰かけていたのは……。
霧浦、さん?
え? どうして?
だって、さっき、車で去っていっただろ?
それなのに、なんでいきなりおれの部屋に⁉
こんなの、瞬間移動したとしか……。
「ピンポーン、正解。瞬間移動してきました」
霧浦さんはそう言って楽しそうに笑う。
コイツ、まさかおれの心を読んだ⁉
「さ、行きましょ、エマ。
まだまだ探してもらうわよ」
霧浦さん……いや、
霧浦はベッドから立ち上がり、エマの腕をとった。
「イヤ! お願い、もう帰して……。助けて!」
エマはもう片方の手を、おれにむかってのばす。
おれがその手をつかもうとした瞬間……、
エマは霧浦とともに、瞬時にこの部屋から消えてしまった。
しばし呆然とするおれとマナト。
「おい、今の、なんだよ!
エマのやつ、『助けて』って……!
それに、さっきの、瞬間移動⁉
あの霧浦ってヤツ、何者だ⁉」
「落ち着け、リキ! ……まずは、状況を整理しよう」
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