49 / 75
四章
夜の蝶は秘密を抱いて苗床となる③①~side by 晃介~
しおりを挟むユウキは咲藤を庇っていた。
それは取り繕ってはいたが隠しきれない咲藤の狼狽した様子を見れば明らかで、ユウキの身体に残された生々しい傷跡を見て決定的となった。
ずっと昔から咲藤が俺に対して尊敬や忠誠心とは別の感情を持ち合わせている事はわかっていたが、俺がそれに応えるつもりは欠片もなく、放置した結果が今回の出来事に繋がったと思った俺は、ブーゲンビリア所有のノラを巻き込んだ謝罪と今回のコトを報告するため、マダムの元を訪れていた。
「まぁ、そういうことでございましたの。わざわざいらしていただいて恐縮ですわ。」
「すまないマダム。まさか咲藤がそこまでするとは思わなかった俺の落ち度だ。」
真っ赤なソファーに対面して座り、頭を下げる俺にマダムは微笑む。
「気になさらないで、と言ってもそうはできないのでしょうけれど・・・」
マダムは俺のカップに紅茶を注ぎながら、「難儀なものですね、咲藤様の思いも・・・」と苦々しそうに笑った。
「咲藤は秘書としては有能だが、この先俺の傍にいさせるかどうか・・・正直なところ懸念がないわけではないのです。アレが俺に対して持つ感情は、いつかきっと美比呂へと向く、そして腹の子にも。」
「・・・・・・そうですわね・・・・・・」
「・・・そこで、なんだがマダム、一つ頼みがある・・・」
「?頼み、ですか・・・?」
「・・・あぁ。」
コンコン
「失礼致します。お連れ致しましたがよろしいでしょうか。」
扉の外からかけられた声に、マダムは不思議そうに俺を見つめる。
「・・・あぁ、入ってくれ。」
俺の了承でノラに伴われて入ってきたのは咲藤だ。
「・・・咲藤様・・・」
呟いてマダムは俺と咲藤を見やって俺がどうするつもりなのか、次のアクションを待っている。
「咲藤、言うことがあるだろう。」
ビクッとした咲藤は、唇を噛みしめ、恭しくマダムに頭を下げ、自分の感情だけで突っ走ってユウキを手荒く扱い、傷つけたことをまずは詫びた。
「・・・大変申し訳ありませんでした。」
「・・・いいのよ、というわけにもいかないけれど・・・大怪我をしたり、ノラの・・・ユウキの心身に深く残る傷を残されたわけではないのならば、今回は不問と致します。ただし、次はありませんよ。ノラはうちの商品であり、大切なスタッフで、私の家族のようなものですから。」
「よろしいのですか、マダム。」
「えぇ。それに、部屋付きのヒナからも、ユウキに関して深い影響がありそうだとは連絡も入っておりませんし、今回は、ということで。」
「ありがとうございます。」
危害が大きい場合最悪ノラが使い物にならなくなり、注意では済まない場合もある。
そんな中、今回のケースではユウキに大きな危害が加えられなかったこともあり、注意と不問というカタチに治めてくれたマダムに俺は感謝を述べた。
「マダムのお心遣いには感謝する。だが・・・それでは俺の腹の虫が治まらないのですよ。」
「・・・と仰いますと?」
「・・・咲藤には罰を受けてもらう必要があると思っております。咲藤。」
「!はい・・・」
「お前の性嗜好は男か」
「・・・はい。ですが・・・ッ私は・・・」
「俺はお前を抱くコトはない。絶対にだ。それでも俺の傍で、晃臣の傍で秘書としていることを望むか?」
「勿論です!!私はこの先も晃介様のお傍に・・・!!」
「・・・お前の意向はわかった。だが、それを決めるのは俺だ。」
「マダム、咲藤への罰を与えるステージを用意してもらえないだろうか。」
「・・・かしこまりました。」
「・・・咲藤、お前はもっと賢いと思っていたよ。」
「・・・こ、う・・・すけ、さま・・・」
咲藤を見る事もなく残念な思いを零した俺に、絶望を浮かべた咲藤が名を呟いた。
残っていた紅茶を飲み干し、扉の傍で待機していたノラに頷くとノラは呆然としている咲藤の背に手を添えて退出して行った。
「すまないね、マダム。罰だとしてあいつには客を愉しませるショーをしてもらおうと思うんだ。それも・・・俺たちの前でね。勿論、ユウキも同席させるよ。」
「・・・伊坂様ったら・・・相変わらずの鬼畜ぶりに安心致しましたわ」
「ふふ・・・そうだろう?」
妖しく微笑むマダムは咲藤をこれっぽっちも気の毒だとは思っていない。
こういうコトすら許容し、客の要望であれば叶えるのがブーゲンビリアのやり方であり特色だからだ。
「では頼んだよマダム。」
「かしこまりました。」
また後程、プランは伝えるとマダムに告げ、俺は3人がいる自室へと足を向けた。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる