5 / 9
第一章 幼年期
4 竜神の祠参り
しおりを挟む
村を案内してほしいという万桜を連れて、ボクは竜の祠へと足を運んだ。
ここは村の信仰の中心となる場所である。
といっても、みんなでかわるがわる掃除をして、年に4回ぐらい祠の前で宴会をして飲んで楽しむといった使われ方をしている場所であり、それ以上の儀式が行われるのを見たことがないけど。
祠は小さな石造りの建物である。中には竜神様の像が収められているだけだ。
「へえ、竜神信仰ね」
「何か知ってるの?」
「うちの国にある竜神大社も同じ神様祭ってるからね。といっても瑞穂全体から見るとマイナーなほうだけど」
「へー、マイナーなんだ。ボクはこの神様しか知らないけど、そんなにいっぱい神様がいるんだね」
ひとまず二人で竜神様にお祈りをする。
両手を合わせてパン、と手を打ち、そのあと頭を下げて拝む。
「この竜神様の像、何でできてるんだろう。きれいだね」
「わかんないけど、きれいだよね」
竜神様の像は小さなもので、手のひら二つ分ぐらいの大きさしかないが、日光を反射して七色に光る不思議なものだ。とてもきれいなので、これをまず万桜ちゃんに見せたかったのだ。
案の定万桜ちゃんも気に入ってくれたようだ。
「何お祈りしたの?」
「村でお世話になりますって一応ね」
「万桜ちゃんは真面目だなぁ」
「そういう杏珠ちゃんは何をお祈りしたの?」
「今日の夕飯は猪鍋がいいなって」
「それ竜神様にお祈りしなくてもおばあちゃんたちにお願いすればいいじゃない」
「なんかいったら負けな気がする」
ボクがお願いすればまずかなうのだが、それをしたら負けな気がするのだ。
だから基本料理のリクエストは、聞かれない限り言わないようにしていた。
だから竜神様にお願いするのだ。
「でも、竜神様あんまりかなえてくれないんだよね。大体一割ぐらい」
「そりゃそうでしょ…… 竜神様にお願いすることじゃないよ」
「そんなものかな」
「そんなものだよ」
やれやれ、といった目でボクを見る万桜ちゃん。
万桜ちゃんから見るとボクはかなり変わった娘さんらしい。
「で、どうするの? ここでしばらくお話してもいいと思うけど。きれいだし」
祠はちょっと高いところにあるので、村も見えれば海も見える、風景のいいところだ。
ここで二人でお話してるのも楽しそうだけど、目的地は別にある。
「この奥に入ってみようよ」
「え、ここって入っていいの?」
「ダメとは言われてないよ」
祠の後ろに洞窟があるのだ。そこに今日は入ってみようと万桜ちゃんを誘うが、万桜ちゃんは若干腰が引けている。
「こういうところって竜神様のお家だから、入っちゃいけないんじゃないかな」
「前おじいちゃんに聞いたら気を付けるんじゃぞ、といわれただけだから多分大丈夫」
洞窟は薄暗くて、一人で入る勇気はなかったので入ったことはないが、万桜ちゃんと二人なら入れる気がする。
大人たちにお願いしたこともあるが、これだけは誰一人として同行してくれなかったのだ。
本当に入っちゃいけないのか、大人が入っちゃいけないのか、その辺はよくわからなかったが、入りたがるボクを止める人はいなかったので、多分大丈夫だろうと思っていた。
「でも真っ暗じゃない。危ないよ」
「そういうときのために、『光よ!』」
竜神語で呪文を唱えると、指先に光の玉が現れる。
そう強い光ではないが、これなら大丈夫だろう。
術は、村のマリばあちゃんから教えてもらったものだ。
そんなすごいことはできないが、細かいところに手が届く便利なもので、簡単なものならボクでも使える。
「え、杏珠ちゃん、術師だったの?」
「術師って威張れるほどじゃないよ。光を出すのと、水を出すのと、火種を出すぐらいしかできないもの」
物語で時々術師は出てくるが、とてもすごい術を使うのだ。地を割って敵を飲み込んだり、平原一面を焼け野原にしたり、そういったことができるのである。
ボクができることなんて、今言ったこと以外は、そよ風を起こすとか、土を盛り上げて躓かせるとか、それくらいしかできない。せいぜいひよっこ術師、といったところだろう。
最低でもマリばあちゃんみたいに、火の術で魚が焼けるぐらいじゃないと術師といっちゃいけない気がする。
「いや、簡単な術でも使えたら術師だよ。すごいね、杏珠ちゃん」
「もっと褒めていいよ!」
「えらいえらい」
「えへへへへ」
豆知識や、こういったプチすごいことをすると、すぐに万桜ちゃんは褒めて頭を撫でてくれる。
村の人も大げさに驚いたりしてくれるが、万桜ちゃんの褒めるのは自然なのでとても楽しいのだ。
「じゃあ、さっそく入ってみよう。はい、これ」
「この光の玉って受け渡しできるの?」
「できるよ、ほら」
「わっ、ほんとだすごいね」
指と指を合わせると、光の玉は万桜ちゃんの指先に移った。
自分の分は再度術を使って指先に出現させる。
「それじゃあ出発~」
「危なかったらすぐ戻るからね?」
「はーい」
そうしてボクたちは、洞窟の中へとすすんでいくのだった。
ここは村の信仰の中心となる場所である。
といっても、みんなでかわるがわる掃除をして、年に4回ぐらい祠の前で宴会をして飲んで楽しむといった使われ方をしている場所であり、それ以上の儀式が行われるのを見たことがないけど。
祠は小さな石造りの建物である。中には竜神様の像が収められているだけだ。
「へえ、竜神信仰ね」
「何か知ってるの?」
「うちの国にある竜神大社も同じ神様祭ってるからね。といっても瑞穂全体から見るとマイナーなほうだけど」
「へー、マイナーなんだ。ボクはこの神様しか知らないけど、そんなにいっぱい神様がいるんだね」
ひとまず二人で竜神様にお祈りをする。
両手を合わせてパン、と手を打ち、そのあと頭を下げて拝む。
「この竜神様の像、何でできてるんだろう。きれいだね」
「わかんないけど、きれいだよね」
竜神様の像は小さなもので、手のひら二つ分ぐらいの大きさしかないが、日光を反射して七色に光る不思議なものだ。とてもきれいなので、これをまず万桜ちゃんに見せたかったのだ。
案の定万桜ちゃんも気に入ってくれたようだ。
「何お祈りしたの?」
「村でお世話になりますって一応ね」
「万桜ちゃんは真面目だなぁ」
「そういう杏珠ちゃんは何をお祈りしたの?」
「今日の夕飯は猪鍋がいいなって」
「それ竜神様にお祈りしなくてもおばあちゃんたちにお願いすればいいじゃない」
「なんかいったら負けな気がする」
ボクがお願いすればまずかなうのだが、それをしたら負けな気がするのだ。
だから基本料理のリクエストは、聞かれない限り言わないようにしていた。
だから竜神様にお願いするのだ。
「でも、竜神様あんまりかなえてくれないんだよね。大体一割ぐらい」
「そりゃそうでしょ…… 竜神様にお願いすることじゃないよ」
「そんなものかな」
「そんなものだよ」
やれやれ、といった目でボクを見る万桜ちゃん。
万桜ちゃんから見るとボクはかなり変わった娘さんらしい。
「で、どうするの? ここでしばらくお話してもいいと思うけど。きれいだし」
祠はちょっと高いところにあるので、村も見えれば海も見える、風景のいいところだ。
ここで二人でお話してるのも楽しそうだけど、目的地は別にある。
「この奥に入ってみようよ」
「え、ここって入っていいの?」
「ダメとは言われてないよ」
祠の後ろに洞窟があるのだ。そこに今日は入ってみようと万桜ちゃんを誘うが、万桜ちゃんは若干腰が引けている。
「こういうところって竜神様のお家だから、入っちゃいけないんじゃないかな」
「前おじいちゃんに聞いたら気を付けるんじゃぞ、といわれただけだから多分大丈夫」
洞窟は薄暗くて、一人で入る勇気はなかったので入ったことはないが、万桜ちゃんと二人なら入れる気がする。
大人たちにお願いしたこともあるが、これだけは誰一人として同行してくれなかったのだ。
本当に入っちゃいけないのか、大人が入っちゃいけないのか、その辺はよくわからなかったが、入りたがるボクを止める人はいなかったので、多分大丈夫だろうと思っていた。
「でも真っ暗じゃない。危ないよ」
「そういうときのために、『光よ!』」
竜神語で呪文を唱えると、指先に光の玉が現れる。
そう強い光ではないが、これなら大丈夫だろう。
術は、村のマリばあちゃんから教えてもらったものだ。
そんなすごいことはできないが、細かいところに手が届く便利なもので、簡単なものならボクでも使える。
「え、杏珠ちゃん、術師だったの?」
「術師って威張れるほどじゃないよ。光を出すのと、水を出すのと、火種を出すぐらいしかできないもの」
物語で時々術師は出てくるが、とてもすごい術を使うのだ。地を割って敵を飲み込んだり、平原一面を焼け野原にしたり、そういったことができるのである。
ボクができることなんて、今言ったこと以外は、そよ風を起こすとか、土を盛り上げて躓かせるとか、それくらいしかできない。せいぜいひよっこ術師、といったところだろう。
最低でもマリばあちゃんみたいに、火の術で魚が焼けるぐらいじゃないと術師といっちゃいけない気がする。
「いや、簡単な術でも使えたら術師だよ。すごいね、杏珠ちゃん」
「もっと褒めていいよ!」
「えらいえらい」
「えへへへへ」
豆知識や、こういったプチすごいことをすると、すぐに万桜ちゃんは褒めて頭を撫でてくれる。
村の人も大げさに驚いたりしてくれるが、万桜ちゃんの褒めるのは自然なのでとても楽しいのだ。
「じゃあ、さっそく入ってみよう。はい、これ」
「この光の玉って受け渡しできるの?」
「できるよ、ほら」
「わっ、ほんとだすごいね」
指と指を合わせると、光の玉は万桜ちゃんの指先に移った。
自分の分は再度術を使って指先に出現させる。
「それじゃあ出発~」
「危なかったらすぐ戻るからね?」
「はーい」
そうしてボクたちは、洞窟の中へとすすんでいくのだった。
0
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生後はゆっくりと
衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。
日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。
そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。
でも、リリは悲観しない。
前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。
目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。
全25話(予定)
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
王宮メイドは今日も夫を「観察」する
kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」
王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。
ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。
だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……?
※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。
転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる