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第五章
王の一手
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「まずはゴドリュースの確保。余の命に則り、誠に良くやってくれたと感謝の念に尽きぬ。モンテジュナルにも文を送ってみたのだが、未だに返答がなくての。どうやってあやつらがゴドリュースを手に入れることができたのかは、未だ不明のままのじゃ」
アレクはすっと眉を寄せる。
ということは、まだエレノアの調査が済んでいないということになる。
王が直々に拷問や審問を行うことはないが、あのエレノアのことだ。問い詰めれば情状酌量を求めて吐き出すはず。それすら未確認のままで褒めるなど、どうも話がおかしい。
「だがおまえ達の働きがなければ、あやつらを捕まえられなかったのは確か。その働きぶりは賛辞に値する。よってここに招いたわけだが……いくつか問題があっての」
ジュリアス王が目を細めながら髭を撫でる。アレクは視線を落とし、黙って話に耳を傾けた。
「おまえ達も自覚しておるだろうが、総督の許可を取らずに捜査をしたことが問題になっておる。総督はお飾りではない。国家の安全保障を余が一任している男なのだ。それを軽視されては余の立場もなくなるというもの」
予想通りの流れだ。だけどわざわざこの場で話を出す理由が分からない。マーリナスの処遇を決めるのは総督の権限だ。なぜ国王自らその話を始めるのか。
「おまえ達の功績でもあるし、余は大目に見ても良いと思っておるのだが、少々体裁を整える必要がある」
「わたしに出来ることがあれば、なんなりとお申し付け下さい」
マーリナスの言葉に国王はにこやかに頷く。傍らに立つ宰相も同様に。
「よく言った。ではそこにいるアレクとやらを余の従者と任ずる」
その言葉にアレク、そして国王に跪く全員が息を飲んだ。
ハッとアレクを振り向いたのはケルト。
その視線を感じながらアレクの背中には冷たい汗が流れ落ちる。
やっと国王ジュリアスの意図が分かった気がした。
国王がアレクの正体を既に知っている可能性を示唆したのはマーリナスだ。
けれど正直なところ、まさか、と。
そういった思いが拭いきれていなかった。
なぜならアレクは死亡したことになっているし、いくらモンテジュナルに詳しい情報を知っていたからといって、死んだはずの王子に結びつける理由など見当たらないからだ。
いまでさえ、ジュリアス王が知っている確証はない。
けれどいま、ひとつだけ嫌な予感がよぎった。それはジュリアス王が「呪い」のことを知っているのではないか、ということ。
そしてそれを利用しようと考えているのではないか。
でなければ、出所不明のアレクを国王の従者になんて据えるはずがない。
それがどれほど危険で由々しき決断であるか。
気でも触れたのかと呈されてもおかしくないというのに、宰相を始めとした全員が異を唱えない。そのことがさらに恐怖を募らせた。
「僭越ながら、国王殿下に申し上げます」
顔色を悪くしたアレクの隣でマーリナスが口を開く。
「うむ。発言を許す」
「ここにいるアレクは身寄りもなく放浪の末に地下街に身を寄せていた孤児です。なぜそのような者を求められるのでしょうか」
「それはおまえ達も良く知っているのではないか?」
「……と、申されますと」
「マーリナスよ、余を侮るでない。おまえもひとが悪い。バレリアの呪いにかかっている者を手中に収めようとは」
マーリナスの目が零れそうなほど見開かれ、凍りついたのが分かった。
それはロナルドも同じ。ケルトも、何よりアレク自身がその言葉の意味を受け入れられずにいた。
アレクはすっと眉を寄せる。
ということは、まだエレノアの調査が済んでいないということになる。
王が直々に拷問や審問を行うことはないが、あのエレノアのことだ。問い詰めれば情状酌量を求めて吐き出すはず。それすら未確認のままで褒めるなど、どうも話がおかしい。
「だがおまえ達の働きがなければ、あやつらを捕まえられなかったのは確か。その働きぶりは賛辞に値する。よってここに招いたわけだが……いくつか問題があっての」
ジュリアス王が目を細めながら髭を撫でる。アレクは視線を落とし、黙って話に耳を傾けた。
「おまえ達も自覚しておるだろうが、総督の許可を取らずに捜査をしたことが問題になっておる。総督はお飾りではない。国家の安全保障を余が一任している男なのだ。それを軽視されては余の立場もなくなるというもの」
予想通りの流れだ。だけどわざわざこの場で話を出す理由が分からない。マーリナスの処遇を決めるのは総督の権限だ。なぜ国王自らその話を始めるのか。
「おまえ達の功績でもあるし、余は大目に見ても良いと思っておるのだが、少々体裁を整える必要がある」
「わたしに出来ることがあれば、なんなりとお申し付け下さい」
マーリナスの言葉に国王はにこやかに頷く。傍らに立つ宰相も同様に。
「よく言った。ではそこにいるアレクとやらを余の従者と任ずる」
その言葉にアレク、そして国王に跪く全員が息を飲んだ。
ハッとアレクを振り向いたのはケルト。
その視線を感じながらアレクの背中には冷たい汗が流れ落ちる。
やっと国王ジュリアスの意図が分かった気がした。
国王がアレクの正体を既に知っている可能性を示唆したのはマーリナスだ。
けれど正直なところ、まさか、と。
そういった思いが拭いきれていなかった。
なぜならアレクは死亡したことになっているし、いくらモンテジュナルに詳しい情報を知っていたからといって、死んだはずの王子に結びつける理由など見当たらないからだ。
いまでさえ、ジュリアス王が知っている確証はない。
けれどいま、ひとつだけ嫌な予感がよぎった。それはジュリアス王が「呪い」のことを知っているのではないか、ということ。
そしてそれを利用しようと考えているのではないか。
でなければ、出所不明のアレクを国王の従者になんて据えるはずがない。
それがどれほど危険で由々しき決断であるか。
気でも触れたのかと呈されてもおかしくないというのに、宰相を始めとした全員が異を唱えない。そのことがさらに恐怖を募らせた。
「僭越ながら、国王殿下に申し上げます」
顔色を悪くしたアレクの隣でマーリナスが口を開く。
「うむ。発言を許す」
「ここにいるアレクは身寄りもなく放浪の末に地下街に身を寄せていた孤児です。なぜそのような者を求められるのでしょうか」
「それはおまえ達も良く知っているのではないか?」
「……と、申されますと」
「マーリナスよ、余を侮るでない。おまえもひとが悪い。バレリアの呪いにかかっている者を手中に収めようとは」
マーリナスの目が零れそうなほど見開かれ、凍りついたのが分かった。
それはロナルドも同じ。ケルトも、何よりアレク自身がその言葉の意味を受け入れられずにいた。
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