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場内に戻ると、ちょうど次の踊り子さんのステージが始まるところだった。
本舞台には黒の丸い皮張りの回転椅子が置かれている。
BGMは少しポップな洋楽。
そこへ、首に聴診器をかけ、白衣を着て、髪を素っ気なく後ろで一本でまとめた踊り子さんが現れた。踊り子さんが登場したことで、回転椅子は病院の診察室で医師が問診する時に座るものだとわかった。
聞けば曲の中にもHey Doctorなどという歌詞が挟み込まれている。
手にしたペンで目には見えない患者を指し示しながら問診する芝居。
足を組み替え、めんどくさそうにペン先で頭を掻く。傲慢で、高飛車で、高学歴で。いかにも患者には親身になってくれなさそうなドクターだ。
小芝居レベルの一人寸劇が終わると、ナースコールが聴こえてきた。
一度舞台袖に戻り、今度はミニ丈のナース服とナースキャップ、ガーターベルト姿で踊り子さんが登場する。着てるものは生地が安っぽく、いかにもコスプレ衣装臭い。
ムーディな曲に合わせて腰をくねらせながら、ナース服の裾をずり上げていく。
回転椅子に座り、空中でガーターベルトを穿いた足をM字で開くと、股間には何も付けていなかった。
M字開脚をしたまま、左手の指を生殖器に差し入れ、右手は小さな膨らみを触る。
「うわ」
ややリアルな見せ方に遥心の喉が鳴る。隣にいる恋人に興奮を悟られまいと口許を手で覆うが、呼吸は不自然で体温もあがる。
不安定な場所での自慰行為に、心臓が高鳴った。
ほどなくショーが終わり、場内が明るくなると、
「うーん」
詩帆が短い腕で腕組みをして唸る。あまり良くなかったらしい。
そしてどうやら今の人が詩帆の目当ての踊り子さんだったらしい。
「むかーし好きだったAV女優さんでさあ」
「へえ」
「あ、席空いた」
「ほんとだ」
ようやく空いた席に、広告入りベンチに煎餅座布団を置いただけのものに二人が座る。舞台前方に座る客が、後方の空席に置いていた飲み物やプレゼントなどの雑多な荷物を手元に回収したからだ。
場内に貼られた《他のお客様のご迷惑になりますので、場所取り目的以外で荷物を席に置くのはご遠慮ください》という貼り紙はどうやら効力をなしてないようだ。
「実物見たらなんかテンションあがるかなーと思ったけど、そうでもないね」
ため息混じりにそう詩帆が言っていると、撮影ショーになり、紅いヒールにハイウエストの赤い水玉ワンピース、頭には黒いプラスチック製のネズミカチューシャという格好で踊り子さんが出てきた。
相変わらずの媚びた声で客に応じている。
遥心が香盤表を見る。遥心自身セクシー女優に詳しいわけではないが、名前を見てもピンと来ない。
「構成はやる気ないし、ダンスもいまいちだし」
ぼんやりとした表情で詩帆が踊り子さんを見つめる。
踊り子さんは写真を撮ったお客さんに両手で握手をしていた。
「あたしの大好きな《いろんなところでオナぬンしようよ》の 廃園遊園地編 ルッコステふぁみりーぱあくの回に出てた女優さんでさあ」
詩帆が廃遊園地という舞台設定が好きだったのか、ルッコステふぁみりーぱあくが好きなのか、内容が好きだったのか遥心にはわからない。
ただ、タイトルをさらりと言える辺り相当のお気に入りの一本だったようだ。あるいはオタク特有の、好きなものならどんなものでも記憶出来るという能力ゆえか。
「だいぶいじったなあ」
踊り子さんを見ながら、詩帆が自分の顔をぺたぺたと触る。ビジュアルを売りにした人が、転職時に少しばかり顔や身体にメスを入れるのは珍しいことではない。
映像から生の舞台、しかも客席からあれだけ近いとなれば尚のことだろう。だが間違った美意識で本来の良さを、親から貰った良さを消してしまうこともある。
「昔はもっちゃりエロだったのに」
遥心が改めて舞台端に座っている踊り子さんを見る。もっちゃり感は残っているが、顔のパーツが不自然に鋭角的すぎる。
「今度貸してあげるね、DVD」
「うん。…えっ?」
気付かないうちに遥心は彼女からお気に入りのAVを借りる約束を交わした。
撮影ショーが終わり、オープンショーとなる。
頭の悪そうな古いキッズ向けアニメソングで遥心と詩帆には少々吐き気がした。
そして、次か、と遥心が呟く。
ようやくお目当ての踊り子さんの出番だった。
本舞台には黒の丸い皮張りの回転椅子が置かれている。
BGMは少しポップな洋楽。
そこへ、首に聴診器をかけ、白衣を着て、髪を素っ気なく後ろで一本でまとめた踊り子さんが現れた。踊り子さんが登場したことで、回転椅子は病院の診察室で医師が問診する時に座るものだとわかった。
聞けば曲の中にもHey Doctorなどという歌詞が挟み込まれている。
手にしたペンで目には見えない患者を指し示しながら問診する芝居。
足を組み替え、めんどくさそうにペン先で頭を掻く。傲慢で、高飛車で、高学歴で。いかにも患者には親身になってくれなさそうなドクターだ。
小芝居レベルの一人寸劇が終わると、ナースコールが聴こえてきた。
一度舞台袖に戻り、今度はミニ丈のナース服とナースキャップ、ガーターベルト姿で踊り子さんが登場する。着てるものは生地が安っぽく、いかにもコスプレ衣装臭い。
ムーディな曲に合わせて腰をくねらせながら、ナース服の裾をずり上げていく。
回転椅子に座り、空中でガーターベルトを穿いた足をM字で開くと、股間には何も付けていなかった。
M字開脚をしたまま、左手の指を生殖器に差し入れ、右手は小さな膨らみを触る。
「うわ」
ややリアルな見せ方に遥心の喉が鳴る。隣にいる恋人に興奮を悟られまいと口許を手で覆うが、呼吸は不自然で体温もあがる。
不安定な場所での自慰行為に、心臓が高鳴った。
ほどなくショーが終わり、場内が明るくなると、
「うーん」
詩帆が短い腕で腕組みをして唸る。あまり良くなかったらしい。
そしてどうやら今の人が詩帆の目当ての踊り子さんだったらしい。
「むかーし好きだったAV女優さんでさあ」
「へえ」
「あ、席空いた」
「ほんとだ」
ようやく空いた席に、広告入りベンチに煎餅座布団を置いただけのものに二人が座る。舞台前方に座る客が、後方の空席に置いていた飲み物やプレゼントなどの雑多な荷物を手元に回収したからだ。
場内に貼られた《他のお客様のご迷惑になりますので、場所取り目的以外で荷物を席に置くのはご遠慮ください》という貼り紙はどうやら効力をなしてないようだ。
「実物見たらなんかテンションあがるかなーと思ったけど、そうでもないね」
ため息混じりにそう詩帆が言っていると、撮影ショーになり、紅いヒールにハイウエストの赤い水玉ワンピース、頭には黒いプラスチック製のネズミカチューシャという格好で踊り子さんが出てきた。
相変わらずの媚びた声で客に応じている。
遥心が香盤表を見る。遥心自身セクシー女優に詳しいわけではないが、名前を見てもピンと来ない。
「構成はやる気ないし、ダンスもいまいちだし」
ぼんやりとした表情で詩帆が踊り子さんを見つめる。
踊り子さんは写真を撮ったお客さんに両手で握手をしていた。
「あたしの大好きな《いろんなところでオナぬンしようよ》の 廃園遊園地編 ルッコステふぁみりーぱあくの回に出てた女優さんでさあ」
詩帆が廃遊園地という舞台設定が好きだったのか、ルッコステふぁみりーぱあくが好きなのか、内容が好きだったのか遥心にはわからない。
ただ、タイトルをさらりと言える辺り相当のお気に入りの一本だったようだ。あるいはオタク特有の、好きなものならどんなものでも記憶出来るという能力ゆえか。
「だいぶいじったなあ」
踊り子さんを見ながら、詩帆が自分の顔をぺたぺたと触る。ビジュアルを売りにした人が、転職時に少しばかり顔や身体にメスを入れるのは珍しいことではない。
映像から生の舞台、しかも客席からあれだけ近いとなれば尚のことだろう。だが間違った美意識で本来の良さを、親から貰った良さを消してしまうこともある。
「昔はもっちゃりエロだったのに」
遥心が改めて舞台端に座っている踊り子さんを見る。もっちゃり感は残っているが、顔のパーツが不自然に鋭角的すぎる。
「今度貸してあげるね、DVD」
「うん。…えっ?」
気付かないうちに遥心は彼女からお気に入りのAVを借りる約束を交わした。
撮影ショーが終わり、オープンショーとなる。
頭の悪そうな古いキッズ向けアニメソングで遥心と詩帆には少々吐き気がした。
そして、次か、と遥心が呟く。
ようやくお目当ての踊り子さんの出番だった。
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