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第二章
闇の中に潜むもの
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「ベイーーンッ!! おーーい、ベイーーンッ!!」
いったいあれからどれだけの時間が経過したのか。モーリッシュはふらつく足で遺跡内を探し回り、のどがかれそうなほど叫び続ける。腹が空いて絶えずに鳴り続けていたが、そんなことに構っている暇はない。
「ベイーーンッ! はあっはあっ、ベイーーンッ!」
いったいベインに何があったのかわからないが、大事な商品を持ち逃げされたらたまったものじゃない。バレリアの呪いにかかった美少年など、一生に一度お目にかかれるかどうかの希少な商品なのだ。
今回バロンとは前回の五倍の値段で交渉は成立している。
いくら金を貯め込んでいるといってもその額はバロンとて痛かったに違いないが、バレリアの呪いによってバロンが魅了されていると知っていたモーリッシュは、必ず彼が首を縦に振ると踏んでいた。
予想通りバロンは愚かにも首を縦に振ったわけだが、商品を取り逃がしたとなるとそのうまい話もご破算だ。それだけはなんとしてもさけなければ!
そんな焦りがモーリッシュの体を懸命に動かしていた。汗だくになりながら息を切らし何度も叫び続ける。
ベインが逃げたのは部屋へ続く道ではなかった。ならばこの遺跡のどこかに隠れたはずだ。いったいどこに。
「この辺りじゃなかったか?」
「ええ。だいぶ近いように感じたのですが……また聞こえなくなってしまいましたね」
前方から聞こえたその声にモーリッシュはあわてて松明の火を消すと通路の影に身をひそめ、声の主をうかがった。
枝分かれした通路の角から姿を現したのはスタローン王国警備隊だ。ひとりは隊長格らしく格式高い制服を身にまとった濃紺色の髪をした青年だった。
(なぜここに!)
思わず口を押さえ、モーリッシュは静かに一歩一歩後ずさる。
「さきほどまた金庫を見つけましたが何も印を残してきていません。後続がうまく処理してくれるといいのですが」
「今回の捜査はバロンの隠し財産が目当てではない。そこを間違えるな。まずはアレクとモーリッシュの確保が最優先だ」
「はっ」
(なんだって!?)
その会話を耳にしたモーリッシュはさらに顔を青ざめる。警備隊が地下街に潜入していただけでも驚いたというのに、まさかこの遺跡に気づいて捜査をしていたとは。
加えて捜査対象は自分とあのアレクだ。
バロンとの約束の時間はとうに過ぎてしまったし、バロンも何かあったと気づいて自分やアレクを探しているだろう。せめてバロンより先にアレクを探し出したかったが、こんなときに警備隊まで現れるとは!
一刻も早くアレクを見つけ出さなければ。
バロンとの取り引きが破算になるのは残念だが、こうなっては悠長に取り引きをしている場合ではない。買い手ならごまんといる。まずは商品の確保。そして逃亡だ。即座に算段を整え、モーリッシュは警備兵が進んだ道とは別の方向にゆっくりと歩みを進める。
「隠し金庫か……」
さきほどの警備隊の言葉を思いだし、一歩一歩当てのない歩みを進めながらモーリッシュはその可能性に気がついた。
「まさかベイン……」
まさか警備隊にアレクを差し出すつもりじゃあるまいし、警備隊の目からも自分からもアレクを隠すとなるとそんな場所はひとつしかない。なぜいままでその可能性に気がつかなかったのか。
「そうか、なるほどね。少しは考えたじゃないか、ベイン。さてここから一番近い金庫は……あっちだね」
モーリッシュは余裕の表情を浮かべ、悠々と歩き出す。お金の入っている金庫は頑丈に鍵がかけられている。隠れるとするなら鍵のかかっていない偽物の金庫だろう。
「しかし……偽物には用がないから、ちょっと記憶があやふやだね」
首をひねりながら歩み始めたモーリッシュを影からのぞく瞳がある。
夜明け前の空のような群青色の瞳が研ぎ澄まされた眼光を放ち、ついに獲物をとらえた――
いったいあれからどれだけの時間が経過したのか。モーリッシュはふらつく足で遺跡内を探し回り、のどがかれそうなほど叫び続ける。腹が空いて絶えずに鳴り続けていたが、そんなことに構っている暇はない。
「ベイーーンッ! はあっはあっ、ベイーーンッ!」
いったいベインに何があったのかわからないが、大事な商品を持ち逃げされたらたまったものじゃない。バレリアの呪いにかかった美少年など、一生に一度お目にかかれるかどうかの希少な商品なのだ。
今回バロンとは前回の五倍の値段で交渉は成立している。
いくら金を貯め込んでいるといってもその額はバロンとて痛かったに違いないが、バレリアの呪いによってバロンが魅了されていると知っていたモーリッシュは、必ず彼が首を縦に振ると踏んでいた。
予想通りバロンは愚かにも首を縦に振ったわけだが、商品を取り逃がしたとなるとそのうまい話もご破算だ。それだけはなんとしてもさけなければ!
そんな焦りがモーリッシュの体を懸命に動かしていた。汗だくになりながら息を切らし何度も叫び続ける。
ベインが逃げたのは部屋へ続く道ではなかった。ならばこの遺跡のどこかに隠れたはずだ。いったいどこに。
「この辺りじゃなかったか?」
「ええ。だいぶ近いように感じたのですが……また聞こえなくなってしまいましたね」
前方から聞こえたその声にモーリッシュはあわてて松明の火を消すと通路の影に身をひそめ、声の主をうかがった。
枝分かれした通路の角から姿を現したのはスタローン王国警備隊だ。ひとりは隊長格らしく格式高い制服を身にまとった濃紺色の髪をした青年だった。
(なぜここに!)
思わず口を押さえ、モーリッシュは静かに一歩一歩後ずさる。
「さきほどまた金庫を見つけましたが何も印を残してきていません。後続がうまく処理してくれるといいのですが」
「今回の捜査はバロンの隠し財産が目当てではない。そこを間違えるな。まずはアレクとモーリッシュの確保が最優先だ」
「はっ」
(なんだって!?)
その会話を耳にしたモーリッシュはさらに顔を青ざめる。警備隊が地下街に潜入していただけでも驚いたというのに、まさかこの遺跡に気づいて捜査をしていたとは。
加えて捜査対象は自分とあのアレクだ。
バロンとの約束の時間はとうに過ぎてしまったし、バロンも何かあったと気づいて自分やアレクを探しているだろう。せめてバロンより先にアレクを探し出したかったが、こんなときに警備隊まで現れるとは!
一刻も早くアレクを見つけ出さなければ。
バロンとの取り引きが破算になるのは残念だが、こうなっては悠長に取り引きをしている場合ではない。買い手ならごまんといる。まずは商品の確保。そして逃亡だ。即座に算段を整え、モーリッシュは警備兵が進んだ道とは別の方向にゆっくりと歩みを進める。
「隠し金庫か……」
さきほどの警備隊の言葉を思いだし、一歩一歩当てのない歩みを進めながらモーリッシュはその可能性に気がついた。
「まさかベイン……」
まさか警備隊にアレクを差し出すつもりじゃあるまいし、警備隊の目からも自分からもアレクを隠すとなるとそんな場所はひとつしかない。なぜいままでその可能性に気がつかなかったのか。
「そうか、なるほどね。少しは考えたじゃないか、ベイン。さてここから一番近い金庫は……あっちだね」
モーリッシュは余裕の表情を浮かべ、悠々と歩き出す。お金の入っている金庫は頑丈に鍵がかけられている。隠れるとするなら鍵のかかっていない偽物の金庫だろう。
「しかし……偽物には用がないから、ちょっと記憶があやふやだね」
首をひねりながら歩み始めたモーリッシュを影からのぞく瞳がある。
夜明け前の空のような群青色の瞳が研ぎ澄まされた眼光を放ち、ついに獲物をとらえた――
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