秘密~箱庭で濡れる~改訂版

焔 はる

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四章

夜の蝶は秘密を抱いて苗床となる⑤④~side by ユウキ ~

・・・・・・
※怪我の治癒や治療についての時間、動けないユウキは尿カテを入れているのでは、などはぬるく薄目で見逃してくださると幸いです。




ーーーーーーーーーーーーーーーー





VIP待遇の病室に入院している美比呂様と会話をすることができたのは、入院した翌日だった。


互いにベッドから下りることはできずに、お隣さん同士の患者としてそれぞれの状態を報告し合い、知らぬ間に大怪我をしていた俺を見て美比呂様は一瞬だけ顔を顰めて唇を噛み「助けてくれてありがとう」と苦しそうに微笑った。


美比呂様の状態は落ち着いており、数週間から1ヶ月程で退院してもよいと医師から言われているそうで、全身あちこち骨折している俺の方が入院は遥かに長引きそうなのは明らかだった。




安静にしている以外することもない俺たちの元には毎日、ヒナさんが、晃介様が、マダムが、朱鷺将様が、それと、朱鷺将様の部下の人達が入院の間退屈をしないようにとテレビゲームに漫画、小説、パソコン、しまいには株取引の指南書、競馬や競輪などの新聞や雑誌までもが届くようになり、広いはずのVIP部屋を埋め尽くすように見舞いの品が占領していくのを、訪れるヒナさんが整理するのが日課になっていった。




「本当に皆さん日を開けずに毎日毎日・・・」



持ち込まれた品数の多さに、ここで商売ができそうですよと呆れるヒナさんが、俺と美比呂様に「読みたい本はありますか?」とか、妊娠中でも平気なハーブティーを美比呂様に勧めたり、甲斐甲斐しく世話をしてくれている。



「ヒナさん、すいません、毎日大変でしょう?」



「いえ、美比呂様のお世話をさせて頂けることはとても光栄なことです。」



晃介様も病室に顔を出してくださるが、咲藤についての後始末を朱鷺将様とマダムとしていることもあり、滞在時間が一番長いのはヒナさんだった。



「ヒナさん、すいません俺のことまでって!いって!!」



ヒナさんの後輩ノラでしかない俺の分際で先輩のヒナさんの手を煩わせることにとてつもない罪悪感を抱く俺の肩をペシッとヒナさんの手がはたいた。



「ユウキ、あなたは美比呂様を守ろうとした結果そうなったのよ?ひとつ間違っていたら死んでいたかもしれないの。それをこうして生きているあなたの世話をできるなんてあなたが謝ることは何ひとつないのよ。だからもう謝らないで。」



怒っているような、ぶつけようのない感情を堪えているようなヒナさんの言葉に、横のベッドに身体を起こした美比呂様もうんうんと頷きながら微笑んでいる。



「・・・すいま・・・ありがとう、ございます・・・」



「ふふ、仲直りね」



「・・・美比呂様・・・揶揄わないでください・・・」



「ふふふ、だってなんだか姉弟みたいなんですもの」



コンコン



「はい、どうぞ」



いたたまれなくなりそうな会話を遮ってくれたのは、朱鷺将様を連れ立って入ってきたマダムだった。




「失礼致します。あ・・・美比呂様、起き上がられて体調はよろしいのですか?」



ベッドに座る美比呂様の背を支えるように近づいたマダムに、美比呂様が笑顔で頷いた。



「えぇ、申し訳ありませんマダム、こんな大事になってしまって・・・ユウキくんまで大怪我をさせてしまい・・・」



マダムの手に触れた美比呂様の謝罪にマダムは首を振り、



「いえ、この度あの館で起きた事は全て私の責任です。出入りする者をきちんと管理監督できずに、害を成す者を入れてしまった。本当に申し訳ありません。」



長年の常連であった晃介様の秘書であった咲藤が起こした今回の一件。



その責任を感じるマダムの背後で、



「私からも謝罪をさせて頂きたい。申し訳なかった。」



朱鷺将様も頭を下げた。



「お二人とも頭をお上げ下さい・・・!私とユウキくんがここにいられるのは、みなさんが動いて下さったからだと伺っています。それに・・・お腹の子も無事です、謝罪はもう終わりにしませんか?」



ふふふ、と美比呂様が笑った。



「・・・美比呂様・・・」



「え、え?どうしたんですか?ヒナさんっ」



美比呂様は抱きついて泣くヒナさんを抱きとめて背をさすり、困惑しながらも微笑んでいた。



「美比呂様、この度の件の謝罪として、ブーゲンビリアキャストのノラである、ヒナとユウキを無償譲渡というカタチでお渡ししたく存じます。」



「え・・・?え??それって・・・」



どういうことだ?



無償譲渡??



「伊坂様もご承諾の上のお話でございます。以前にもユウキとヒナを譲り受けたいと仰っておられましたが、今回の件はこれで手打ちとして責任は追及しないとの仰せですが、最終決定は美比呂様に任せると仰せつかっております。」



「え・・・?ヒナさんとユウキくんを・・・?」



どうやら先日晃介様から言っていただいた、俺の元に来いという話は、晃介様とマダムとの話しでこうなったらしいのだが、あまりの急展開に思考が追い付かないのは美比呂様も同じで、俺とヒナさんを交互に見て、



「でも・・・二人はそれでいいの・・・?」



「っ・・・もちろんです!!晃介様と美比呂様のお傍にいさせて頂けるのならこれ以上の悦びはありません!」



「・・・俺も・・・ブーゲンビリアを出たいとか考えたことはなかったけど・・・でも許されるのなら、お二人の傍にいたいです」



客とノラとして出会ってからほんの数日。



それでも、濃厚すぎる時間の中で俺の中に何かが生まれ、何かが変わったのは確かだった。



自分を犠牲にしても誰かを助けようと思うなんて、美比呂様でなかったらそんなこと思わなかったはずだ。



「美比呂様、お嫌でなかったら、ご迷惑でなかったら、私たち2人をお傍に置いて頂けませんか?晃介様、美比呂様、お生まれになられるお子様にも誠心誠意仕えさせて頂きたく存じます」



美比呂様の手を握り、頭を下げるヒナさんに習い、俺も頭を下げた。



「・・・そんなの・・・そんな・・・いいの・・・?本当に・・・?よろしいのですか?マダム。」



「はい、二言はございません。」



「・・・・・・どうしよう・・・私・・・これからも2人といられるなんて・・・嬉しくて・・・どうしたらいいの・・・」



「美比呂様・・・それは・・・」



「ヒナさん、ユウキくん、これからよろしくお願いしますね」



「・・・・・・~~っみ、みひろ、さまぁぁぁっ」



「あははは、ヒナさん、今日は泣き虫ね」



「だって、だって・・・っ」



「ふふふ、じゃあ決まりね。ヒナとユウキには偽の戸籍を準備して、うちの姓に入ってもらいます。それは朱鷺将の方で進めてくれるから心配いらないわ。あとはまず、ユウキは怪我を治すことに専念すること。ヒナは美比呂様とユウキの身の回りのことを頼むわね。」



「承知致しましたマダム」



立ち上がり、胸に手を当てて頭を下げるヒナさん。



「では俺は事後処理の進捗を見に一度事務所に戻る。何かあれば連絡しろ。」



「えぇ、ありがとう。よろしく頼むわね」



立ち上がったマダムが朱鷺将様と軽く抱き合い唇を重ねた。



「マダム・・・こんな時にあれですが・・・なんていうか・・・」



「いいの、言わなくていいのよユウキ」



「なんていうか・・・ラブラブですね」



「ユウキ」



俺は言わずにはいられなかった。



だって、ものすごくラブラブだったから。





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更新は不定期です、次回更新は未定です。

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