昭和90年代のストリップ劇場は、2000年代アニソンかかりまくり。

坪庭 芝特訓

文字の大きさ
62 / 139
第三回公演

2、ぼくのなまえは嵐士ちゃん

しおりを挟む
「よし。よっし、チャラい」
 
 叔父さんのお見舞い当日。
 自宅の洗面所の鏡に映る自分を、蘭ちゃんこと嵐士がびしっと両手で指さす。
 鏡に映る嵐士はいつもと違い、金色が強い茶髪のやや長めのショートカットだ。
 元は品の良すぎる女性用ウィッグ。それを自分でカットし、日々の使用感、大量に吸った整髪料、定期的なトリートメントによって今は自然な風合いに仕上がっている。
 今日はヘアスプレーとワックスで流すように、けれど要所はカチッとチャラくセットしていた。
 唇は血色が良すぎるのでコンシーラーで色を薄くしている。
 同色の眉は濃い目に下側に、目との距離が短くなるように描き、睨み付けるようにぎゅっと目を細めるとトンガったチャラ男が出来る。
 耳の縁には威嚇の四連ピアス。
 身体全体の線は細いが、それなりにボリュームのある胸を潰したせいで胸板は厚く、細マッチョに見えなくもない。
 普段の嵐士、蘭はあっけらかんとした性格をそのまま表したようにおでこ全開で、それとは対照的に半月型の目は妙な妖艶さを出していた。
 それらが今はウィッグとM字バングで隠されている。
 あるいは男になっても尚ギリギリまで消した艶が目元から滲み出ているが、根拠の無い自信とふてぶてしさも一緒に出ている。
 それでも愛嬌のある顔に見えるのは、生まれつきのゆるい猫口が相殺してくれているからだ。

「18歳以上に、見えるかな?」

 男装をすると実年齢より下に見られるため、顔を様々な角度から見てみる。

「まあいっか」

 身分証があるのでとりあえず年齢は問題ない。
 元の性別から見た目がかなり離れているが、それも特に問題ない。
 ヘアセット用具一式をしまい、そろそろ行くかと洗面所を出ると、

「蘭、あんたその格好で行くの?」
「うん。なんで?ダメ?」
「ダメじゃないけど…、おじさんびっくりするわよ」
「そうかなぁ」

 たまにしか会わない分、まあ今時の子だからと流してしまうのではと嵐士は考えていたのだが。

「でももう時間ないし…。あーっ!そうだ!食事代と電車賃っ!あとなんか叔父さんに頼まれたら買うかもしれないからっ!」
「はいはい」

 思い出したとばかりにそう言い、母親からたんまり金をせしめて嵐士は家を出た。



「なるほど。これで全部?」

 電車を乗り継ぎ、叔父の入院している病院にやってきた嵐士は、いるものと持ってきてほしいものリストを手に叔父に訊く。

「一応それだけかな」

 一見すると元気そうな、つるりとした顔をなでながら叔父は答えた。一晩以上かけてリストアップしたので漏れはないはずだと。

「家行ってみた後でも電話してくれたら対応出来るけど。お菓子とか食べて平気なの?」

 大部屋病室にいる叔父は昔に比べ、歳は取っているもののすこぶる元気そうだったが、リストの中にある買ってきてほしいものを見て嵐士が訊く。

「うん。特に問題ないって」
「へえ…」

 やはり金を搾り取るための軟禁じゃないのかと思ったが言わないでおいた。

「じゃあ、とりあえず行ってくるかな」

 そして時間を確認しながら立ち上がる。話したりは用事が済んでからでいい。
 ひとまず病室を出ようとすると、

「あら、ご親戚の方?」

 検温の時間だとやってきた看護師が嵐士を見る。

「姪っ子です」
「ああ、姪っ子さん。…え?」

 が、叔父の言葉に、え?姪っ子?と二度見する。
 見るからにチャラい男の子だが。

「夜からパーティーあるんで、それでちょっと」

 姪っ子の言葉に、よくわからないがああそうなんだと看護師が納得し、

「じゃあ、叔父さん行ってくるね」

 明るい場所だと同性にはバレちゃうのかなと肝に命じ、嵐士は今度こそ病室を出た。


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...