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第十七話【意外な料理との出会い】
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「今日は土曜日だから午前授業で終わりね。昨日は渡し損ねちゃったけど、今日こそはお弁当渡して一緒に食べるんだから」
一美ちゃんは一つの事に集中すると周りが見えなくなる。昔っからやんちゃだったけど、あの時を境にそれが顕著になった。しょうがないよね。
「一美ちゃん、せっかくみんなでお茶した時LIME交換したんだし、メッセージ入れれば渡せるんじゃない?」
意気揚々と一美ちゃんは振り返る。人差し指を立て、チッチッチ、と指を振る。
「違うのよ。こういうのはサプライズが大事でしょ。予め知ってたなら驚きは半減よ。それにお弁当を作ってくれる女子なんて得点高いでしょ」
うん、昨日の段階でバレてるとは思うけど。ここも一美ちゃんの魅力って事で。それに一美ちゃん料理出来るなんて知らなかった。いつもお屋敷のメイドさんに作ってもらってるんだと思ってた。
「それなんだけどね、今日先輩と一緒にお勉強会をすることになったの。だから一美ちゃんも一緒に来ない? そうすればお弁当渡せるよ」
「何それ! あんたまた私に隠れて会うつもりだったわけ?」
「ううん、ちゃんと言うつもりだったよ。最初から三人でやろうと思ってたの」
そう。この勉強会にはもう一つの目的があった。それは一美ちゃんの勉強嫌いの克服だ。毎回赤点ギリギリだけど、何回誘っても一緒に勉強はしてくれなかった。本当は二人きりで、と思って先輩を誘ったけど、よく考えたら絶対緊張するし、一美ちゃんの思いを差し置いたら絶対ダメだと思った。私はずっと、一美ちゃんの親友だから。
「なるほど、私を勉強させようとしてあいつをダシに使うわけね。上等じゃない、受けて立つわ」
あの一件から一美ちゃんは、先輩と私の中を執拗に探らなくなった。あんまり気にしていないというより、【私は私】のスタンスだと思う。私もそんな風になれたら、この気持ちはどうなっていたのだろう。
昼が来て、私達の教室に先輩がやって来た。開口一番先輩が発した言葉は。
「げ」
先輩は一美ちゃんを見るとビクっとなった。ちょっと苦手意識入ってるのかな? 確かに、告白した後には見えない言動だよね。というかいつもなんだけど。これが一美ちゃんだって慣れるには、私も時間かかったなぁ。
「何が、げ、よ。私も勉強会に参加することになったの。よろしくね」
「お、おう。そうか、よろしくな。田中も、いや田中先生もよろしくお願いします」
「やめて下さいよ先輩。そういうのはなしです」
「分かった。よし、早速始めようぜ」
「ちょっと待ってよ。まずは勉強の前に腹ごしらえでしょ。ほら、あんたのお弁当作ってきたから、食べなさいよ」
真っ赤なミニ風呂敷をずいっと渡された先輩は、ありがとう、と素直に受け取った。そしてカバンからお弁当箱を二個取り出した。
「俺も持って来てたんだけどさ、三人いるとは知らなくて。でもちょうど良かった。この二つは二人で食べてくれよ」
私達は机をくっつけて、それぞれのお弁当箱を広げた。
「わぁ、凄い。これ先輩が作ったんですか?」
「おう。天ぷら蕎麦弁当。海老と野菜の天ぷらはもう味付けしてあるから。蕎麦もパスタの要領でアレンジしてるから、そのまま食べれるぞ」
凄い。私より女子力高い。お母さんがシェフだとこんな風に育つのか。私も将来のために料理のお勉強もしよう。
「ちょっと、待って、これ全部あんたが作ったの?」
「おう、余り物でチャチャっとな」
一美ちゃんは膨れ顔でボソっといった。作戦失敗だわ、と。
「んじゃ山下のやつも見てみようぜ」
「い、いいわよ、見なくて」
「いやだって、見ないと食えないし」
「じゃぁもう今日はご飯抜き!」
「何でだよ!」
お弁当箱を取り合ってる内に、蓋が取れて床に落ちた。先輩はお弁当を見て目を丸くする。
「…えっと、これは何?」
「何って、見て分からないの? レバニラとチョコレートの炒め物に、ビタミン剤入りのいなり寿司。そしてこれが枝豆とカレー入りの炒飯」
一美ちゃんは、ふんっ、とそっぽを向いた。
「嫌なら食べなきゃ良いでしょ。私お弁当作るの初めてだし? まさかあんたが料理得意なんて知らなかったし。どうせ女子力低いって思ったんでしょ」
「いや、そこまで言ってないだろ。それにこういう弁当ってのは、どう出来たかよりも、作ってくれた事自体が料理なんだよ。それは有難いと思ってる」
そう言いながら、恐る恐る一美ちゃんのお弁当を食べる先輩から、驚きの表情が飛び出る。
「あれ? これ美味いぞ?」
「あ、私も食べてみたい。…本当だ、美味しい」
「何よ、二人とも気を使って。そんな同情なんていらないわよ」
「いや、本当だって、食ってみろよ」
一美ちゃんは世中先輩に無理矢理一口食べさせられる。何とか口まで持ってきたいなり寿司を食べると意外な味に驚いているようだ。
「あ、本当だ。めっちゃ美味い」
彼女の表情がパっと明るくなる。
「嬉しい!」
無邪気に笑う一美ちゃんは天使のようだった。このギャップが良いところなんだよな。
お昼ご飯を食べ終わり、私達は勉強を始めた。が、五分もしない内に一美ちゃんはイヤホンで音楽を聴き始めた。うぅ。確かに一美ちゃんの今日の目標は勉強の前に達成したけど。こんなんでこの勉強会は成功するのだろうか。
一美ちゃんは一つの事に集中すると周りが見えなくなる。昔っからやんちゃだったけど、あの時を境にそれが顕著になった。しょうがないよね。
「一美ちゃん、せっかくみんなでお茶した時LIME交換したんだし、メッセージ入れれば渡せるんじゃない?」
意気揚々と一美ちゃんは振り返る。人差し指を立て、チッチッチ、と指を振る。
「違うのよ。こういうのはサプライズが大事でしょ。予め知ってたなら驚きは半減よ。それにお弁当を作ってくれる女子なんて得点高いでしょ」
うん、昨日の段階でバレてるとは思うけど。ここも一美ちゃんの魅力って事で。それに一美ちゃん料理出来るなんて知らなかった。いつもお屋敷のメイドさんに作ってもらってるんだと思ってた。
「それなんだけどね、今日先輩と一緒にお勉強会をすることになったの。だから一美ちゃんも一緒に来ない? そうすればお弁当渡せるよ」
「何それ! あんたまた私に隠れて会うつもりだったわけ?」
「ううん、ちゃんと言うつもりだったよ。最初から三人でやろうと思ってたの」
そう。この勉強会にはもう一つの目的があった。それは一美ちゃんの勉強嫌いの克服だ。毎回赤点ギリギリだけど、何回誘っても一緒に勉強はしてくれなかった。本当は二人きりで、と思って先輩を誘ったけど、よく考えたら絶対緊張するし、一美ちゃんの思いを差し置いたら絶対ダメだと思った。私はずっと、一美ちゃんの親友だから。
「なるほど、私を勉強させようとしてあいつをダシに使うわけね。上等じゃない、受けて立つわ」
あの一件から一美ちゃんは、先輩と私の中を執拗に探らなくなった。あんまり気にしていないというより、【私は私】のスタンスだと思う。私もそんな風になれたら、この気持ちはどうなっていたのだろう。
昼が来て、私達の教室に先輩がやって来た。開口一番先輩が発した言葉は。
「げ」
先輩は一美ちゃんを見るとビクっとなった。ちょっと苦手意識入ってるのかな? 確かに、告白した後には見えない言動だよね。というかいつもなんだけど。これが一美ちゃんだって慣れるには、私も時間かかったなぁ。
「何が、げ、よ。私も勉強会に参加することになったの。よろしくね」
「お、おう。そうか、よろしくな。田中も、いや田中先生もよろしくお願いします」
「やめて下さいよ先輩。そういうのはなしです」
「分かった。よし、早速始めようぜ」
「ちょっと待ってよ。まずは勉強の前に腹ごしらえでしょ。ほら、あんたのお弁当作ってきたから、食べなさいよ」
真っ赤なミニ風呂敷をずいっと渡された先輩は、ありがとう、と素直に受け取った。そしてカバンからお弁当箱を二個取り出した。
「俺も持って来てたんだけどさ、三人いるとは知らなくて。でもちょうど良かった。この二つは二人で食べてくれよ」
私達は机をくっつけて、それぞれのお弁当箱を広げた。
「わぁ、凄い。これ先輩が作ったんですか?」
「おう。天ぷら蕎麦弁当。海老と野菜の天ぷらはもう味付けしてあるから。蕎麦もパスタの要領でアレンジしてるから、そのまま食べれるぞ」
凄い。私より女子力高い。お母さんがシェフだとこんな風に育つのか。私も将来のために料理のお勉強もしよう。
「ちょっと、待って、これ全部あんたが作ったの?」
「おう、余り物でチャチャっとな」
一美ちゃんは膨れ顔でボソっといった。作戦失敗だわ、と。
「んじゃ山下のやつも見てみようぜ」
「い、いいわよ、見なくて」
「いやだって、見ないと食えないし」
「じゃぁもう今日はご飯抜き!」
「何でだよ!」
お弁当箱を取り合ってる内に、蓋が取れて床に落ちた。先輩はお弁当を見て目を丸くする。
「…えっと、これは何?」
「何って、見て分からないの? レバニラとチョコレートの炒め物に、ビタミン剤入りのいなり寿司。そしてこれが枝豆とカレー入りの炒飯」
一美ちゃんは、ふんっ、とそっぽを向いた。
「嫌なら食べなきゃ良いでしょ。私お弁当作るの初めてだし? まさかあんたが料理得意なんて知らなかったし。どうせ女子力低いって思ったんでしょ」
「いや、そこまで言ってないだろ。それにこういう弁当ってのは、どう出来たかよりも、作ってくれた事自体が料理なんだよ。それは有難いと思ってる」
そう言いながら、恐る恐る一美ちゃんのお弁当を食べる先輩から、驚きの表情が飛び出る。
「あれ? これ美味いぞ?」
「あ、私も食べてみたい。…本当だ、美味しい」
「何よ、二人とも気を使って。そんな同情なんていらないわよ」
「いや、本当だって、食ってみろよ」
一美ちゃんは世中先輩に無理矢理一口食べさせられる。何とか口まで持ってきたいなり寿司を食べると意外な味に驚いているようだ。
「あ、本当だ。めっちゃ美味い」
彼女の表情がパっと明るくなる。
「嬉しい!」
無邪気に笑う一美ちゃんは天使のようだった。このギャップが良いところなんだよな。
お昼ご飯を食べ終わり、私達は勉強を始めた。が、五分もしない内に一美ちゃんはイヤホンで音楽を聴き始めた。うぅ。確かに一美ちゃんの今日の目標は勉強の前に達成したけど。こんなんでこの勉強会は成功するのだろうか。
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