アメジストの呪いに恋い焦がれ~きみに恋した本当の理由~

一色姫凛

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第一章

ベローズ王国、国際警備隊

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 それから作戦は水面下で着々と進められ、近隣のベローズ王国の国際警備隊と密に連絡を取り、協力を取り付けることにも成功した。

 ベローズ王国は『正義と制裁』の名を掲げ、騎士団や警備隊に力を入れている国である。協定を結んだ国から要請があれば、他国にまでおもむき協力することをいとわない。

 ベローズ王国が『正義と制裁』の名を掲げるには大きな理由がある。

 それは協定を交わした際の法にのっとり、『ベローズ王国警備隊が確保した者の処罰はベローズ王国の法律によって決定され遂行される』という、他の圧力を跳ね返す揺るがぬ権威を持つからである。

 一国の細事にベローズ王国警備隊がしゃしゃり出ることはないが、各地から寄せられた悪人の名は警備隊によってリストにまとめあげられ、ひとつひとつ裏をとる。

 その中でとりたて目をひく大物は、ベローズ王国警備隊の名によって国際手配書に名を連ねられることになるのだ。 

 だがベローズ王国警備隊が他国に姿を現すことは、それだけで目を引くものでありその目的はいわずもがな。悪党を警戒させるには十分すぎるものだ。

 今回はモーリッシュを確保するその瞬間まで、ベローズ王国警備隊の動きは隠しておかなければならない。

 そのためスタローン王国警備隊から国際手配書に名のあるモーリッシュ・ドットバーグの検挙協力要請を受けたベローズ王国警備隊は、制服を脱いで旅行客を装いスタローン王国にひっそりと入国を果たしたのである。

 だがその中に、警備隊の風貌とは異なるひとりの少年がいた。

 鋭い眼光を放つ屈強な男たちに囲まれて、彼だけは猛獣のすみかに紛れこんでしまった小動物のように、体つきは貧弱で怯えるようにびくびくとして、彼らの威圧にいまにも押しつぶされてしまいそうである。

 彼の名はケルト・リッシュ。歳は十五歳。今回ゆえあって警備隊の同行を許されたものである。

「それでは、そのアレクという少年がこの度のおとり役となってくれると」

「はい。アレクは実に見目麗しい少年です。実は以前もモーリッシュに目をつけられ捕らえられた経緯があります。また行く当てを失くして地下街におりたと装えば、モーリッシュは目を光らせて食らいつくでしょう」

「なるほど。しかしその少年の安全は保障されるものではない。本人は承知の上か?」

「はい」

「なんと勇敢な少年だ。その心意気はみごとである。その少年に敬意を示し、われらも尽力を尽くすと誓おう」

 そういって席を立ちあがり、マーリナスとベローズ王国警備隊長ギル・シチュアートは固く握手を交わした。

 決行は明日の夜。少人数でモーリッシュに捕らわれたアレクを追尾し、根城となる場所まで案内させる。

 そこまでいけば、あとはモーリッシュ確保に踏みこむつもりのマーリナスだったが、その案はギルによって却下される。

 もし取り引き相手が現れるようなら、国際手配犯ほう助の可能性ありとみなし、一緒に捕らえたいとうことだった。

 バロンが取り引き相手である可能性は極めて高く、もしそれが叶えばマーリナスとてこれほど嬉しいことはない。

 だがアレクには呪いの代償がある。その代償を身に受けなければ彼の命はもって三日。

 協力を要請した以上、ベローズ王国警備隊の提案を無下むげにすることもできず、バレリアの呪いについてギルに話すことができなかったマーリナスは、彼の身の安全を考えて猶予ゆうよは二日までと条件を提示した。

 かなり短い期間ではあるが、モーリッシュとて長々とこの国に滞在するつもりはないだろう。それはベローズ王国警備隊とて同じ。長々と滞在すればいずれは入国したことがモーリッシュの耳に入ってしまい、取り逃す可能性がある。

 そのためギルはマーリナスの条件を飲むことにしたのだった。

 その夜。

 ベローズ王国警備隊の協力のもと明日の夜、決行が決まったとマーリナスが伝えると、アレクは嬉しそうに目を輝かせた。

「ベローズ王国警備隊が? それは百人力ですね。ベローズ王国警備隊ならば、自国の法にのっとって公正な判断をくだしてくれるはずです」

「そうだな。バロンのときのように一度捕らえられておきながら、釈放されるということにはならないだろう」

「ええ。ベローズ王国の国王は代々正義感が強く芯のある方ばかりですが、その公正な判断力は一目置かれるものです。絶対にそんなことにはなりません。僕が保証します」

「おまえが? ずいぶんと信頼しているのだな」

「ええ、まあ」

 珍しく鼻息を荒くして語るアレクに、マーリナスは驚きを隠せなかった。

 確かにベローズ王国が掲げる『正義と制裁』の名を知るものならば、その噂だけでも信用に値する判断材料になるかもしれない。

 だが歴代の王の性格など、従事するものでなければ知ることのできない情報だ。

 実際、長年この国に仕えているマーリナスとて国王の性格など知らないし、拝顔すらしたこともない。仮に噂で耳に入ったとしても、「保障する」などと言い切れるものだろうか。

 そのときマーリナスの胸に小さな違和感が芽生えたが、もうひとつ大事なことを伝えなければならないという思いで頭を切り替えた。

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