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勇者覚醒
誤認
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「よし、そろそろか.....」
「そろそろ?」
「ああ。来るぞ!」
「えっ!?」
さっ。その鈍い音とともにそれは真横を通過した。コンマ数秒.....それほどの一瞬、僕のこめかみすれすれに投げられたものは、音速でこめかみを掠め、後ろのビルの壁を抉った。
「こ.....殺す気ですか!?」
「いや、私ではない」
「は、は!?」
エルザさんが投げたのを確かに見た。だが、彼女は違うと言い張る。違うと言いきっている。だが、証言と行動がどうも一致しない.....
(頼む、これを乗り越えれば、きっと.....お前は.....)
「エルザさん、手を開いてください」
「え.....?」
「いいから!」
半ば無理矢理になってはしまったが、彼女の手のひらを見る。あれだけの速度のものを投擲したのであれば、ある程度握る力が入り、実際にものを持っていたのかわかるはずだった。
「.....おかしい」
「な、無実だろ?」
「無実.....ですね。認めたくはないですが.....」
だが、無実であるはずの彼女は、少し焦りを見せているのか、さっき手のひらを見た時、投げた痕跡は無かったが、水分が明らかに体外へ出ていた。
「.....何故無実を証明されたのに焦ってるんですか?」
「こ、これは.....」
「伊勢谷さん!!」
「は、晴ちゃん?」
「これを!!!見てください!!」
そう言って晴ちゃんが持ち出したのは、先程まで見ていた投影機だった。
(な、晴.....計画にそれは入っていないぞ!?)
(ヒントを与えるだけです、エルザさん.....!)
そして見せられたのは協会構成員の名前一覧、名簿だ。そして何よりそこにはーー各々の戦闘スタイルや、才能が明記されていた。
「.....ああ、そういうことか.....晴ちゃん、何処へ?」
「え? 私ならここにーー」
「違う!! わざわざ名簿を持ってきたのはいいけど.....それじゃあなんのために殺そうとしたのか.....分からないんですよ、伊賀島半蔵さん.....!」
そう、名簿にハッキリと彼の才能が記されていた。彼の才能は、音域の広さが常軌を逸脱していること。それに加えーー特殊な訓練により備わった変装術。
彼は、忍びの里の末裔として生まれ、その才能を開花させたーーと、記されている。
「.....殺しかけることにより才能の開花を促したのでござるが.....」
「うむ。だから無闇に計画外のことをするなと言ったろ」
「申し訳ない.....エルザ殿」
「えっと.....彼は半蔵さんでいいんですよね?」
とりあえず、1度落ち着き、状況を整理させる。だが、僕は自分自身でまだ掌握しきれていない。この才能をーー
「うむ。彼こそが忍びの末裔。伊賀島半蔵だ」
「先程の御無礼、心から謝罪するでござる.....」
「あ、い、いえ.....」
「とはいえ.....その冷静さ、まだまだコントロールは効かないが平気みたいだな」
「伊勢谷殿。貴殿の才能についてはまた修行をするはずでござる。今は、未熟なその才能を貸してほしい」
忍びからのーー依頼だった。
「そろそろ?」
「ああ。来るぞ!」
「えっ!?」
さっ。その鈍い音とともにそれは真横を通過した。コンマ数秒.....それほどの一瞬、僕のこめかみすれすれに投げられたものは、音速でこめかみを掠め、後ろのビルの壁を抉った。
「こ.....殺す気ですか!?」
「いや、私ではない」
「は、は!?」
エルザさんが投げたのを確かに見た。だが、彼女は違うと言い張る。違うと言いきっている。だが、証言と行動がどうも一致しない.....
(頼む、これを乗り越えれば、きっと.....お前は.....)
「エルザさん、手を開いてください」
「え.....?」
「いいから!」
半ば無理矢理になってはしまったが、彼女の手のひらを見る。あれだけの速度のものを投擲したのであれば、ある程度握る力が入り、実際にものを持っていたのかわかるはずだった。
「.....おかしい」
「な、無実だろ?」
「無実.....ですね。認めたくはないですが.....」
だが、無実であるはずの彼女は、少し焦りを見せているのか、さっき手のひらを見た時、投げた痕跡は無かったが、水分が明らかに体外へ出ていた。
「.....何故無実を証明されたのに焦ってるんですか?」
「こ、これは.....」
「伊勢谷さん!!」
「は、晴ちゃん?」
「これを!!!見てください!!」
そう言って晴ちゃんが持ち出したのは、先程まで見ていた投影機だった。
(な、晴.....計画にそれは入っていないぞ!?)
(ヒントを与えるだけです、エルザさん.....!)
そして見せられたのは協会構成員の名前一覧、名簿だ。そして何よりそこにはーー各々の戦闘スタイルや、才能が明記されていた。
「.....ああ、そういうことか.....晴ちゃん、何処へ?」
「え? 私ならここにーー」
「違う!! わざわざ名簿を持ってきたのはいいけど.....それじゃあなんのために殺そうとしたのか.....分からないんですよ、伊賀島半蔵さん.....!」
そう、名簿にハッキリと彼の才能が記されていた。彼の才能は、音域の広さが常軌を逸脱していること。それに加えーー特殊な訓練により備わった変装術。
彼は、忍びの里の末裔として生まれ、その才能を開花させたーーと、記されている。
「.....殺しかけることにより才能の開花を促したのでござるが.....」
「うむ。だから無闇に計画外のことをするなと言ったろ」
「申し訳ない.....エルザ殿」
「えっと.....彼は半蔵さんでいいんですよね?」
とりあえず、1度落ち着き、状況を整理させる。だが、僕は自分自身でまだ掌握しきれていない。この才能をーー
「うむ。彼こそが忍びの末裔。伊賀島半蔵だ」
「先程の御無礼、心から謝罪するでござる.....」
「あ、い、いえ.....」
「とはいえ.....その冷静さ、まだまだコントロールは効かないが平気みたいだな」
「伊勢谷殿。貴殿の才能についてはまた修行をするはずでござる。今は、未熟なその才能を貸してほしい」
忍びからのーー依頼だった。
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