魔王大戦紀 あるいは竜姫杏珠の物語

みやび

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第一章 幼年期 

5 竜神洞窟の探検

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洞窟は、きれいな鍾乳洞だった。
天然の洞窟のようだけど、地面もあまり凸凹はなく歩きやすい。
天井もそれなりに高くて、ボクも万桜ちゃんもしゃがまずに進める広さだった。
そんな中、ボクは万桜ちゃんと手をつないで進んでいく。

「ここの壁とか床も、七色に光ってるね」
「え? ほんとう?」
「うっすらとだけどね。竜神様の像と同じものなのかも?」

よく目を凝らすと、確かに魔法の光を反射して、白い壁や床の岩が少しだけ七色にきらめく。
竜神様の像と光り方が似ている気がする。
ただ、うっすらとであり、竜人様の像ほどキラキラしていないけど。

「これはこれで綺麗だね」
「そうだね。これくらいのほうが落ち着いて見られる気がするよ」

ぽたりぽたりと水が落ちる鍾乳洞の中、暗いので足元を慎重に確認しながら進んでいく。
空気が冷たくて、見通しが利かないのが少し怖いが、万桜ちゃんの手の温度を手に感じて少し落ち着く。
思わずムニムニと、万桜ちゃんの手を握ってしまう。

「杏珠ちゃん、くすぐったいよ」
「手があったかくて」

万桜ちゃんを振り返ると、なんだかうれしそうに微笑んでいた。
ボクもうれしくなって思わず笑ってしまった。
二人で笑いあうのがとても楽しい。

暗い洞窟の中、寒い空気の中、孤独にさえ無まれそうになっても、万桜ちゃんがいればどこでも安心できる。
万桜ちゃんも多分ボクに同じようなことを考えているのではないか。
なんとなく非常に心強かった。

そうしてご機嫌に二人で洞窟をゆっくり進んでいく。
床が滑るのもあり、あゆみは慎重になる。ゆっくりゆっくりと進んでいき……
そんな風に洞窟を進むボクたちの冒険は、しかしすぐに終わってしまった。

「いきどまりだね」
「いきどまりだね」

すぐに行き止まりにぶつかってしまったのだ。
床や天井に気を付けながら進んできたのだから本当に少ししか進んでいないだろう。
周りを見回しても三方壁である。
もしかしたら途中で分かれ道があって見逃してしまったのかもしれないけど……

ここで壁にレリーフでもあればかっこいいのだけれども、壁はつるっとした岩しかない。
本当に何もなかった。

「ちょっと寒くなってきたし、帰ろうか」

万桜ちゃんがそういう。
確かに中は夏にもかかわらず寒かった。
ボクは寒さに強いからまだ大丈夫そうだが、万桜ちゃんのいつもつやつやで真っ赤な唇が少し青ざめている。
そんなに長くいたわけではないのだけれども、寒さに強くないのかもしれない。

『……で』
「ん、何か聞こえた気がする」

万桜ちゃんの言う通り帰ろうかと思ったときに、正面の壁から何か聞こえた気がした。
洞窟の壁は、鍾乳洞になっていてかなりデコボコしていたが、ここだけまっ平のツルツルだ。
よくよく考えると少し不自然だった。

「ごめん万桜ちゃん、もうちょっとだけ」
「もう、仕方ないなぁ」

少し調べてみようと壁に手を伸ばすと……

「えっ!?」
「わわわわあああ!!」

手が壁をすり抜けた。
壁に手が当たると思っていたボクは前に体勢を崩す。
万桜ちゃんが必死に手を引っ張ってくれたが、非力な万桜ちゃんではボクを支えきれなかったようだ。
必然的にボクは壁に吸い込まれていき、手を離さなかった万桜ちゃんも一緒に壁に吸い込まれた。
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