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群青に焦がれて
きっとこの物語の結末を誰も知らない
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「君も大変だよねぇ」
「・・・ギデオン様」
振り向いた黄色い瞳の女神が、読めない表情で俺の名を呼ぶ。
彼女はかつて、自分の夫が人へと堕ち、その罰を受けた。
それを救って自分の嫁にしたのは俺・・・ギデオンだった。
ギデオン。
多くの神々の中で、最高神に次ぐ高位神。
ついでに人と悪魔の生みの親。
それが俺であり、人の思う二番目の神。
身をかがめ、ものを映さぬ瞳を覗く。
どれだけ近づいても、その視線はどこかとぼけたようにズレていた。
最高神から与えられた罰は、彼女から光を奪った。
天上の光を目に映すことすら許されず、死に絶えよと。
元々あの男に与えられるはずだった罰を、なぜこの女が肩代わりしようとしたのか、俺は知らない。
ただこの女のあり方は、俺の興味を引いた。
怒りに打ち震え、何も見えなくなった主たる神をなだめすかし、彼女を救ったのは俺だった。
「ギデオン様」
「うん?なぁに」
「ギデオン様は、群青の瞳をしているとお聞きしました」
「・・・」
黒に近い灰色の髪で隠している目の色の言い当てられ、知らず顔が強ばった。
・・・彼女が見ていなくて・・・というか、見れなくて良かった。
「あのお方は、ギデオン様のご子孫ですね」
「・・・目の色が同じだけの神なら沢山いるでしょう」
「私は、そう思いました」
「・・・」
「私は、直感と真理の女神ですが」
「・・・」
じゃあなんでその神はあんなクズの妻におさまったんだ・・・そんなふうに荒れた心情を見通すように、彼女が言った。
「その生き様は美しく、私はそばにいたいと願ったのです」
「・・・美しい、ねえ・・・俺には、欲しいものを手に入れようと足掻いて足掻いて喚き散らす餓鬼みたいに見えたけど」
手の届かないものに分不相応に手を伸ばし、その様は天上の光を欲した大罪人のごとき。
あの男の妻を、かっさらえるわけがあるまいに。
「可愛いところもあったのですよ」
「・・・」
彼女が楽しそうにそう言うのは・・・少し、妬ける。
「こっちも見てよ」
目の見えない彼女を引き寄せて、そのくちびるを奪った。
途端見開かれた瞳に、相変わらず俺は映らないけれど。
「俺たちの子供は、きっと美しいよ」
「・・・私は、シュツァーニアに似ているのですが・・・」
「うん、俺ももう一人くらい子供が欲しいなって、姉弟は似ているべきだよね」
「・・・他にも奥様は・・・」
「ああ、もう全員に暇を出したから、君だけ・・・そもそも契約結婚だったから、俺のハーレム」
「・・・私は、子持ちで・・・」
「それ、俺もだから」
「・・・なぜ、私なのですか」
「・・・欲しいと思ったんだ」
見えない光に、手を伸ばしたかったんだ。
甘く愛を囁いて、背に舞う黒髪ごと、彼女を抱きすくめた。
「・・・ギデオン様」
振り向いた黄色い瞳の女神が、読めない表情で俺の名を呼ぶ。
彼女はかつて、自分の夫が人へと堕ち、その罰を受けた。
それを救って自分の嫁にしたのは俺・・・ギデオンだった。
ギデオン。
多くの神々の中で、最高神に次ぐ高位神。
ついでに人と悪魔の生みの親。
それが俺であり、人の思う二番目の神。
身をかがめ、ものを映さぬ瞳を覗く。
どれだけ近づいても、その視線はどこかとぼけたようにズレていた。
最高神から与えられた罰は、彼女から光を奪った。
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元々あの男に与えられるはずだった罰を、なぜこの女が肩代わりしようとしたのか、俺は知らない。
ただこの女のあり方は、俺の興味を引いた。
怒りに打ち震え、何も見えなくなった主たる神をなだめすかし、彼女を救ったのは俺だった。
「ギデオン様」
「うん?なぁに」
「ギデオン様は、群青の瞳をしているとお聞きしました」
「・・・」
黒に近い灰色の髪で隠している目の色の言い当てられ、知らず顔が強ばった。
・・・彼女が見ていなくて・・・というか、見れなくて良かった。
「あのお方は、ギデオン様のご子孫ですね」
「・・・目の色が同じだけの神なら沢山いるでしょう」
「私は、そう思いました」
「・・・」
「私は、直感と真理の女神ですが」
「・・・」
じゃあなんでその神はあんなクズの妻におさまったんだ・・・そんなふうに荒れた心情を見通すように、彼女が言った。
「その生き様は美しく、私はそばにいたいと願ったのです」
「・・・美しい、ねえ・・・俺には、欲しいものを手に入れようと足掻いて足掻いて喚き散らす餓鬼みたいに見えたけど」
手の届かないものに分不相応に手を伸ばし、その様は天上の光を欲した大罪人のごとき。
あの男の妻を、かっさらえるわけがあるまいに。
「可愛いところもあったのですよ」
「・・・」
彼女が楽しそうにそう言うのは・・・少し、妬ける。
「こっちも見てよ」
目の見えない彼女を引き寄せて、そのくちびるを奪った。
途端見開かれた瞳に、相変わらず俺は映らないけれど。
「俺たちの子供は、きっと美しいよ」
「・・・私は、シュツァーニアに似ているのですが・・・」
「うん、俺ももう一人くらい子供が欲しいなって、姉弟は似ているべきだよね」
「・・・他にも奥様は・・・」
「ああ、もう全員に暇を出したから、君だけ・・・そもそも契約結婚だったから、俺のハーレム」
「・・・私は、子持ちで・・・」
「それ、俺もだから」
「・・・なぜ、私なのですか」
「・・・欲しいと思ったんだ」
見えない光に、手を伸ばしたかったんだ。
甘く愛を囁いて、背に舞う黒髪ごと、彼女を抱きすくめた。
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