63 / 75
四章
夜の蝶は秘密を抱いて苗床となる④⑤
しおりを挟む「ヒナ、ユウキ、美比呂を見なかったか?」
咲藤様への怒りがあった時もいつも冷静な晃介様が息を切らして部屋へ飛び込んできて、ベッドメイキングをしたり、掃除をしていた俺とヒナさんに焦った様子で問いかけた。
「まだお戻りになっておりません、最後にお姿を見たのは?」
シーツをベッドへ放り、ヒナさんは晃介様の言葉を元にインカムで支配人に事態を報告する。
朝食を摂った帰り、手洗いに行きたいと廊下で離れた少しの時間に美比呂様は姿を消した。
「・・・俺、探してきます」
「ちょっと、ユウキ・・・!」
ヒナさんの制止を聞かず、俺はいてもたってもいられずに部屋を飛び出した。
美比呂様・・・
美比呂様・・・!!
美比呂様がと言った手洗いに行き、声をかけてから中に入る。
個室は全て空いていて、誰かが使用した形跡はない・・・
「・・・?これ・・・」
一番奥の個室に落ちていたのは、美比呂様が髪を留めていたバレッタだった。
「なんで・・・」
外れたら自分で拾える、そして直すだろう、それをしなかったのは考えにくい・・・考えられるのは・・・
「・・・できなかったから・・・」
バレッタを拾い、俺はブーゲンビリアの管理室に向かった。
「すいま、せん・・・!はぁ、はぁ・・・っ」
「おぅ、ユウキ、どうした?」
「あ、の・・・っ・・・は、ァ・・・」
「・・・おい、大丈夫か?(笑)」
スーツで煙草をふかす、ガラガラとした気のいいおっさんに俺は施設内のカメラを見せてくれと頼んだ。
客室内や大浴場、プライバシーが関わるところには設置していないが、廊下やロビー、出入り口など共用部にはカメラが設置されている。
それも以前にノラが客に監禁されて以来のこと。
「何かあったのか?」
「・・・女性のお客様が1人、行方がわからないんです。」
「・・・わかった、お前はリアルタイムの方を見ていろ。俺は録画の方に目を通す。」
手分けして映像をチェックし、カメラのあちこちには明らかにいつもと違う動きを客に察知されないよう美比呂様を探すノラたちの姿が増えていった。
・・・どこだ・・・
・・・・・・どこだ・・・っ
焦れば焦る程早く時間が経過していくようで、マウスを操作する手には汗が滲む。
「おい、ユウキこれ」
おっさんに呼ばれ覗き込んだモニターには、
「これ、男女の2人だがなんか・・・雰囲気がおかしくないか?」
「・・・美比呂様・・・!」
「ユウキ!!」
「ありがとう!おっさん!支配人やヒナさんたちにも連絡を!」
俺は映像に映っていたのを美比呂様だと確信し、その男・・・咲藤に抱かれて出た通用口へ急いだ。
従業員専用の地下の通用口は、何かあった時の為の隔離部屋があり、この通路はとてつもない距離の先に外へと繋がるゲートがあって、森の外へと出る事が出来る。
「美比呂様・・・!」
なんで咲藤が・・・
あの晩以降咲藤は、男性のノラからノラの仕事の手ほどきを昼夜問わず施されて・・・
本人の意思など関係なく、快楽漬けにされているはずだ・・・
「・・・あ、ヒナさん、美比呂様を連れ去ったのは咲藤さま・・・いや、咲藤です。俺は地下通路から2人を追います!」
『ちょ、待ちなさいユウキ・・・!あの人に指導していたノラが殴られて気絶した状態で見つかったわ、あなた1人じゃ・・・!!』
「・・・いえ、俺行かなきゃ・・・俺が必ず助けます・・・」
『ユウキ!』
走り続けた途中には駐車場があり、そこから車が1台なくなっていた。
・・・まずい・・・
このまま逃げられたら・・・
・・・ヴォン・・・!!
1台が通る幅しかない通路、俺はバイクに飛び乗ってエンジンをかけた。
・・・そういえば、バイクの乗り方も車の運転も、ここに来て教えてもらったんだっけな・・・
アクセルを全開にしながら感傷に浸りそうになる思考を強い向かい風が吹き飛ばした。
『ユウキくん』
俺に笑いかけて名前を呼んでくれた美比呂様。
コンクリート打ちっぱなしの通路に強い排気音が響いた。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる