52 / 58
■それはいつか来る日
しおりを挟む
いつか来るかもしれない、でも来ないかもしれない。
そんないつかのお話。
三千年前に消え去った文明の古文書が発見された。
三千年前の文明の皇族の直系の子孫であり、その文明に精通している私にまでその古文書を解読して欲しいとのお願いが来た。
正直かなり面倒だし、それほど重要なものかどうかも分からない。
そんなことより三千年前の文明の、廃れた魔道具や魔法なんかに興味のある私は、全くもってその古文書に期待していなかった。
ところが。
「・・・やばい、これ面白すぎるわ」
まさか三千年前の文明でこんなとんでもないことが起こっていたとは・・・中心人物である聖女夫妻はもちろんその周りの人達の何が面白いかと言えば恋愛模様だ。
正直新手の恋愛小説を読まされているようにしか思えないほどに記されているそれらは糖度が高かった。
異世界の記憶を持つ賢者が同性愛の先達だったとは・・・。
しかも彼が発展させた魔法学園は、その名こそ失ったものの大陸一の学園都市としてその姿を残している。
あと聖女夫妻が皇太子夫妻・・・後に賢帝と呼ばれる皇帝とその最愛の妻の嫁取り騒動にものすごく巻き込まれているところとか。
妖精姫の異名で知られたアンジュリア姫は周りにいた彼らの影響なのか年上のメイドと結ばれたって言うのも衝撃だったわ。
しかも相手が自分の母親の専属メイドって・・・よく許したわね両親。
正直色々気になるけど・・・でもこの夫妻の子供たちの話もかなり気になるわ。
特に性癖にぶち刺さ・・・ごほん、とっても気になってしまうのは英雄騎士ラナーシュと姫騎士ウェングリンの婚姻譚ね。
ケンカップルなのに他国の王子に手込めにされかけたウェングリンを救って「こいつは俺の女だ!」って宣言したって言うのよ?
やだどきどきしちゃう・・・。
しかも嬉しいのはどうやら資料を見る限り、この二人の直系の子孫が私らしいということだ。
まさか推しカプの子孫に生まれていたとは・・・世界よありがとうございます。
それと気になるのは他にも。
病弱でありながらとんでもない魔力を持っていた爆破姫アリシア。
後の三十四代目魔法学園学園長ね。
彼女は生涯独身を貫いたらしいけど、男性同士のカップルが非常に好きだったみたい。
すごいシンパシーを感じるわ!
そして異常に周りから溺愛されていた宝石姫エリス。
彼女は多くの金地位名誉を欲しいがままにする美男子に求婚されたものの、自分の従者である熊のように大柄で寡黙な無愛想な男に求婚し続け、それが受け入れられたあと表舞台から姿を消しひっそりと幸せに暮らしたらしい。
うん、下手に顔のいい男よりずっと好きだった男と結ばれた方がいいものね。
で、聖女夫妻の末の息子であるリュオン。
光り輝くようなその子は純白の髪に群青の瞳を持って生まれて一時期は不義の子なのではと言われたらしいわ。
けれども聖女の持っていた力をそのまま受け継ぎ、やがては神の愛し子とまで呼ばれ、愛した祖国の発展に尽くしたそうよ。
ただ一人の妻を生涯愛したそうだけど・・・資料によると、嫁じゃなくて婿なのよね、誤字かしら?
で、こっちもイチオシ!
物語上でしか見た事のない、双子のカップリングよ!
聖女夫妻の双子の兄妹。
マキアとアイト。
二人は手を繋いで生まれてきたそうよ。
そんな仲の良い双子は多くの苦難を乗り越えながら結ばれるのだけど、これがまた凄くて────────!
コンコン
「・・・あれ?」
「おい、聞いてんのか馬鹿」
扉の向こうから響いてきた聞き覚えのありすぎる声にそっと時計を見る。
「・・・時間、過ぎてる」
「・・・ああ、そうだな、俺との約束の時間を、二時間過ぎてるな?」
私はそっとまぶたを下ろして、土下座までの一番簡潔な行動をシミュレーション。
そして覚悟を決めて、扉を開いた。
「大変申し訳ございませんでした」
「立てアホ」
大変お顔の麗しいミルクティーブロンドの髪に翠の瞳のこの男は、私の昔からの腐れ縁の幼馴染で、現同僚。
そして、私の想い人でもある。
「たく・・・寝癖ついてんぞ」
「ああ・・・今朝来た古文書ずっと解読してて・・・」
「へえ、読めたのか?」
「うん!そうだ、聞いてくれない?話し相手が欲しくてさ・・・」
「はあ?出かけるんじゃねえのかよ」
「うん、ごめんだけどキャンセル、また付き合って?」
「・・・また、ねぇ?」
「ごめんって!ほら、入って入って」
「押すな押すな」
ぐいぐい部屋の中に押し込んで、彼が私の方を向いた。
その美しい翠の瞳に、灰銀色の髪を跳ねさせ、紫の瞳を爛々と輝かせる私の姿が映る。
「で、何を話してくれるんだ?」
「聞いて欲しいの、この古文書・・・かつて三千年前に生きた皇后陛下直筆のノンフィクション小説!『お母様が私の恋路の邪魔をする』、を!」
そんないつかのお話。
三千年前に消え去った文明の古文書が発見された。
三千年前の文明の皇族の直系の子孫であり、その文明に精通している私にまでその古文書を解読して欲しいとのお願いが来た。
正直かなり面倒だし、それほど重要なものかどうかも分からない。
そんなことより三千年前の文明の、廃れた魔道具や魔法なんかに興味のある私は、全くもってその古文書に期待していなかった。
ところが。
「・・・やばい、これ面白すぎるわ」
まさか三千年前の文明でこんなとんでもないことが起こっていたとは・・・中心人物である聖女夫妻はもちろんその周りの人達の何が面白いかと言えば恋愛模様だ。
正直新手の恋愛小説を読まされているようにしか思えないほどに記されているそれらは糖度が高かった。
異世界の記憶を持つ賢者が同性愛の先達だったとは・・・。
しかも彼が発展させた魔法学園は、その名こそ失ったものの大陸一の学園都市としてその姿を残している。
あと聖女夫妻が皇太子夫妻・・・後に賢帝と呼ばれる皇帝とその最愛の妻の嫁取り騒動にものすごく巻き込まれているところとか。
妖精姫の異名で知られたアンジュリア姫は周りにいた彼らの影響なのか年上のメイドと結ばれたって言うのも衝撃だったわ。
しかも相手が自分の母親の専属メイドって・・・よく許したわね両親。
正直色々気になるけど・・・でもこの夫妻の子供たちの話もかなり気になるわ。
特に性癖にぶち刺さ・・・ごほん、とっても気になってしまうのは英雄騎士ラナーシュと姫騎士ウェングリンの婚姻譚ね。
ケンカップルなのに他国の王子に手込めにされかけたウェングリンを救って「こいつは俺の女だ!」って宣言したって言うのよ?
やだどきどきしちゃう・・・。
しかも嬉しいのはどうやら資料を見る限り、この二人の直系の子孫が私らしいということだ。
まさか推しカプの子孫に生まれていたとは・・・世界よありがとうございます。
それと気になるのは他にも。
病弱でありながらとんでもない魔力を持っていた爆破姫アリシア。
後の三十四代目魔法学園学園長ね。
彼女は生涯独身を貫いたらしいけど、男性同士のカップルが非常に好きだったみたい。
すごいシンパシーを感じるわ!
そして異常に周りから溺愛されていた宝石姫エリス。
彼女は多くの金地位名誉を欲しいがままにする美男子に求婚されたものの、自分の従者である熊のように大柄で寡黙な無愛想な男に求婚し続け、それが受け入れられたあと表舞台から姿を消しひっそりと幸せに暮らしたらしい。
うん、下手に顔のいい男よりずっと好きだった男と結ばれた方がいいものね。
で、聖女夫妻の末の息子であるリュオン。
光り輝くようなその子は純白の髪に群青の瞳を持って生まれて一時期は不義の子なのではと言われたらしいわ。
けれども聖女の持っていた力をそのまま受け継ぎ、やがては神の愛し子とまで呼ばれ、愛した祖国の発展に尽くしたそうよ。
ただ一人の妻を生涯愛したそうだけど・・・資料によると、嫁じゃなくて婿なのよね、誤字かしら?
で、こっちもイチオシ!
物語上でしか見た事のない、双子のカップリングよ!
聖女夫妻の双子の兄妹。
マキアとアイト。
二人は手を繋いで生まれてきたそうよ。
そんな仲の良い双子は多くの苦難を乗り越えながら結ばれるのだけど、これがまた凄くて────────!
コンコン
「・・・あれ?」
「おい、聞いてんのか馬鹿」
扉の向こうから響いてきた聞き覚えのありすぎる声にそっと時計を見る。
「・・・時間、過ぎてる」
「・・・ああ、そうだな、俺との約束の時間を、二時間過ぎてるな?」
私はそっとまぶたを下ろして、土下座までの一番簡潔な行動をシミュレーション。
そして覚悟を決めて、扉を開いた。
「大変申し訳ございませんでした」
「立てアホ」
大変お顔の麗しいミルクティーブロンドの髪に翠の瞳のこの男は、私の昔からの腐れ縁の幼馴染で、現同僚。
そして、私の想い人でもある。
「たく・・・寝癖ついてんぞ」
「ああ・・・今朝来た古文書ずっと解読してて・・・」
「へえ、読めたのか?」
「うん!そうだ、聞いてくれない?話し相手が欲しくてさ・・・」
「はあ?出かけるんじゃねえのかよ」
「うん、ごめんだけどキャンセル、また付き合って?」
「・・・また、ねぇ?」
「ごめんって!ほら、入って入って」
「押すな押すな」
ぐいぐい部屋の中に押し込んで、彼が私の方を向いた。
その美しい翠の瞳に、灰銀色の髪を跳ねさせ、紫の瞳を爛々と輝かせる私の姿が映る。
「で、何を話してくれるんだ?」
「聞いて欲しいの、この古文書・・・かつて三千年前に生きた皇后陛下直筆のノンフィクション小説!『お母様が私の恋路の邪魔をする』、を!」
0
あなたにおすすめの小説
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
私の容姿は中の下だと、婚約者が話していたのを小耳に挟んでしまいました
山田ランチ
恋愛
想い合う二人のすれ違いラブストーリー。
※以前掲載しておりましたものを、加筆の為再投稿致しました。お読み下さっていた方は重複しますので、ご注意下さいませ。
コレット・ロシニョール 侯爵家令嬢。ジャンの双子の姉。
ジャン・ロシニョール 侯爵家嫡男。コレットの双子の弟。
トリスタン・デュボワ 公爵家嫡男。コレットの婚約者。
クレマン・ルゥセーブル・ジハァーウ、王太子。
シモン・グレンツェ 辺境伯家嫡男。コレットの従兄。
ルネ ロシニョール家の侍女でコレット付き。
シルヴィー・ペレス 子爵令嬢。
〈あらすじ〉
コレットは愛しの婚約者が自分の容姿について話しているのを聞いてしまう。このまま大好きな婚約者のそばにいれば疎まれてしまうと思ったコレットは、親類の領地へ向かう事に。そこで新しい商売を始めたコレットは、知らない間に国の重要人物になってしまう。そしてトリスタンにも女性の影が見え隠れして……。
ジレジレ、すれ違いラブストーリー
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さくら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる