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第一章
友
しおりを挟む「ロナルド! アレクに入れ知恵をしたのはおまえだな!」
翌日、朝早くに隊長室を訪れたロナルドを待ち構え、姿を見るなり襟元をつかみ上げてドアに押しつけたマーリナスに、ロナルドは少しだけ驚いたように目を丸くすると、すぐさま冷静さを取り戻し短く言葉を返した。
「そう。俺だよ」
「なんてことを!」
「おまえの様子がおかしいとアレクに相談されてね。俺は現状を説明しただけに過ぎない。強制もしてないし、選んだのはアレクだ」
「そうだとしても、アレクになにかあればどうするつもりだ! 気丈に振るまっていても、一度自分を捕まえてバロンに売った相手なのだぞ。怖くないはずがないだろう!」
「それを守るのが俺たちの仕事だ。違うかい」
職務上では言葉遣いを正すふたりだが、このときばかりは友として会話を交わした。
ロナルドの刺すような言葉にマーリナスは鋭い眼光を宿しながら口をつぐむ。
「アレクだって犠牲になるつもりで言いだしたわけじゃないだろう。もちろん危険性は理解しているだろうが、おまえや俺たちがいるから協力を申しでてくれたんじゃないのか。それはおまえに対する信頼だ。もちろんアレクに危険が及ばないように俺たちは力を尽くす。それが恐怖心と戦いながら決意してくれたアレクに対する誠意というものだろう。それができないようなら警備隊は辞めるんだな」
「ロナルド!」
辛辣な友の言葉にマーリナスは思わず悲痛な声をあげて顔を歪める。
「なあ、俺の力はそんなに頼りにならないか? これでも副隊長の座まで上り詰めたんだ。だがこれで満足するつもりはない。もちろんおまえもここで終わるつもりはないだろう。もっと信用してくれよ。決してアレクには手をださせない。俺の命をかけてここに誓うよ」
そう言ってマーリナスを見つめるロナルドの瞳は優しさの中に痛みがうずく。
アレクの身を心配する気持ちはロナルドとて同じだ。できることなら、こんなことをアレクにさせたくはない。だがこれは千載一遇のチャンスだ。
もしここで手柄を立てることができれば、第一警備隊は上層部から注目を集めることができるだろう。そうすれば地に落ちた権威も多少は回復する。マーリナスもいま以上にやりやすくなるだろう。
その取っ掛かりとしてモーリッシュ検挙のこの機会を逃すわけにはいかないのだ。
「もちろん信頼している。おまえ以上に信用できるものなどいないだろう」
「それはよかったよ。おまえなんか信用できるかと、身もふたもない言い方をされたらどうしようかと思ったけどね」
いたずらっぽく笑ったロナルドに、マーリナスは困ったように眉を下げて小さな笑みを返した。
「わたしをいつも支えてくれているのはおまえだ。いまも昔もずっと変わらない。いつでもわたしのことを考えてくれているのはわかっているんだ……」
「そうだぞ。俺はおまえが大好きだからな」
からからと笑い声をあげるロナルドにマーリナスは心から感謝する。
いつもこの男は自分にできないことをしてくれる。アレクの件についてもそうだ。きっと自分の怒りを買うことをわかって口をだしたのだろう。
「本当におまえには頭が下がるよ」
「そうだろう。じゃあ、来月の給料は上乗せしてくれ」
「それはまた別の話だな」
片方の口角をあげてマーリナスは笑う。本当にこの男が友でよかったと、心から感謝して。
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