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第一章 幼年期
6 竜神様との出会い
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「いたたたた……」
「大丈夫? 杏珠ちゃん」
壁を抜けた先は水たまりであった。
くるぶしほどの水が張られた空間で、周りは四方ともつるりとした岩壁に囲まれている。
水たまりの中に座り込んでしまったボクの手を万桜ちゃんが引っ張って立たせてくれる。
そんな水だらけところに落ちたから、ボクも万桜ちゃんもびしょぬれである。
「ここ、どこだろうね」
『ふむ、お嬢さんがた。ここに何の用かな?』
「え?」
空間に反響して響き渡る男性の声に驚きあたりを見回す。中心のあたりにある大きな岩の方から声が出ているようだ。
よくよく目を凝らすと……
「え? 竜がいる?」
万桜ちゃんが驚きの声を上げた。
空間の真ん中にいたのは、なんと竜だった。
『こんなところに子供が二人とは、めずらしいの』
ゆっくりとした落ち着いた声があたりに響く。
目を凝らすと、真ん中にいたのは岩ではなく真っ黒なうろこをした黒竜であった。
こちらを金色の目が見つめている。
「え、えっとはじめました? ボクは杏珠といいます。竜海村の娘です。こっちが万桜ちゃん」
「初めまして。天尾万桜といいます」
焦って噛み噛みなボクと違って、万桜ちゃんは優雅にお辞儀した。
くそう、これが育ちの差なのだろうか。
『緊張せんとも、取って食いはせぬよ』
「さすがにそれは心配していないけど…… 竜神様だと思うと緊張しちゃって」
『そんなもんかの。で、何か望みでもあるか?』
「望み?」
『子孫が遊びに来たんじゃし、何か土産でも持たせてやろうかと思っての』
「え、ボクって竜神様の子孫なの?」
なんかとんでもないことを聞いた気がする。
竜神様の子孫なんて聞いたことないが、まあ竜人なんだしどこかに竜の祖先がいてもおかしくないのだろうか。
『たぶんの。で、そっちの子がおぬしの友達じゃろ。なら何でもかなえてやろう』
「なんでも?」
『すまん、儂ができる程度のことで』
訂正されてしまった。残念。
「んー、万桜ちゃんなにかある?」
「え、杏珠ちゃん自分のなんだから自分で決めていいと思うよ?」
「あんまり思いつかなくて。万桜ちゃんは何かある?」
「んー、じゃあこの際だし。竜神様。今瑞穂の国は戦乱に覆われております。その戦乱の世を止めることはできないでしょうか」
「なにそれかっこいい!?」
万桜ちゃんの言う願いはとてもかっこよかった。
夕飯を肉鍋にするか、海鮮鍋にするかどっちをお願いしようと悩み、両方といったら怒られるかな、と悩んでいた自分がアホの子に思えてくる。
「願い事…… そうだ、ボクは万桜ちゃんと一緒にずっといたいかな。あと村の外にも出てみたい!」
とっさに思い浮かんだことを叫ぶ。
なんか二つお願いしたみたいだけど、可愛いボクに免じて許してほしい。
ボクがそんなことを言うと、万桜ちゃんが真っ赤になってしまった。
「あ、杏珠ちゃん、積極的だね……」
「だって万桜ちゃんのこと大好きだからね!」
「わ、私も杏珠ちゃんのこと好きだよ」
「わーい」
『若いのはいいのぉ』
竜神様の前で仲良しアピールをしてしまい、少し恥ずかしくなったが、まあいいとギューッと万桜ちゃんにくっつく。
竜神様は楽しそうに笑った。
『わしが俗世にかかわるのはご法度じゃが…… そうじゃの。年寄りから少しだけ助言じゃ』
「なになに?」
『万桜とやら。戦国の世は人により終わらせねばならぬ。主が生を尽くすなら、その望み、かなうじゃろう』
「え、なんかすごそう」
戦国の世を終わらせるってすごくないだろうか。
ボクは村の外の状況は全く分からないが、戦の続く世の中を平和にするなんて、英雄か何かのようだ。
万桜ちゃんは、そういわれて愁傷に言葉に耳を傾けている。
『その時、一番大事なものを手放すなよ。手放したら主の命はなくなるじゃろう』
「大事なもの?」
『それは主が一番わかっておるはずじゃ』
大事なものを手放すな、だって。竜神様の言い回しは持って回った感じで、わかりにくい気がする。
少なくともボクにはよくわからなったが、万桜ちゃんはまじめな顔しているし、何か分かったのかもしれない。
『さて、子供たちよ、そろそろ帰るのじゃ。ここは冷える。風邪をひいてしまうぞ』
「帰るってどうやって?」
周り中岩だらけだ。出口は見つからないのだけれども……
『ほれ、送ってやるから目をつぶるのじゃ』
「んっ」
『子供たちの行く末に栄光あれ』
そんな声が響くと、ボクたちは洞窟の前に戻っていた。
万桜ちゃんも隣で驚いた顔をしている。
ボクたちの洞窟探検は、これで終わるのだった。
「大丈夫? 杏珠ちゃん」
壁を抜けた先は水たまりであった。
くるぶしほどの水が張られた空間で、周りは四方ともつるりとした岩壁に囲まれている。
水たまりの中に座り込んでしまったボクの手を万桜ちゃんが引っ張って立たせてくれる。
そんな水だらけところに落ちたから、ボクも万桜ちゃんもびしょぬれである。
「ここ、どこだろうね」
『ふむ、お嬢さんがた。ここに何の用かな?』
「え?」
空間に反響して響き渡る男性の声に驚きあたりを見回す。中心のあたりにある大きな岩の方から声が出ているようだ。
よくよく目を凝らすと……
「え? 竜がいる?」
万桜ちゃんが驚きの声を上げた。
空間の真ん中にいたのは、なんと竜だった。
『こんなところに子供が二人とは、めずらしいの』
ゆっくりとした落ち着いた声があたりに響く。
目を凝らすと、真ん中にいたのは岩ではなく真っ黒なうろこをした黒竜であった。
こちらを金色の目が見つめている。
「え、えっとはじめました? ボクは杏珠といいます。竜海村の娘です。こっちが万桜ちゃん」
「初めまして。天尾万桜といいます」
焦って噛み噛みなボクと違って、万桜ちゃんは優雅にお辞儀した。
くそう、これが育ちの差なのだろうか。
『緊張せんとも、取って食いはせぬよ』
「さすがにそれは心配していないけど…… 竜神様だと思うと緊張しちゃって」
『そんなもんかの。で、何か望みでもあるか?』
「望み?」
『子孫が遊びに来たんじゃし、何か土産でも持たせてやろうかと思っての』
「え、ボクって竜神様の子孫なの?」
なんかとんでもないことを聞いた気がする。
竜神様の子孫なんて聞いたことないが、まあ竜人なんだしどこかに竜の祖先がいてもおかしくないのだろうか。
『たぶんの。で、そっちの子がおぬしの友達じゃろ。なら何でもかなえてやろう』
「なんでも?」
『すまん、儂ができる程度のことで』
訂正されてしまった。残念。
「んー、万桜ちゃんなにかある?」
「え、杏珠ちゃん自分のなんだから自分で決めていいと思うよ?」
「あんまり思いつかなくて。万桜ちゃんは何かある?」
「んー、じゃあこの際だし。竜神様。今瑞穂の国は戦乱に覆われております。その戦乱の世を止めることはできないでしょうか」
「なにそれかっこいい!?」
万桜ちゃんの言う願いはとてもかっこよかった。
夕飯を肉鍋にするか、海鮮鍋にするかどっちをお願いしようと悩み、両方といったら怒られるかな、と悩んでいた自分がアホの子に思えてくる。
「願い事…… そうだ、ボクは万桜ちゃんと一緒にずっといたいかな。あと村の外にも出てみたい!」
とっさに思い浮かんだことを叫ぶ。
なんか二つお願いしたみたいだけど、可愛いボクに免じて許してほしい。
ボクがそんなことを言うと、万桜ちゃんが真っ赤になってしまった。
「あ、杏珠ちゃん、積極的だね……」
「だって万桜ちゃんのこと大好きだからね!」
「わ、私も杏珠ちゃんのこと好きだよ」
「わーい」
『若いのはいいのぉ』
竜神様の前で仲良しアピールをしてしまい、少し恥ずかしくなったが、まあいいとギューッと万桜ちゃんにくっつく。
竜神様は楽しそうに笑った。
『わしが俗世にかかわるのはご法度じゃが…… そうじゃの。年寄りから少しだけ助言じゃ』
「なになに?」
『万桜とやら。戦国の世は人により終わらせねばならぬ。主が生を尽くすなら、その望み、かなうじゃろう』
「え、なんかすごそう」
戦国の世を終わらせるってすごくないだろうか。
ボクは村の外の状況は全く分からないが、戦の続く世の中を平和にするなんて、英雄か何かのようだ。
万桜ちゃんは、そういわれて愁傷に言葉に耳を傾けている。
『その時、一番大事なものを手放すなよ。手放したら主の命はなくなるじゃろう』
「大事なもの?」
『それは主が一番わかっておるはずじゃ』
大事なものを手放すな、だって。竜神様の言い回しは持って回った感じで、わかりにくい気がする。
少なくともボクにはよくわからなったが、万桜ちゃんはまじめな顔しているし、何か分かったのかもしれない。
『さて、子供たちよ、そろそろ帰るのじゃ。ここは冷える。風邪をひいてしまうぞ』
「帰るってどうやって?」
周り中岩だらけだ。出口は見つからないのだけれども……
『ほれ、送ってやるから目をつぶるのじゃ』
「んっ」
『子供たちの行く末に栄光あれ』
そんな声が響くと、ボクたちは洞窟の前に戻っていた。
万桜ちゃんも隣で驚いた顔をしている。
ボクたちの洞窟探検は、これで終わるのだった。
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