昭和90年代のストリップ劇場は、2000年代アニソンかかりまくり。

坪庭 芝特訓

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昭和90年代のストリップ劇場は2010年代アニソンかかりまくり

15、キミにはもっと早く会いたかったのだった

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 次に出てきた踊り子さんは実力派だった。
 自然な小麦色で小柄な体躯と、身体を鍛え抜いたゆえらしいぷりっとした小さな胸。
 歳は恐らく30を過ぎたくらいだろうが、甘くない顔立ちと歳を重ねた上での実力をきちんと搭載していた。
 有名なハリウッド映画のBGMを使った、お芝居仕立てとアクロバティックな動きが目を引く踊り子さんだった。
 体幹が素晴らしく、小さなステージでひやりとする動きも難なくこなす。
 ステージとの距離が近い分迫力があった。
 曲は細かく編集され、繋がれ、こだわりのあるメリハリ感が心地良かった。
 舞台袖に引っ込んでの早替えも間を置かずほんの一瞬で、すぐ出てきてくれる。
 芝居仕立てだけあって小道具も積極的に使う。
 それも特注のようなおこだわりの一品だった。

 客を退屈させない、ある種計算され尽くしたショーだった。
 面白い、と詩帆は思った。
 生まれ持った身体と若さでもって魅了する踊り子さんもいれば、こうした積み重ねた技量で魅了する踊り子さんもいる。
 脂の乗った、という表現はこういう人のことを言うのだろうと詩帆が思っていると、

「いいデスネ」
「ね」

 踊り子さんから目を離したくなくて、シャオちゃんと詩帆がお互い短い言葉で感想を言い合う。
 なのにだ。
 え、どっこいしょ、といった体で前方に座った太ったおじいさん客が席から立ち上がった。
 そのままのたのたと、おそらくロビーに向かう。
 もう見たショーだからか、あるいは単純につまらないと思ったのか。
 それはわからないが見なくとも良いと判断されたのは事実だ。
 その客に、踊り子さんがハッと視線を送る。
 悔しいような、情けないような顔で。
 それは本当に一瞬だった。
 すぐにステージに意識を集中させる。
 しかし客一人を繋ぎ止められなかった踊り子の執念を、詩帆はしっかりとその目にした。


 ベッドショーでは肉体美が堪能出来るショーだった。
 しなやかな小麦色の肌を白いライトが照らし、その肌の色を薄める。
 綺麗な縦長のおへそにあるピアスがライトの光を反射する。
 ささやかかつプリンとした胸にやはり惹かれた。

 振り返ってみれば、今回は結構いい当たりの週に詩帆は思えた。
 特に今見ている踊り子さんは、オキニとして登録してもいいかもというくらいだった。


 程無くして撮影ショーが始まった。
 撮影客は多かった。あれだけのものを見せてくれたのだ、やはり人気の踊り子さんなのだろうと詩帆が思っていると、

「カグラちゃん、今週までなんだって?」
「おー。そだよー。今週引退見納め見納めー」

 客との会話で踊り子さんが聞き捨てならないことを発した。
 えっ!?と詩帆とシャオちゃんが舞台端に座っている踊り子さんを見る。

「辞めてどうすんだい」
「田舎帰るよー。おかあちゃんが美容院やってっからさあ、そこ継ぐの」
「あれ?免許あるの?」
「うん。元々美容師になるために東京出てきたから。そんでなぜか踊り子になっちゃったんだけどね」
「さびしいねえ」
「んなこと言うなよー。っていうかだったらもっと見に来いよー」
 
 そんなことを言いながら、踊り子さんが笑顔でお客さんの肩辺りをグーで殴る素振りをしてみせる。
 辞めるということと今後について、踊り子さんはあっけらかんと客と話している。
 他の客はすでに周知の事実のようだ。
 知らないのは、当然詩帆達だけで。
 それに詩帆はなぜかドキドキしてきた。
 今さっき推せると思った踊り子さんが今週引退だなんて、何故と。
 しかし何故も何もない。

 辞めるには早くないか、と思うが誰にだって事情がある。
 大丈夫そうに見えてもう踊るのはキツイのかもしれない。
 脂の乗った一番いい時期にやめようということなのかもしれない。
 田舎のおかあちゃんが店を切り盛りするのは大変だから、なのかもしれない。
 いい加減帰ってきておくれと言われてるのかもしれない。
 それはわからない。
 が、あまりにも運命というものは残酷だった。
 先程の悔しそうな顔も、最後なのに客を惹きつけられなかったことへの悔しさなのか。

「……ツライ」
「ね」

 同じことを思ってたのだろう、シャオちゃんの言葉に詩帆が同意する。
 スタンプラリー巡りでもしかしたらもう一回くらいあの踊り子さんのショーが見れたりするかも、と思ったのに。
 そんなステキな偶然はなかった。
 しかし誰も悪くない。
 悪いとしたら、早く彼女の魅力に気づかなかった自分達と、時代くらいだ。


 トリは若く、どうやら現役AV女優の踊り子さんのようだった。
 現代っ子らしいスタイル抜群の身体。
 振り付けの中で、愛してるという歌詞に合わせて空中で柔らかく人差し指でハートを描き、それを撃ち抜くという振り付けは可愛かった。
 だが印象に残っていたのはそれぐらいだった。
 その振り付けだって自分で考えたのか怪しいもんだ。
 選曲だって。
 一つ前の辞めちゃう踊り子さんは絶対自分で全部考えたはずだ。
 そんな苛立ちを、詩帆はグツグツと抱えていた。
 若さと客引きだけが取り柄のような踊り子さんで、だったら一つ前の踊り子さんがトリでも良かったのではと詩帆は思った。


 その回の公演を終えるとフィナーレが始まった。
 踊り子さんがリズミカルに手拍子し、ステージを練り歩く。
 見ると着ているのは皆オープンショーの時の衣装だった。
 いわゆる局部が見やすい衣装だ。
 その姿でそれぞれが等間隔で花道や本舞台、中央舞台立つと、踊り子さん達がお尻を客に向けたまま身体を倒しお尻をフリフリする。
 当然局部が丸見えになる。
 辞めてしまう踊り子さんも当然局部をフリフリするが、詩帆はそれを見たくなかった。
 踊り子さんもなんだか渋い顔をしている、ような気がした。
 今週で最後なのに。
 だがこの道を選んだのは彼女だった
 ただ踊るだけではなく、こういったこともしなくてはならない道を。
 そしてそれを辞めるのも彼女だ。
 位置を変え、スカートの前をまくると、またリズミカルに局部を晒す。
 そんなことをしなくても貴女は立派な踊り子なのにと思ったが、もうそんな声は届かないし意味がなかった。

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