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本編
80話『康煕と千隼②』
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二人の間には重苦しい沈黙。 それに耐えられなくなった彼が言葉を発した。
「最初から意地悪をしたのは俺だから嫌われるのは仕方ない。 だけど、俺まで否定するのはやめてくれないか」
千隼は何を言われたのか一瞬分からなかった。
(否定? 僕が?? そんなこと言ってないと思うんだけど・・・)
先程の言葉の中に「康煕だけど康煕じゃない。好きなのは僕の知ってる康煕だけ」と言っていたのだが本人は全く気付いていない。
「お前の知ってる俺が好きだと言った。 今の俺は知らないやつ同然だと・・・」
そこまで言われて、初めて千隼はハッとした。 自分が知らないだけで、どちらも康煕なのだ。
「僕・・・」
「・・・・・・」
何かと言おうとするも千隼は自分で言った言葉が如何に突き刺すものなのか気づき、グッと言葉を飲みこんでしまう。
(僕、酷いこと言った・・・。 どうしよう・・・)
先程の勢いとは逆に彼の目からみても分かるほど落ち込み、千隼を見ると耳と尻尾が見えるほどだ。
夢の世界ナイス! と思うのはその世界で生きている康煕ただ一人だった。
「謝って済む話じゃないけど・・・、ご・・・めん、なさぃ・・・」
ある日をきっかけに泣き虫になった千隼は、我慢もできずに「うぅ・・・」と声を漏らし、涙声で謝ってきた。
ショックは受けたが目の前で泣く千隼を怒っていたわけでもなく、ただただ自分の存在を認めさせたくて言っただけに過ぎなかった。
「別に・・・」
「っ・・・・・・? 」
千隼が泣きながら康煕を恐る恐る見上げると、そこには少し困ったような顔をした年相応の康煕が立ちそっぽを向きながら頭を掻いていた。
そして・・・
「別に怒ってはいない。 ただ、お前も相手に見せていない自分を否定されれば傷つくんじゃないのか? 今は現実ではないのだろう? それなら、夢を抜けてしまえば俺もお前も記憶には残らない。 違うか? 」
「それは・・・、傷つく・・・。 康煕に否定されたら・・・、僕、生きていける自信ない・・・。 好きだって自覚しちゃったんだもん・・・。この世界で僕一人で、周りに誰もいなくて、寂しくて、康煕がいてくれたらって・・・」
そう言った千隼の顔は泣き顔から赤面へと変わっていった。
「最初から意地悪をしたのは俺だから嫌われるのは仕方ない。 だけど、俺まで否定するのはやめてくれないか」
千隼は何を言われたのか一瞬分からなかった。
(否定? 僕が?? そんなこと言ってないと思うんだけど・・・)
先程の言葉の中に「康煕だけど康煕じゃない。好きなのは僕の知ってる康煕だけ」と言っていたのだが本人は全く気付いていない。
「お前の知ってる俺が好きだと言った。 今の俺は知らないやつ同然だと・・・」
そこまで言われて、初めて千隼はハッとした。 自分が知らないだけで、どちらも康煕なのだ。
「僕・・・」
「・・・・・・」
何かと言おうとするも千隼は自分で言った言葉が如何に突き刺すものなのか気づき、グッと言葉を飲みこんでしまう。
(僕、酷いこと言った・・・。 どうしよう・・・)
先程の勢いとは逆に彼の目からみても分かるほど落ち込み、千隼を見ると耳と尻尾が見えるほどだ。
夢の世界ナイス! と思うのはその世界で生きている康煕ただ一人だった。
「謝って済む話じゃないけど・・・、ご・・・めん、なさぃ・・・」
ある日をきっかけに泣き虫になった千隼は、我慢もできずに「うぅ・・・」と声を漏らし、涙声で謝ってきた。
ショックは受けたが目の前で泣く千隼を怒っていたわけでもなく、ただただ自分の存在を認めさせたくて言っただけに過ぎなかった。
「別に・・・」
「っ・・・・・・? 」
千隼が泣きながら康煕を恐る恐る見上げると、そこには少し困ったような顔をした年相応の康煕が立ちそっぽを向きながら頭を掻いていた。
そして・・・
「別に怒ってはいない。 ただ、お前も相手に見せていない自分を否定されれば傷つくんじゃないのか? 今は現実ではないのだろう? それなら、夢を抜けてしまえば俺もお前も記憶には残らない。 違うか? 」
「それは・・・、傷つく・・・。 康煕に否定されたら・・・、僕、生きていける自信ない・・・。 好きだって自覚しちゃったんだもん・・・。この世界で僕一人で、周りに誰もいなくて、寂しくて、康煕がいてくれたらって・・・」
そう言った千隼の顔は泣き顔から赤面へと変わっていった。
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