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ある少年のお話
しおりを挟む「ミーシャ!絶対討伐隊に選ばれて帰ってくるから!絶対にそれまでちゃんと自分の身体を大事にして待っていてくれよ」
そういって細い彼女を優しく抱きしめて俺は最後のお別れと共に初めて唇を重ねた。
小さい頃に両親を亡くした俺は毎日を生きるのも辛い生活をしていた。
そんな俺を救ってくれたのは、幼くも心優しいミーシャと逞しくも心強いミーシャの親父。師匠だった。
二人に助けられた俺は、今度は二人を助けられる強い男になりたくて剣を師匠に倣い始めたんだ。
俺には剣の素質があった様で師匠からも太鼓判を押される程になった。
そんな毎日が続くと思っていた中突然とあの日は訪れた。
襲い掛かる魔物の軍勢。ただの村人達では太刀打ちできるはずがない。
師匠が剣を抱えると同時に俺もついていこうと剣を握った時、それを師匠にとめられた。
ミーシャを守れと。
師匠のその強い瞳に俺は約束したんだ。
今もこれからもミーシャを守ると。
どうにか乗り切ったあの日。
ミーシャは疲れて眠ってしまっている。
その安心した寝顔に少し胸を熱くさせながらも、まだ戻ってこない師匠の事が気になりミーシャにやさしく毛布をかけた。
師匠を迎えにいった先で俺は自分の目を疑った。
沢山の散らばる魔物の亡きがらの中に、ポツンと見覚えのある赤い髪の人物が倒れていたからだ。
俺は急ぎ駆け寄るも、もう何もできる事はなかった。
俺は何のために、剣を握り強くなったんだ・・・。
あれからミーシャは生きる気力を無くした様にベッドに臥せる事が多くなった。
顔色もよくなく、なけなしの金で医者に診てもらった。
ミーシャは病にかかっていたのだ。亡くなったミーシャの母親と同じ病。
あの頃はまだ治療法が見つかっておらず不二の病と言われていたそうだが、
今では治療法が見つかり正しい処置と手術を受ければ完治する事は可能らしい。
ただし、その薬と手術代は平民で到底手の届くはずのないシロモノだった。
それを聞いてさらに気力をなくしていくミーシャ。
残った唯一の人を眼の前に、無力な自分に腹が立つ。
そんな時だ。討伐隊の話を聞いたのは。
俺がミーシャを救える方法はこれしかないと思った。
最初は泣きわめいて中々話を聞いてくれなかったミーシャも、時間をかけ伝えていくうちに
久しぶりに見た泣き笑いの笑顔でうなずいてくれた。
そして長年伝える事ができなかった俺のミーシャへの思いも受け止めてくれた。
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俺は基本あの二人以外の人間は信用しない。
それでもこの討伐のメンバーは
一人一人気のいいやつだとは思う。
元々只の平民は俺だけで
それ以外は名がある貴族の息子だったり
名が知れた剣士だったり果ては王女様までいるんだがな。
平民の俺や訪れた村や街の奴らにも、思ったよりは人当りがいい。
だからといって信用に値するのかは別だ。
そんな中16歳でこの過酷な旅に参加させられた王女が何故かやたらと俺に話かけてくる。
最初は鬱陶しく思っていたが、ミーシャを思い出させる様なゴールドパールの髪色で不安そうな眼を向けられては中々無下に扱いずらくもあった。
考えればミーシャと同じ年でたった一人過酷な旅に参加させられていると考えれば少し同情も覚えてしまう。
それからだ。
少し少しお互いに話をする様になったのは。
俺はミーシャの話を。彼女はそれは嬉しそうに楽しそうに聞いていた。
俺もミーシャの話をすればするほど、彼女を思い出す機会が増えそれが嬉しくて更によく話す様になった。
そうだ!
ミーシャはこんなに優しくてそしてお転婆の所もあって。
それでもたまに見せる弱い瞳や
強がってみせるその表情。
何よりも弱い者を守る心強く優しい心。
そんな所が大好きで大好きで・・・
大好きだった・・・・・?
でも、今は?
ミーシャと同じ髪色で心優しく、
国を守る為と自身を投げ打ってでも
強い信念の持ち主の君が
好きで好きで・・・大好きになった・・・・?
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