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呆気なく幕を下ろして
しおりを挟むあまりにも呆気なく、簡単に。
シュウェッツ王国は、滅びを迎えた。
滅んだ国は段々と命が芽吹き初め、生き残った民たちによって新たな国が興されるらしい。
願わくば、同じ結末を迎えないよう。
「いやぁ、いい天気ですね!」
「そうね、絶好のピクニック日和ね」
あの時すっぽかされた遠乗りの代わりとして、二人でやってきたピクニック。
帝国の気候は一年中暖かく、私はすぐにこの国が好きになった。
私が笑うと、花々が震えながら花開く。
ステフはこれを「うちの嫁が笑うと花が咲く(物理)」なんて言ってふざけている。
ちなみに嫁とか言っているが全然結婚していない。
普通にまだ婚約者だ。
・・・そう、この一ヶ月後までは。
結婚式まで、あと一ヶ月。
私は未だ、覚悟が決まっていない。
「これってあれですよね、物語だったら結婚式で誓のキスをしてfinってやつですよね」
「そうね、でもこれは現実だからそろそろお前が下手な敬語を外す方が先じゃないかしら」
「えっ、下手ですか?」
逆にこいつ下手じゃないと思ってたのかしら?
「そういうエルメ様も煮るなり焼くなりと黙らっしゃいを封印しましょうよォ」
「黙らっしゃい、あんたが様付けをやめたら考えてあげなくもないわ」
「あ、結婚式まで待っててください」
「そ────う、なの」
まさかの発言に瞠目しながらも大木の下に腰掛ける。
すごいわね、この丘帝国を一望できるわ。
流石は皇太子殿下のおすすめスポット・・・。
「あ、そういや話変わる・・・って言うか、また掘り返すんですけど、王家の面々がどうなったか知ってます?」
「ん・・・ああ、あの人たち?・・・知らないわね」
「でしょ?なんか兄君にも聞いてみたんですけどそう言えば・・・って首をかしげられて!」
「それじゃあお父様は?」
「あ、あの人は奥様が消えられて意気消沈してるけど生きてるそうですよ、なんなら前言った使用人が付きっきりで世話してるらしくて、その使用人の家に貰われてったそうです、その家使用人夫婦の他に五人の子供がいるらしいので、精神、あんがい持ち直すかもしれません」
「そう・・・」
無関心な父親だったけど、思うことはある。
あの人を哀れに思ったこともあった。
正直、私とお兄様をちゃんと子供として見ることが出来ていたら、何か変わっていたんじゃないかと思うこともある。
「・・・でも、もう関係ないわね、もう、会わないから」
「・・・そうですね」
王家の面々のその後こそ気になるものの、きっといい結末を迎えることはできていないだろう。
だからもう考えないことにした。
ピクニックセットからサンドイッチの入った籠を取り出す。
ふわふわのパンにベーコン、卵、キャベツなどが挟まれているこれは私の新しい好物だ。
それを一つ取って、ステフの口に近付けた。
「・・・え?」
「はい、あーん」
こんなことで顔を赤くするなんて、もっと早くにすればよかったわ?
そんなに狼狽えたって、埋め合わせをしたって、すっぽかしだけは一生許さないけどね?
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