23 / 146
第一章
ベローズ王国、国際警備隊
しおりを挟む
それから作戦は水面下で着々と進められ、近隣のベローズ王国の国際警備隊と密に連絡を取り、協力を取り付けることにも成功した。
ベローズ王国は『正義と制裁』の名を掲げ、騎士団や警備隊に力を入れている国である。協定を結んだ国から要請があれば、他国にまでおもむき協力することをいとわない。
ベローズ王国が『正義と制裁』の名を掲げるには大きな理由がある。
それは協定を交わした際の法にのっとり、『ベローズ王国警備隊が確保した者の処罰はベローズ王国の法律によって決定され遂行される』という、他の圧力を跳ね返す揺るがぬ権威を持つからである。
一国の細事にベローズ王国警備隊がしゃしゃり出ることはないが、各地から寄せられた悪人の名は警備隊によってリストにまとめあげられ、ひとつひとつ裏をとる。
その中でとりたて目をひく大物は、ベローズ王国警備隊の名によって国際手配書に名を連ねられることになるのだ。
だがベローズ王国警備隊が他国に姿を現すことは、それだけで目を引くものでありその目的はいわずもがな。悪党を警戒させるには十分すぎるものだ。
今回はモーリッシュを確保するその瞬間まで、ベローズ王国警備隊の動きは隠しておかなければならない。
そのためスタローン王国警備隊から国際手配書に名のあるモーリッシュ・ドットバーグの検挙協力要請を受けたベローズ王国警備隊は、制服を脱いで旅行客を装いスタローン王国にひっそりと入国を果たしたのである。
だがその中に、警備隊の風貌とは異なるひとりの少年がいた。
鋭い眼光を放つ屈強な男たちに囲まれて、彼だけは猛獣のすみかに紛れこんでしまった小動物のように、体つきは貧弱で怯えるようにびくびくとして、彼らの威圧にいまにも押しつぶされてしまいそうである。
彼の名はケルト・リッシュ。歳は十五歳。今回ゆえあって警備隊の同行を許されたものである。
「それでは、そのアレクという少年がこの度のおとり役となってくれると」
「はい。アレクは実に見目麗しい少年です。実は以前もモーリッシュに目をつけられ捕らえられた経緯があります。また行く当てを失くして地下街におりたと装えば、モーリッシュは目を光らせて食らいつくでしょう」
「なるほど。しかしその少年の安全は保障されるものではない。本人は承知の上か?」
「はい」
「なんと勇敢な少年だ。その心意気はみごとである。その少年に敬意を示し、われらも尽力を尽くすと誓おう」
そういって席を立ちあがり、マーリナスとベローズ王国警備隊長ギル・シチュアートは固く握手を交わした。
決行は明日の夜。少人数でモーリッシュに捕らわれたアレクを追尾し、根城となる場所まで案内させる。
そこまでいけば、あとはモーリッシュ確保に踏みこむつもりのマーリナスだったが、その案はギルによって却下される。
もし取り引き相手が現れるようなら、国際手配犯ほう助の可能性ありとみなし、一緒に捕らえたいとうことだった。
バロンが取り引き相手である可能性は極めて高く、もしそれが叶えばマーリナスとてこれほど嬉しいことはない。
だがアレクには呪いの代償がある。その代償を身に受けなければ彼の命はもって三日。
協力を要請した以上、ベローズ王国警備隊の提案を無下にすることもできず、バレリアの呪いについてギルに話すことができなかったマーリナスは、彼の身の安全を考えて猶予は二日までと条件を提示した。
かなり短い期間ではあるが、モーリッシュとて長々とこの国に滞在するつもりはないだろう。それはベローズ王国警備隊とて同じ。長々と滞在すればいずれは入国したことがモーリッシュの耳に入ってしまい、取り逃す可能性がある。
そのためギルはマーリナスの条件を飲むことにしたのだった。
その夜。
ベローズ王国警備隊の協力のもと明日の夜、決行が決まったとマーリナスが伝えると、アレクは嬉しそうに目を輝かせた。
「ベローズ王国警備隊が? それは百人力ですね。ベローズ王国警備隊ならば、自国の法にのっとって公正な判断をくだしてくれるはずです」
「そうだな。バロンのときのように一度捕らえられておきながら、釈放されるということにはならないだろう」
「ええ。ベローズ王国の国王は代々正義感が強く芯のある方ばかりですが、その公正な判断力は一目置かれるものです。絶対にそんなことにはなりません。僕が保証します」
「おまえが? ずいぶんと信頼しているのだな」
「ええ、まあ」
珍しく鼻息を荒くして語るアレクに、マーリナスは驚きを隠せなかった。
確かにベローズ王国が掲げる『正義と制裁』の名を知るものならば、その噂だけでも信用に値する判断材料になるかもしれない。
だが歴代の王の性格など、従事するものでなければ知ることのできない情報だ。
実際、長年この国に仕えているマーリナスとて国王の性格など知らないし、拝顔すらしたこともない。仮に噂で耳に入ったとしても、「保障する」などと言い切れるものだろうか。
そのときマーリナスの胸に小さな違和感が芽生えたが、もうひとつ大事なことを伝えなければならないという思いで頭を切り替えた。
ベローズ王国は『正義と制裁』の名を掲げ、騎士団や警備隊に力を入れている国である。協定を結んだ国から要請があれば、他国にまでおもむき協力することをいとわない。
ベローズ王国が『正義と制裁』の名を掲げるには大きな理由がある。
それは協定を交わした際の法にのっとり、『ベローズ王国警備隊が確保した者の処罰はベローズ王国の法律によって決定され遂行される』という、他の圧力を跳ね返す揺るがぬ権威を持つからである。
一国の細事にベローズ王国警備隊がしゃしゃり出ることはないが、各地から寄せられた悪人の名は警備隊によってリストにまとめあげられ、ひとつひとつ裏をとる。
その中でとりたて目をひく大物は、ベローズ王国警備隊の名によって国際手配書に名を連ねられることになるのだ。
だがベローズ王国警備隊が他国に姿を現すことは、それだけで目を引くものでありその目的はいわずもがな。悪党を警戒させるには十分すぎるものだ。
今回はモーリッシュを確保するその瞬間まで、ベローズ王国警備隊の動きは隠しておかなければならない。
そのためスタローン王国警備隊から国際手配書に名のあるモーリッシュ・ドットバーグの検挙協力要請を受けたベローズ王国警備隊は、制服を脱いで旅行客を装いスタローン王国にひっそりと入国を果たしたのである。
だがその中に、警備隊の風貌とは異なるひとりの少年がいた。
鋭い眼光を放つ屈強な男たちに囲まれて、彼だけは猛獣のすみかに紛れこんでしまった小動物のように、体つきは貧弱で怯えるようにびくびくとして、彼らの威圧にいまにも押しつぶされてしまいそうである。
彼の名はケルト・リッシュ。歳は十五歳。今回ゆえあって警備隊の同行を許されたものである。
「それでは、そのアレクという少年がこの度のおとり役となってくれると」
「はい。アレクは実に見目麗しい少年です。実は以前もモーリッシュに目をつけられ捕らえられた経緯があります。また行く当てを失くして地下街におりたと装えば、モーリッシュは目を光らせて食らいつくでしょう」
「なるほど。しかしその少年の安全は保障されるものではない。本人は承知の上か?」
「はい」
「なんと勇敢な少年だ。その心意気はみごとである。その少年に敬意を示し、われらも尽力を尽くすと誓おう」
そういって席を立ちあがり、マーリナスとベローズ王国警備隊長ギル・シチュアートは固く握手を交わした。
決行は明日の夜。少人数でモーリッシュに捕らわれたアレクを追尾し、根城となる場所まで案内させる。
そこまでいけば、あとはモーリッシュ確保に踏みこむつもりのマーリナスだったが、その案はギルによって却下される。
もし取り引き相手が現れるようなら、国際手配犯ほう助の可能性ありとみなし、一緒に捕らえたいとうことだった。
バロンが取り引き相手である可能性は極めて高く、もしそれが叶えばマーリナスとてこれほど嬉しいことはない。
だがアレクには呪いの代償がある。その代償を身に受けなければ彼の命はもって三日。
協力を要請した以上、ベローズ王国警備隊の提案を無下にすることもできず、バレリアの呪いについてギルに話すことができなかったマーリナスは、彼の身の安全を考えて猶予は二日までと条件を提示した。
かなり短い期間ではあるが、モーリッシュとて長々とこの国に滞在するつもりはないだろう。それはベローズ王国警備隊とて同じ。長々と滞在すればいずれは入国したことがモーリッシュの耳に入ってしまい、取り逃す可能性がある。
そのためギルはマーリナスの条件を飲むことにしたのだった。
その夜。
ベローズ王国警備隊の協力のもと明日の夜、決行が決まったとマーリナスが伝えると、アレクは嬉しそうに目を輝かせた。
「ベローズ王国警備隊が? それは百人力ですね。ベローズ王国警備隊ならば、自国の法にのっとって公正な判断をくだしてくれるはずです」
「そうだな。バロンのときのように一度捕らえられておきながら、釈放されるということにはならないだろう」
「ええ。ベローズ王国の国王は代々正義感が強く芯のある方ばかりですが、その公正な判断力は一目置かれるものです。絶対にそんなことにはなりません。僕が保証します」
「おまえが? ずいぶんと信頼しているのだな」
「ええ、まあ」
珍しく鼻息を荒くして語るアレクに、マーリナスは驚きを隠せなかった。
確かにベローズ王国が掲げる『正義と制裁』の名を知るものならば、その噂だけでも信用に値する判断材料になるかもしれない。
だが歴代の王の性格など、従事するものでなければ知ることのできない情報だ。
実際、長年この国に仕えているマーリナスとて国王の性格など知らないし、拝顔すらしたこともない。仮に噂で耳に入ったとしても、「保障する」などと言い切れるものだろうか。
そのときマーリナスの胸に小さな違和感が芽生えたが、もうひとつ大事なことを伝えなければならないという思いで頭を切り替えた。
1
あなたにおすすめの小説
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
天涯孤独になった少年は、元軍人の優しいオジサンと幸せに生きる
ir(いる)
BL
※2025/11 プロローグを追加しました
ファンタジー。最愛の父を亡くした後、恋人(不倫相手)と再婚したい母に騙されて捨てられた12歳の少年。30歳の元軍人の男性との出会いで傷付いた心を癒してもらい、恋(主人公からの片思い)をする物語。
※序盤は主人公が悲しむシーンが多いです。
※主人公と相手が出会うまで、少しかかります(28話)
※BL的展開になるまでに、結構かかる予定です。主人公が恋心を自覚するようでしないのは51話くらい?
※女性は普通に登場しますが、他に明確な相手がいたり、恋愛目線で主人公たちを見ていない人ばかりです。
※同性愛者もいますが、異性愛が主流の世界です。なので主人公は、男なのに男を好きになる自分はおかしいのでは?と悩みます。
※主人公のお相手は、保護者として主人公を温かく見守り、支えたいと思っています。
祖国に棄てられた少年は賢者に愛される
結衣可
BL
祖国に棄てられた少年――ユリアン。
彼は王家の反逆を疑われ、追放された身だと信じていた。
その真実は、前王の庶子。王位継承権を持ち、権力争いの渦中で邪魔者として葬られようとしていたのだった。
絶望の中、彼を救ったのは、森に隠棲する冷徹な賢者ヴァルター。
誰も寄せつけない彼が、なぜかユリアンを庇護し、結界に守られた森の家で共に過ごすことになるが、王都の陰謀は止まらず、幾度も追っ手が迫る。
棄てられた少年と、孤独な賢者。
陰謀に覆われた王国の中で二人が選ぶ道は――。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜
紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。
ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。
そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる