昭和90年代のストリップ劇場は、2000年代アニソンかかりまくり。

坪庭 芝特訓

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第三回公演

13、差し入れは お気持ちだけで 結構です (5、7、5)

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 フワフワしたままステージが終わり、撮影ショーが始まった。

 「…あ、そうか。これ」

 嵐士が暇つぶしにアニメショップでの収穫物を見ていると、ちょうど貰ってきたフリーペーパーの中に、女帝の特集記事が載ったものがあった。
 ニ年ぶりにアルバムを出すため、巻頭特集でロングインタビューが掲載されていた。
 表紙も相変わらずな年齢不詳の麗しいお姿で飾っている。

「……よしっ」

 撮影客ににこやかに対応する踊り子さんをちらりと見ると、それを持って嵐士は撮影ショーに初参加してみた。あくまで暇つぶしに、記念に。
 これは差し入れではないと言い聞かせて。
 まだ今日一番よかった踊り子とは言えない。
 彼女の好きそうなものをたまたま持っていたからあげる。ただそれだけだ。

「衣装の方よろしいですかー。脱いじゃいますよー」
「あっ」

 しかし自分への言い訳に気をとられているうちに、踊り子さんは衣装を脱いでしまった。かといって今更衣装で、と手を挙げる勇気もない。
 仕方なく衣装無し、全裸撮影の列に並ぶと、

「わっ、おはようございますぅ」

 一見さん風の若い客に踊り子さんがテンション高めに対応してくれる。
 ステージでのかっこよさとは裏腹に、ぱあっと華が咲いたような明るさのある踊り子さんだった。
 
「あのこれ、ここ来る前にえじ星雲で貰ってきたやつなんですけど、良かったら」

 そう言ってフリーペーパーを差し出すと、

「わあ!えーっ!?ありがとう!わー!えー?すごいねー!え、知ってて?」
「いえ、偶然。来る前貰ってきたら表紙で、で、あの、ステージ見たら曲使われてたんで」

 否定するようにパタパタと体の前で嵐士が両手を振る。
 表紙が女帝なのを見て、踊り子さんは自分の出し物に女帝の曲を使っているからわざわざ持ってきてくれたのかと訊くと、嵐士はたまたま、偶然だと言う。
 だがステージで使っていたのが女帝の曲だと目の前の若いお客さんは、嵐士は知っていた。
 全てを言わずとも通じ合えることに踊り子さんが嬉しそうにし、

「えじ星雲なんてここらへんにあった?」

 更に踊り子さんが嵐士の言ったアニメショップの名前に反応する。
 えじ星雲はアニメ、ゲーム、声優グッズを扱うショップだが、

「最近、エキナカに出来て」

 嵐士が利用した駅名をあげる。詳しい店舗の場所も。

「へえーっ!あんなとこに出来たんだーっ!あたし結構あそこ通るのに、いつも下ばっか見て歩いてるからわかんなかったよー。へえーっ!」

 踊り子さんの自虐ネタに、近くにいた常連客が笑う。フリーペーパーを渡すと、踊り子さんはその場でじっくり読み始めてしまった。

「深亜華(みあか)ちゃん、楽屋で楽屋で」

 そう常連客にツッこまれ、

「あっ、そっか」

 いっけね☆と自分で頭を小突きながらぺろっと舌を出してみせる。

「ありがとう。後で読むね」

 踊り子さんの横に置かれた差し入れの山を見ると、高そうなお菓子やお花などが並んでいた。対してこちらは無料のフリーペーパーだ。嵐士は少し申し訳ないような気持ちになり、同時にお金をかけずに喜ばれるプレゼントが贈れたことを誇らしく思った。

「ポーズどうします?こんなんとか、こんなんとかありますけど」

 M字開脚やL字開脚、おしりを向けた四つん這いになって後ろの排泄穴を見せるポーズをしてみせるが、

「2ショットってお願いできます?」
 
 せっかくなので一緒に写っている記念写真風にしたかった。

「はい、もちろん」

 踊り子さんが承諾し、

「お願いできますか?」

 二人のやりとりを微笑ましそうにニコニコ見守っていた常連客にカメラを渡す。
 嵐士が舞台端に、プールサイドにでも上がるようにひょいと腰掛けると、踊り子さんが後ろから抱きしめてきた。むきだしの柔らかな胸が背中に当たり、少し鼓動が高鳴る。
 感触にではなくバレないかという緊張だ。
 それを悟られまいと口許で裏ピースをすると、踊り子さんが、あれ?と何かに気付いた。
 抱きついた若い男の子の骨格、匂い、妙な胸板の厚さ、柔らかさに。そして違和感のある髪質に。
 一度身体を離すと、嵐士の顔を真正面からまじまじ見つめ、あれ?女の子?と、小さな声で訊いてきた。
 営業スマイルと営業ボイスではない、きょとんとした顔と素のトーンの声が可愛い。嵐士が同じく小さな声で、はい、と肯定すると、

「なんだぁ!えっ?なんで?」
「なんでって、えーと…、パーティーの帰りで」
「パーティー!?えー?そうなんだーっ。すごいねーっ、全っ然わかんなかったあ!」

 なぜ男装してるのか訊かれ、パーティー帰りと答えると踊り子さんは納得した。
 なぜかこの言い訳はどこでも通用した。
 チャラ男君ではなく女の子だと知るや、踊り子さんは両手を取り、へえ~すごいね~などと言いながらまじまじ見つめたりしてくる。
 そして最後は嬉しそうに正面から抱きついてきた。

「のおぉーっ」

 びっくりして嵐士が変な声を上げる。
 更に踊り子さんは柔らかな頬に唇を押し付けてきて、

「おおーあっ」

 そのまま手でカメラを構えた常連客に、撮れ撮れ、と煽る。
 変な声を出した顔のまま、嵐士はシャッターを切られた。

「あああ、ありがとうございました」

 戸惑いつつも、ま、まあ面白い記念写真が撮れたからいいかと頭を下げる。

「ううん、またきてね。あっ、サインは?」
「あー、欲しい、です」
「へへへ、よしよし」

 踊り子さんはくしゃくしゃと嵐士の頭を撫で回すが、ウイッグがズレる!とビクっとするのに気づき、ああ、ゴメンゴメンと笑いながら謝る。
 その後はもう一度両手でしっかりと握手してくれた。
 全てを終え、嵐士が常連さんに会釈すると、温度のない嫉妬の目でこちらを見ていた。
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