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秋ー彼女が食って騒ぐ話

お姫の独り言

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ボクは、アンジェリーナ=ドラクリア。ドラクリア帝国第一皇女にして、竜神教上級司祭である。
なんて言うと偉そうだが、正直生まれがいいだけのお嬢さんである。

ボクには前世の記憶があった、異なる世界で男性として生きてきた記憶だ。記憶持ちなんてそこまで珍しくないが、異世界の記憶があるボクのような存在は珍しかったようだ。
そんなめんどくさいボクでも、家族は愛情を注いで育ててくれた。結構生意気だったしめんどくさいやつだったと思うが、両親も兄も私を愛してくれていたのはよくわかった。

別に自分が不幸だなんて言うつもりはない。というか非常に幸運な人間である。それでも、お姫様としての生活は結構つらかった。
なんせ、女性として生きている時間より、男性の記憶のほうが数倍長いのだ。頑張れば女性らしい所作もできるが、それを身に染み込ませることは結局できなかった。
男性からの視線も苦手だった。嘗め回すように性的な目線を向けられると正直気持ち悪い。男の感性に引きずられているので余計だった。かといって、女性たちの机の下で足を蹴り合うような会話も苦手だった。

そんなつらい生活の中でも、どうにか「ボク自身」の居場所を作りたくてあがいた。前世の記憶を使って、やりたい放題やれるだけやったつもりである。お祭りをでっちあげたり、法律を整備したり、商会を作ったり、農政改革までやったし、大学に所属して研究なんかもした。すさまじく忙しかったが、本当にやりたい放題だったと思う。



人のためになにかする、そんなことで満足感を得られるかと思いやってきたのだが、やってきたことが間違いだと悟ったのは何の時だったか。
宰相が皇太子を兄じゃなくボクにするべきだと言った時だと思う。
所詮ボクがやってきたことは、権力と知識に任せたやりたい放題でしかない。兄はその間必死に皇帝としての帝王学を学び、着実に皇帝たる父と国民を助け、私のしりぬぐいまでしてくれていた。

優秀なのは兄だ。ボクは確信している。でも目立ったのは、残念ながらボクだった。
兄が寂しそうに笑いながら「お前が皇帝になってもいいんじゃないか」といった時、ボクは家族まで傷つけたという事実に耐えきれず、国から逃げ出した。



ひとまず帝国から一番遠いところに行こうと思った。
王国最北端、白雪の町。雪だらけの町にきたボクは運命に出会った。
冒険者の宿の受付のエルフの子だった。名前はエリスちゃん。一目見た時から一目惚れだった。

その日から毎日、ボクのへたくそなアプローチが始まった。女の子の口説き方なんてまるで分らなかった。軽口言っては怒られ、気が利かないと怒られ、なんかしょっちゅう怒られていた気がする。でも、そうやって起こってくれるのがうれしくて、彼女がどんどん好きにないっていった。




婚約してというのはボクの本心だ。ただ、受け入れてもらえるとは正直思っていなかった。二人で楽しく遊んでいるだけでもよかったのだ。でも、「いいよ。」といってくれたエリスちゃんの顔がかわいくて、ああ、もう離れられないな、とそんな風にボクは思った。
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