お母様が私の恋路の邪魔をする

ものくろぱんだ

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群青に焦がれて

一目惚れなんて俗なもの

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ある時から、兄の瞳がある人を追いかけるようになった。

その先にいるのは、艶やかな漆黒の髪に、群青の瞳を持つ美しい女神。
親のない、嫌われ者。
私たち弱い神と同じ。

ああ、なんて美しい────────。






「えれいん?」
「あ・・・」

私の膝の上で、くるりとまん丸い目を向ける愛らしい少女。

柔らかな薔薇色の頬に、甘く色付いた唇は、思わず吸い付きたくなるほど。
ぱっちりとした瞳には群青の宝石がはまり、瞳を覆うまつ毛は濡れたような漆黒だった。
胸元にまで垂れ落ちる黒髪は緩やかに波打ち、白いレースのリボンで二つに分けられている。
リボンと同じ白いレースを使ったワンピースに身を包む彼女は、控えめに言ってとんでもなく愛らしかった。

自分の膝の上の重みが途端に幸福そのものに感じられ、私は内心を制御するのに手一杯。
ああ、柔らかな頬に自分の頬を擦り付けたい・・・あわよくばその柔らかさと匂いを心ゆくまで堪能したい・・・そんな変態的な考えを、口に出せるわけが無いのだけれど。

「えれいん?どうかしたの?」
「ん゛ん・・・なんでもございません」
「ほんと?」
「はい、もちろんです」

シュツァーニアが顔をほころばせた途端、自分の顔がヤニ下がり、すぐに元に戻す努力を始める。
大変だわ、あの変態を変態といえなくなってしまう・・・。

「そういえば、ダンナさまはまだかえってこられないの?」
「はぁ・・・そうですね、永遠に二人きりですねシュツァーニア様・・・」

だらぁっとだらしなく力を抜いた顔面を晒してしまう・・・。

私はシュツァーニアが大好きだ。
その体を構成する全てが大好きだ。
あの変態と結婚したのだってシュツァーニア様を間近に見たい欲望と変態との利害の一致、そしてシュツァーニア様と同じ立場名目上はになれる興奮からだ。

多分一目惚れ。
それもだいぶ熱烈な。

あの瞬間シュツァーニアを愛する全ての人間が敵になり、いつかシュツァーニアと結ばれることが夢になった。
それを横からかっさらって挙句勝利宣言をカマしてきたあの変態は許せない。 

でも。

「ダンナさま、早くかえってきてほしいなぁ」

いつだってどんな時だって、あいつはシュツァーニアの中にいる。

「・・・手足もがれても帰ってきますよ、あの人なら」

だって、同じ光を見たもの同士。
ようやく手に戻ってきた安寧を、手放せるわけないでしょう。



私は、兄を愛している。
私は、息子を愛している。

でも、それよりもずっと、この人の群青に、ずっとずっと焦がれている。
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