16 / 16
ライツァルト・ゼア・ヒガンテ・ジルヴィオ五歳
神の名を冠した狼
しおりを挟む
誰も俺様を育てなかったから、両親は俺様を育てたのかもしれない。
今となっては分からない。
ずっと前に、この世から旅立った二人だ。
俺様は、両親の考えを理解していなかった。
今も昔も、正直何を考えてたんだかわかんねぇ。
俺がどれだけ暴れて、人を殺そうが、何も言ってこなかったくせに、突然幻星龍を連れて来やがった。
反省しろだのなんだのごちゃごちゃと抜かして、俺様が死にかけても助けようとしなかった。
なのに······。
ボロボロの俺様が、熱を出して動けなくなった時は、ずっとそばにいてくれた。
熱が引いて目覚めた時は残り香しかしなかったが、鼻っ柱の折れた俺様が素直に里に帰ったのはそのせいだ。
両親は帰った俺様に教育を詰め込んだ。
神狼······神の狼の名に、相応しくあれと。
◆◆◆
ふと気がつけば窓の外は暗く、夜だった。
『······おいひよこ、そろそろ帰っ······』
言葉が止まる。
見下ろした先の髪は、淡く紫がかったアッシュブロンド。
『······は?』
ひよこじゃ、ない?
「······?わんわん?」
『え、ぁ、お、おまっ─────────!』
悲鳴に似た声が漏れた。
淡く紫がかったアッシュブロンドに、前髪の数房が艶やかな黒に染まる。
蒼空の如きサファイアの瞳。
それが、左にだけ。
ひよこの右目は、深い青紫に、金や銀の星屑が散らばる。
『······げん、せい、りゅー?』
「?」
なんてこった。
俺様は天を仰いだ。
◆◆◆
月がワタクシを照らし出す。
月の下では色味を深くする鱗が風を撫でた。
ゆらゆらと空を泳ぎながら、ワタクシは眼下を見下ろした。
『······ふむ、この際小僧がライツァルトに捕まれば完璧なのだが······』
独り言が静かに落ちる。
ワタクシはライツァルトを小僧に預けた後、元の姿で空中散歩に出かけることにした。
月と星が散りばめられた夜空を、ひたすらに泳いでいく。
ワタクシは幻星龍、夜を司る龍。
光天龍の片割れが朝を司る存在であるなら、ワタクシはまさに夜に力を増す魔獣の典型と言ったところか。
そこまで考えて、そういえば、と思い出す。
『ライツァルトは親和力が高すぎて、夜にワタクシの力が色濃く出ているのだった、そろそろ戻るか』
空中でくるりと大きく回転し、ワタクシは元きた道を戻った。
今となっては分からない。
ずっと前に、この世から旅立った二人だ。
俺様は、両親の考えを理解していなかった。
今も昔も、正直何を考えてたんだかわかんねぇ。
俺がどれだけ暴れて、人を殺そうが、何も言ってこなかったくせに、突然幻星龍を連れて来やがった。
反省しろだのなんだのごちゃごちゃと抜かして、俺様が死にかけても助けようとしなかった。
なのに······。
ボロボロの俺様が、熱を出して動けなくなった時は、ずっとそばにいてくれた。
熱が引いて目覚めた時は残り香しかしなかったが、鼻っ柱の折れた俺様が素直に里に帰ったのはそのせいだ。
両親は帰った俺様に教育を詰め込んだ。
神狼······神の狼の名に、相応しくあれと。
◆◆◆
ふと気がつけば窓の外は暗く、夜だった。
『······おいひよこ、そろそろ帰っ······』
言葉が止まる。
見下ろした先の髪は、淡く紫がかったアッシュブロンド。
『······は?』
ひよこじゃ、ない?
「······?わんわん?」
『え、ぁ、お、おまっ─────────!』
悲鳴に似た声が漏れた。
淡く紫がかったアッシュブロンドに、前髪の数房が艶やかな黒に染まる。
蒼空の如きサファイアの瞳。
それが、左にだけ。
ひよこの右目は、深い青紫に、金や銀の星屑が散らばる。
『······げん、せい、りゅー?』
「?」
なんてこった。
俺様は天を仰いだ。
◆◆◆
月がワタクシを照らし出す。
月の下では色味を深くする鱗が風を撫でた。
ゆらゆらと空を泳ぎながら、ワタクシは眼下を見下ろした。
『······ふむ、この際小僧がライツァルトに捕まれば完璧なのだが······』
独り言が静かに落ちる。
ワタクシはライツァルトを小僧に預けた後、元の姿で空中散歩に出かけることにした。
月と星が散りばめられた夜空を、ひたすらに泳いでいく。
ワタクシは幻星龍、夜を司る龍。
光天龍の片割れが朝を司る存在であるなら、ワタクシはまさに夜に力を増す魔獣の典型と言ったところか。
そこまで考えて、そういえば、と思い出す。
『ライツァルトは親和力が高すぎて、夜にワタクシの力が色濃く出ているのだった、そろそろ戻るか』
空中でくるりと大きく回転し、ワタクシは元きた道を戻った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
この作品の感想を投稿する
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる