引きこもりの僕がある日突然勇者になった理由

ジャンマル

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フランス編(現在の遺産編)

ある日突然番外編が投稿された理由。ーフランス編(後編)-

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――
 有毒ガス……を吸ったはず……だが―――
「めざめたか」
 そう言って、声をかけたのは――アイエエエエエ! ニンジャ!? ニンジャナンデエエエエ!?
「忍者ではないでござる。ここに忍者はいない。いいね?」
 アッハイ。その忍者は、ザ・日本の忍者。そんなアトモスフィアを醸し出していた。
「それはそうと。間に合ってよかった。正直、毒ガスで助からないと思っていた」
 ……そうだ、毒ガスで死ぬって直後に――この忍者が助けてくれたんだ。
 でも、この忍者。まさか味方――? なのか?
 それにしても――この男。あからさまに忍者なのである。忍びなれどしのばない。それが最近の忍者(ニンジャ、忍)の流儀だという。……それ、もう忍者じゃなくていいんじゃないかなぁ……
 それより、疑問になるのがやはり、何故忍者がフランスに居るか。だ。
「拙者、実はキヤマ・ハルト=サンに助けられた忍びでござってな。いつしか、美雨さんの護衛を頼まれていたのでござる。まあ、顔を出したのは初めでござるが」
 ずっと……護衛――? じゃあ、まさか。あんな姿やこんな姿を――
「んなわけねえだろ。常考」
 お、ん……? まさか、忍者でネラー……? そんな忍者いるわけないな。
「……恥ずかしながら、忍者の指名を忘れてスレにこもっていたことについては謝るでござる」
 アイエエエエ! ネラー!? ネラー忍者ナンデエエエエ!?
 この忍者、本当に忍者なのだろうか。
 っと、そろそろいくでござるよ。そういうと、僕の手を取って、彼は走り出した。速い。とても速い。流石は忍者。忍どころか暴れながら走って行った。

*    *

 ここで、うちの戦力を確認しよう。

―男・所長―
伊勢谷

―女・戦闘員―
美雨さん

―女・情報員―
晴ちゃん

NEW ―男・ニンジャ―
       ???

 あ、名前聞いてない。
「拙者は、伊賀島半蔵でござる」
 改めて。ドーモ、イガジマ・ハンゾー=サン。
 だが、メンバーで一つ見落としていることがある。そう、晴ちゃん以外全員がネラーであるということだ。……なんだ、このニート軍団。しかも、強い。
 美雨さんは戦闘にたけすぎて強化ガラスを一撃粉砕できる。実際強い。
 イガジマ=サンは忍者。強い。とても強い。忍者isジャスティス。
 ……さて、どうしたものか。ネラーェ……
 忍者が昔輝いて居た頃とは遥かに違っている。古事記にもそう書かれて――いない。なんだよ、古事記って。何でもアリやん。……あかん、何か大きすぎる組織を敵に回しそうだ。やめておこう。それにしても、パロがひどすぎるな。え? メタイ? せやな。メタイな。
おっと。そういって、急に何か思い出したようにこちらを見つめるネラー・ザ・ニンジャ。おっと、ニートも忘れるな。
「おっと、伊勢谷殿。心の内で幕の内許さない。絶対ニダなんて言うのはやめるでっござる」
 な、そんなこと思ってないぞ! ま、幕の内許さないとは思ってないぞ!! 別に前の順番で全部終わったからって!!
 違うだろおおおお!! そうじゃないだろおおおお!!
「こいつ、いつも叫んでんな。心の中で」
 こいつ、サイキッカーか……?!
「いやいや、伊勢谷さんが顔に出るだけです」
 やっとしゃべったと思ったら……、そうか、そうやって二人して攻めるのか。いいだろう。ならばこちらにもいい案があるぞ。このニート忍者が。
 まず、その辺にある炭酸水(自腹)を用意します。次に、その炭酸水を振ります。この時、許さない。許さない。と、言ってよーく振りましょう。殺意に満ちた炭酸水。さて、何をするかお分かりで? そうです。次に、これを忍者に向けます。ふたを開けましょう。3、2、1、ぶしゃあ。どうです? すごいでしょう? え? 幼稚? いえいえ、これが魔法です。と、ドヤ顔でつぶやく。つぶやいたが――
「いやああああああ、ごめんなさい^^ 拙者は忍者ゆえ、変わり身の術でよけてしまったなああああ、ああ、悔しいでしょうねええええええええ、ねえ、今どんな気持ちでござるかあああああ????」
 うっぜえええええええええええええええええええええ。この忍者うっぜえええええええええええええええええええええええ。よろしい、ならばこれは戦いだ。ふふ……そうキモイ顔、と美雨さんに言われながら僕は腰のホルダーに手を掛ける。いいだろう、覚悟しろよ忍者。これは、戦争だ。
 行くぞ、エセ忍者。忍術の準備は十分か。
「あ、お巡りさん、こいつです」
 ふ、そんな有名ネタ、ほんとのわけ――
「あー、君、発砲してなくても逮捕ね」
 うっそおおおおおおおおおお!? ここフランスだよねええええ!? 日本の法律適用されてないよねええええええええ!?!?!?
「あー、知らなかったでござるか? フランスでも駄目になったんでござる」
 聞いてない。そんなの聞いてない。駄目だ、ここで逮捕とか駄目だ。牢獄だけは絶対に嫌だ。
 そんなやり取りの中、美雨さんの姿がなかった。やはり、晴ちゃんが心配なのだろうか? さっきの電話から、妙に晴ちゃんの事を気にしている。何かあった? そう聞いても、口を開かない。だから、尚更心配だった。

*     *

「……本当は嫌だけど……」
 そう言うと彼女は、受話器に手を置く。公衆電話のため、銀貨を使うのだが、彼女は使おうとしなかった。躊躇っているのだろうか? 2分経って、やっと銀かを投入し、番号を入れ始めた。
「……もしもし、三国さん?」
 三国……? 誰だ……?
「うん、緊急の頼み事。うん、お願い」
 電話を終えると彼女は、溜息を吐きながら、こうするしかないんだよね……そうつぶやいた。三国……三国――そんな人聞いたことないけど……
「あの、美雨さん」
 聞いていたの……? と、少し呆れ気味に言って、彼女はつづけた。
「三国エルザ。私の昔のバディなの」
 昔の……って事は、七瀬さんとコンビを解消した後か。
 短かったんだけどね。彼女はそう付け加えた。付け加えたところで、気になることを聞いた。彼女の、三国さんとのコンビの解消理由だ。
 強すぎたのよ。彼女の答えに、少し動揺する。強かった――? まさか、美雨さん以上に……?
「彼女はね、一流の剣士である前に、日本で一番強い剣術に長けた人だったの。でも、ハルトさんはそんな彼女の力を恐れて、私たちの組織から外した。これが解消理由」
 一番強い……? ハルトさんが外した……? でも、そんな人に晴ちゃんを任せていいのだろうか。
 大丈夫よ。彼女は、少し浮かない顔で答える。任務だけなら彼女だって超一流だよ。そう、答えた。……まあ、コンビ解消されていてもそういう信頼関係はあるんだろう。そう思ったが……
「彼女との仲は険悪と言ってもいいわよ」
 意外な答えだった。依頼を頼むくらいなら、仲は良い方だと思った。
 どうやら、コンビ解消の際に色々ともめたらしい。それ故に、依頼を頼むときにためらっていたらしい。
 三国エルザ……彼女の力は、借りるべきなのか……? それとも――

 その後、彼女の剣術について聞いたが、三国流――そこの師範代……いや、マスターなのだという。彼女は、目隠しをした状態でも人体切断を平気で行える。美雨さんは、そう話した。……身体切断――仮にそれが本当に可能なのだとしたら、危険どころではない。それこそ、七瀬さんのような特殊部隊に拘束されるのが妥当だろう。しかし、七瀬さんでも敵わないらしい。……死ぬのか? 三国エルザと戦えば? ……、そうだ。今はそこじゃない。晴ちゃんの救出だ。彼女が本当にそのレベルの人間なら、晴ちゃんの救出なんて目じゃないほどいともたやすくやり遂げるだろう。
 安心……とは言わないが、少なくとも、晴ちゃんは平気そうだ。
 不安ですが、とりあえずは安心です。そう言って、仕事に戻りましょう。と、彼女に腕を引っ張られ、調査を再開した。だけど、なんだろう。この胸騒ぎは。一体、これから何が――

*     *

「やれやれ……あいつの頼み事――か。とても気に食わんが、彼女の妹には何の恨みもないしな。気に食わないかは関係ないだろう」
 日本では、晴ちゃんの救出が行われる。その直前だった。
「人の屋敷に無言で、しかも土足で入り込むとは……随分えらくなったじゃないか。――くん?」
 三国エルザに、ある人物が接触していた。その彼との接触が、幸運なのか、不幸なのか。どう転ぶかは、彼女の判断次第だろう。
 フランスに来て2週間が経とうとしていた。しかし、一向に手がかりはない。本当に、あるのだろうか? そんな疑問すら出てきて、少し混乱していた。本当はない。だけど信じている奴らが暴れている。そう、思いたいくらいだった。
 そんな中、とある情報が耳に入った。フランスの、ハルトさんの別荘にあるかもしれない。そんな噂だ。あの人……別荘持ってたのか……
 あ、ミスターフランスパンはフランス支部のメンバーなんだっけ。ああ、納得。
 でも、なんでそんな場所に――? 彼は未来に飛んだと。そう、横槍を入れてきたのは、さっきから何やら機嫌のいい様子の美雨さんだった。あれ? さっきまで機嫌悪かったじゃん……
「いやぁ~三国さんが派手にやったらしくてですね~」
 ちょ。派手にやったって……晴ちゃん無事ってわかった瞬間機嫌がよくなった。そうゆう事か。ああ、納得――出来るか!! 駄目だろ!! 派手にやっちゃ駄目だろ!!
 って、そんなことより。今はハルトさんの別荘に行くのが先だ。
 その時に、携帯がぶるるとなった。……晴ちゃんだ。えぇ……しかし、無事で電話してきたのなら、もちろん出る。
『もしもし、伊勢谷さん!!』
 おお、久しぶりに聞く声だ。どれどれ――要件は――
『ハルトさんの別荘、一歩進んで一回ジャンプしてください』
 ん? んん? どういうことだ?
 ジャンプしてみましょう。美雨さんにも言われ、とりあえず。取りあえずジャンプすることにした。
 いっせーのーの、ひょいっと。
 その瞬間、揺れた。地面が、揺れた。地震――? に、しては揺れが微妙すぎじゃないですかね……?
 ジャンプし、地震が起き、次に――地面が割れた。と、言うか、スライドした。
 街中で!?!? こんな街中でそんなギミックが!!?!?
 出てきたのは――別荘と呼ぶにはでか過ぎる、迷惑なもはや基地というべき別荘だった。これは……例の物がありそうな匂いがぷんぷんするぜ!!
 と、こんな感じでワクワクしつつ、無断で家に入る。あ、無断と言っても許可は取ってます。遺書で。……不吉。すっごい不吉。まぁ、入るけど。

 あ、ありのまま今起きたことを話すぜ……! 「俺はでっかい別荘に入ったはずなんだが、次元を超えたみたいだ」な、何を言っているかわからねと思うが――おっと、誰か来たようd(((
「……遠足気分は抜けましたか?」
 怖いです。超怖いです。目の前でガンを飛ばされてます。うう、恐ろしい。取りあえず、ここで一応は、任務が終わりそうだ。これで、日本に帰れるのか……? でも、そこまで世の中は甘くないとは思う。そう、思いながら奥に進んでいった――
「え、えっと――」
 そこには、たくさんの――ガラクタが並んでいた。
 何故、ガラクタ……? この中から探し出すのは難しいのではないだろうか……
「うーん……」
 その時、また、携帯が鳴った。
『伊勢谷さん! その場でジャンプです!!』
 またかよっ!!! またジャンプかよ!!
 取りあえず、ジャンプする。

 ……何も起きない。何も起きないぞおおおおおおおお!!
 ねえ、と、美雨さん。あ、あれ? なんか――穴空いてね?
 ……覗いてみよう。やましい意味はないぞ。除くんだ。ただ単に。

 はい……れる……? 入ってみよう。ってか、潜ってみよう。おお……見事に落ちる。落ちていく。あ、ヤベ――これ死ぬんじゃね? 俺、ここで死ぬの?
「伊勢谷さーん!!!」と、美雨さんの声が聞こえるが、僕はどんどん落ちていく。……死ぬな、こりゃあ。諦めて死にましょ、そうしましょ。なんて言っているうちに、地面に足がついていた。
 浅い!!! 浅すぎるよ!! そういうドッキリ要らないよ(´・ω・`) さて、奥まで行けたは行けたけど(物理的に)うーん……何もない。本当にあるのか?

 今、目の前に大きな黒い箱がある。しかも、ショーケースに入って。まさか、これがジャンヌの遺産じゃないだろうな? いくらなんでもザル警備すぎるよなぁ? でも、これしかないしな――よし、開けよう。
 開けた瞬間――意識が吹き飛ぶ。

 【なあ、坊や。なんで、この箱を開けた?】
 なんで……だろう。何となく、ただ、何となく出だったと思う。
 【なら、君とこれから運命は同じだ】
 どういう意味だ? なあ、おい!!

 はっ。
 意識が戻る。一体、何だったのだろうか。あれは。異常は特に何もない。かといって、異常がないってわけでもない。さっきから、少し左手が痛い。
 そういえばさっき、君と運命は同じだ。的なことを――左手を見る。なんだ、これ。左手に、箱がくっつきかけていた。
 うわああああ!! とっさに振り払う。なんだ、なんだよこれ!!
「い、伊勢谷君!」
 後ろで、悲鳴を聞いて急いで降りてきた、美雨さんがいた。だ、大丈夫。大丈夫なはずだ。ちょっと、撃ってみてよ。意図はわからないが、そう言われた。何を? 僕の腰のショルダーに収納されている銃だ。
 撃つって――美雨さんを?
「遠慮なく打ち込んでいいですよ」
 僕の意識とは別に、左手が動いた。いや、動いてしまった。美雨さんに向かって、まっすぐ銃弾が飛ぶ。やめろ。いくら冗談でも、それは駄目だ。やめろ、やめるんだ。
 銃弾が、美雨さんの目の前に来た時、再び僕の意識が飛んだ。

 次に意識が戻った時――そこは、銃口を向けて、銃弾を打つ直前だった。
「なんだ……? 今の……」
 よくわからなかった。時間が、戻った――? いや、意識が完全に過去に飛んで……未来の意識を飛ばすことで過去改変を起こした――? いや、そんな単純な能力なのか? 今のは――
「伊勢谷さん!」
 振り向くと、涙目になっている、美雨さんがいた。急に銃を向けられ、怖かったらしい。だが、おかしい。僕は確かに、彼女に撃てといわれて撃ったはずだ。やはり、過去可変が起きた――のか……?
 ふと思い出し、携帯を取り出し、番号をあさっていく。晴ちゃん……じゃなくて。あった。ミスターフランス――じゃない。ケビン。彼なら何かわかるはずだ。
 電話帳から彼の名前を絞り出し、電話を掛けるぶるると、バイブ音が長く続く。続いたのち、出た! と、思いきや、「おかけになった電話番号は――」というものだった。畜生。出ろよ。その時、また、意識が飛んだ。
 今度は、なんだ? 電話を……かけている……途中だな。だが、先ほどと決定的に違う点があった。ケビンが――出たんだ。電話に。掛かったのを見ると、また意識が飛ぶ。このシステム、明らかに不完全だ。意識が飛び、過去が変わったと思いきや、再び元の場所に飛ばされる。このシステム、一度過去を改変したら元の世界線に戻る仕組みなのか? 取りあえず、この能力は封印すべきだ。と、言っても、僕が自分の意志でこの能力を発動しているわけではないけど。
 意識が戻ると、ケビンと電話している途中だった。
『おい、坊主』
 意識が戻ったと思えば、すぐにケビンの声が耳に入ってきた。しかし、この能力の欠点は、いつ発動するかわからないだけではなく、発動後の僕は、酔っているというところにある。この能力は、さっき箱に触ってから発現したものだが――何か関係があるのか? そう言えば、ジャンヌについての関連書物が、一部書き換わったんだっけ? もしかして――やはりそれほどの能力なのか? いや、しかし、僕の能力は不完全だが……
『坊主!!!』
 と、考え込んでいたら、ケビンに怒鳴られた。そりゃあ、こっちから電話しておいてずっとむしってたら怒るに決まってるよな。うん。怒鳴られたところで、本題に入る。この能力について、ケビンに聞くんだ。
「なあ、ケビン。ジャンヌの遺産を見つけたんだが――」
『お、おお!! それで、本当の遺産はどうなった?』
 ――本当の遺産? なんじゃそりゃ。まさか、この能力の事か?
『本当の遺産ってのは、その箱に一番最初に触れたもんに時間軸移動の能力を与えるもんだ』
 やはり、この能力が――だが、時間軸移動……? いや、時間軸移動は出来るが、戻される。これはいったい、どういう事なんだ?
「あ、ああ……僕に発言した。だけど、その能力が少し変なんだ」
『変?』
「うん、時間軸を移動した後、過去改変が起きた後にすぐに元の時間軸に戻されるみたいなんだ」
『なんじゃそら』
 ケビンも……分からないのか? だが、ここで僕は思ってしまった。ここで、ケビンが『知らない』という事実が成立してしまえば、また時間軸移動をするのでは? という疑問だ。――ケビンには悪いけど、試してみたいんだ。だから……試すが許してくれ、ケビン。

 ――駄目だった。あの後、ケビンで試したが、能力の発動はしなかった。どうやら、本当にいつ起きるかわからない糞みたいな能力らしい……それとも、他に何かあるのだろうか――? 思い当たることはケビンにもないらしいし……うん、とりあえず放置だ。よーし。日本に帰ってからゆっくり考えましょ、そうしましょ。(投げやりになったけど……いいよね)
「伊勢谷さーん」
 ああ、そうだ。ジャンヌの遺産は回収できたから、もう帰るんだ。あー、やっと帰れるううう。パスポー――取り出した一瞬だった。切れたあああああああああああ、パスポート切れたあああああああああああ。なんでだよ。なんで切れたんだよ! 切れたってか敗れたんだけども!!
「拙者を……置いて行くんでござるか……ござるかああああああああああ!!!」
 アイエエエエェエエエエエエ!? ニンジャ!? ニンジャ逆切れナンデエエエエエエエエ!?!? なんで切れてんだああああああ!! どうしてくれてんじゃ我えええええええええええええ!!
「いやwwwそれ拙者の幻影でござるwwww」
 うっそ。うっそだろ!? ん? ポケット? ……あ、ある。この忍者、本物だ……!
「連れてく!! つ、連れてくから!」
 そうでござるか! と、怪しい笑顔で忍者はつぶやいた。それにしてもこの忍者、汚い。さすが忍者、汚い。ふぅ――疲れた。色々疲れた。全く、この忍者め――ん? ニンジャ、こっちにせまってない? え? ん?? どうなってんだああああああ!!
「伊勢谷殿、伏せるでござる」
 耳元でそうつぶやいた忍者はがりり、と、足でブレーキを踏むようにかっこいい()ポーズを目の前で繰り出した。なのに、普通にかっこいい。この忍者かっこいい。って、なんでこんなことになってんだ?
 と、その時に、まーた能力が変なタイミングで――

 はっ! 戻った。意識戻った! ……敵の組織。それを追っ払うために、忍者は向ったらしい。ここは任せて、早く日本へ。そういう事らしい。って事でありがとう、忍者。さよなら、忍者。
 忍者に背中を向け、僕は飛行機に急いで向かう。さもなければ、死ぬ。敵の組織に、殺される。そうだ、今は任務中だ。それも、国家機密級の。
 くっそ。でも、忍者のような貴重な人材は――
「なーに勝手に殺してるでござるか~」
 呆れた目でこちらを見る忍者が! いつの間に!
「いや、あれ質量をもった影分身でござるよ」
 エエエエエエ!? 忍者技術進歩し過ぎィ!!
「これも修業の一環でござる。フッ」
 どこにドヤ顔要素があるのかわからないが、取りあえずすごいことはわかった。うん。すごい。この忍者、実際凄い。
 さて、前回はどこまでだったか。ああ、飛行機に乗り込むとこまでだったね。そうだった。うん、そこから先については今から話そう。
「さて、伊勢谷さん……決着をつけましょう!」
 彼女がそう言っているが、僕と美雨さんは今、トランプで勝負している。勝負も何も、暇すぎて退屈なのだ。飛行機の中は。で、トランプでババ抜きをやっているわけだ。
「ふ、勝てるかぁ?」
 あ、ババとられる。となるのはいいが、取られそうになるとあの力が発動し、僕が絶対に勝ってしまっているのだ。ふ、残念だったな、美雨さん。僕もいつ発動するかわからないのっさ……! と、ドヤ顔で頭の中で言っていると、ドン引きされた。
 うう、周りの視線が痛い。痛いが、それがいい。
「うっわー、伊勢谷殿どMでござるかぁ~」
 この忍者! 頭の中読みやがった! くっそ、忍者くっそ! 殺すべし! 慈悲はない! ならば、この忍者も入れてやってやろうじゃないか。この遊びはな、飛行機が墜落か到着でもしない限り終わらないんだよ!
「トランプ……で、ござるか。ならば、もっと楽しくしましょうでござる。秘技! 分身の術! でござる」
 増えた。トランプやるためだけに増えた。この忍者、能力悪用しすぎでね? まあ、トランプに悪用する僕が言えることではないっけっどねええええ!!(ドヤッ うん。引かれた。さすがにこれはないや。うーん、ババ抜きにしても、分身されたんじゃなぁ……どうしようもないんだよね。こればっかりは。だが、まとめて相手してやろう。面白いじゃないか。
「いいぜ、忍者野郎。俺たちも決着をつけようぜ」
 3人(分身も混ぜて4人)で、ババ抜きを始めたのだが、ギャラリーが思ったほか集まってしまった。と、言うより、客が真ん中に固まりすぎた。あれ……?
これ、まずい状況じゃ――
 ピキッ。どこかで、そんな鈍い音がする。あ、これあかん奴や。真っ二つ。これ真っ二つだよねえええ!?
「む、伊勢谷殿、美雨殿。捕まるでござる!」
 と、言われて、断れない状況だったので、忍者に捕まる。え? そろそろ名前で呼んでやれって?……だって、こいつ名前忍者って言ったらよくある名前なんで呼びたくないんだ。そんな理由? こんな理由だ。
 自問自答、それを僕はキモイ顔でやっていた。うむ、われながら気持ち悪い。
「あ、すまないでござる。あんまりにもキモイもので、落としてしまったっでござるwww すまんでござる。まあ、自業自得でござるね」
 何言ってんだ、あの忍者あああああああああ!! そのムササビに僕も乗せろおおおおおお!!
「伊勢谷さん……落ちて」
 アイエエエエェエエ!? 美雨さん!? 美雨さんまでナンデエエエエエ!?

 取りあえず、僕の今回の死亡フラグは――ん? 死亡フラグなんてないじゃん。そういや。僕の能力的に。
「あ、そんな都合いいことないんで、安心して」
 アイエエエエェエエ!? 天の声!? 天の声ナンデエエエエエ!?
 ――とりあえず、フランスの空から僕は急降下で落ちていく。ああ。僕はここで死ぬのか。うん。今までありがとう。
 と、その時、あの能力が――発動した。
【あー、お主死んだら詰まらんからな。とりあえず、お主の意思で発動できるようにしとく】
 ナイス! さすが僕の信じる神だっ!!
 今日ほど神を信じてよかったとは思ったことはない。
 取りあえず、能力発動体制に入るのだった――
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