引きこもりの僕がある日突然勇者になった理由。メモリーズ

ジャンマル

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引きこもりの僕がある日突然勇者になった理由。(まとめ)

最終審判

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 なろう版最終章です

 ――で、どうなったんだろうか。死んでは――ないな。事実、ここで今こうして語られているわけだし。ということは、能力が発動したって事だ。今、どこに――
「伊勢谷殿、大丈夫でござるか!?」
 半蔵……って事は、無事に過去改変が起きた後の元の世界線か……や、ややこしい。リターン・フューチャー。これからは、そう呼ぶことにしよう。戻される未来。まさに、この能力にピッタリだ。この能力、任意発動可能になったらしいが、恐らく一時的なものなはずだ。今は、もう使えないはずだ。……忍者、瞬間移動ってできないの?
「伊勢谷殿、一気に戻るでござる。美雨殿も、捕まっててくれでござる」
 え?
 次の瞬間、忍者は瞬間移動(物理)を行った。スゴイ。ワザマエッ!
「さあ、ついたでござる」
 早えよ!!! 早すぎんだろぉ……しかし、言葉の通り、そこは日本だった。見慣れた地面、見慣れた電柱、見慣れたスーパー。間違いない、僕たちは、戻ってきたんだ。日本についてそうそう、美雨さんは拠点に戻ろうといった。やはり、晴ちゃんが心配だったのだろう。まあ、電話してきたときは何ら変わりはなかったが。三国エルザ……彼女の事についても気になるのだろう。彼女については、調べてみる必要もある。彼女を味方にできれば、これ以上の戦力はない。それに、今は半蔵もいる。間違いない、ここは、最強の勇者育成協会だ。ん? そんな単語未だにあったのかって?……まあ、気にするな。気にしちゃいけないんだ。
「……伊勢谷殿、拙者は三国エルザについて調べるでござる。だから、美雨殿と拠点に戻るでござる」
「分かった」
 半蔵の顔は、見たことのないほど(出会ってそんな立ってないけど)真剣だった。おそらく、美雨さんの話で一度手合せ願いたいとでも思ったのだろう。それか、本気で三国さんを捕獲でもしたいのだろうか。
「三国殿は――暗殺の令が出ているでござる。彼女は鬼人として強すぎたんでござる」
「な、何言ってんの! 半蔵!」
 美雨さんは、半蔵に対して本気で怒っていた。しかし、半蔵は任務を遂行することしか眼中にないようだった。
「……これも、勇者としての仕事でござる。仕事に私情を持ち込めば、自分が早死するだけでござるよ。しかし、拙者を止めるというのなら、あなた方の敵になってやるよ。その時は――本気で殺す」
 もはや、忍者としての誇り、本来の忍者としての、暗殺者の誇りしかなかった。忍者と勇者は違う。人のために表向きで頑張るのが勇者。しかし、表向きな分、世間からの評価を真に受けるというところもある。
 一方で忍者は、暗殺など、影の世界での任務に特化しているのが忍者だ。影の世界での任務の性質上、世間の目などはもちろん関係ない。姿さえも捉えることはできないのだから。
「……結論は出たようでござるな。なら、拙者は今からあなた方の敵。もう、手を組むなど甘い考えは通用しないでござるよ。では――さらば」
 行ってしまった。彼の言い残したことは、正論だった。それ故に、悔しかった。彼を殺すつもりなどみじんもない。しかし、僕たちは彼に殺される。確実に。そこに生じた溝は、もう埋めることすらできないだろう。だから、覚悟を決めなければいけなかった。彼と戦うことを。もちろん、僕の能力で消してしまえるかもしれない。でも、それをしてしまえば、彼の存在を一から再構築する必要がある。それは、あまりにもリスクが大きすぎる問題だった。
「伊勢谷さん……私は、彼を止めます。あなたがそれに協力してくれなかったときは、私はあなたとはもう別の勇者として活動します」
 美雨さんまで……どうすれば。どうすればいいんだよ……糞がっ!!
 僕のその叫びは、誰にも届かず、ただただ、僕の中で永久にこだました。
 鬼人、三国エルザ。近づくものには刃を、任務の時には優しさを。そんな人だった。彼女は、鬼人とは言われていたが、任務以外では絶対に刃を向けない優しい鬼人だった。しかし、美雨さんとコンビを解消してから、彼女は本当の意味で鬼人になっていった。歯向かうもの、近づくもの、任務のターゲット。なりふり構わず、気に入らなければ切りつける。そんな殺人鬼に変貌してしまった。
 元々、彼女は、三国流のトップで、世界最高峰の剣術の精通者として知られていた。彼女のふるう刀は美しく、桜の花びらを鞘から刀を取り出すそぶりを見せずに、手をかざすだけで切り刻まれて見えるほどだった。それ故に、彼女が手を振れば、何もかもが切り刻まれる。そんな噂が次第に広まっていった。
 そして、その噂が刀・鍛冶協会に知られてしまい、彼女は表舞台の【世界最高峰の刀の精通者】その肩書と共に抹消された。その時からだ。彼女が、見るもの、触れるものを切り刻む殺人鬼になったのは。やがて、彼女は三国流ではなく、鬼死魔殺人流という名で呼ばれるようになった。この異名は、どこで作られたものかは知らないが、次第に広まっていき、最終的には彼女の耳に入った。自分が一番愛し、共に成長させてきた三国流すらも捨てさせられた彼女は人を信じることさえ忘れ、ひたすらに、ただ、ひたすらにその刀を血に染めてきた。しかし、それは強すぎる力だった。成長しすぎた彼女の刀は、今や過去・未来に干渉できるほどのものになってしまった。
 そうなってしまえば、もう、彼女を殺し、鬼死魔殺人流。もとい、三国流を彼女と共に消さなければならなかった。だからこそ、暗殺に特化した半蔵の暗殺対象になってしまったのだろう。
 しかし、今の彼女は本当に殺人鬼なのだろうか? 人を信じられなくなった。と言われていたが、つい最近、美雨さんを信じた。信じたからこそ、晴ちゃんが助かった。そんな今の彼女は本当に殺人鬼なのだろうか? 過去・未来に干渉できる力が強大すぎる? 笑わせるな。だったら、僕の力はどうなる。意識を別の世界線の過去に飛ばし、再構築。その後、元の世界線にてタイムパラドックスを無理やり起こさせる。僕の力は、それほどに強力なものだ。しかし、僕は正義のために使うと決めた。ならば、今の彼女は正義のためにその三国流をふるっているのではないのか? ならば、僕の結論はたった一つだ。
「――三国さんを、助ける。この力で、絶対にだ」
 彼女を助ける。彼女が死ねば、救えたかもしれない過去、変えてしまわなければいけない未来。それを救うことが出来るのが彼女の刀だ。しかし、半蔵はそんな彼女を殺そうとしている。
 ならばもう、思い出に浸っている時間などない。三国さんの暗殺は、刻一刻と迫っているのだから。たとえ半蔵を殺してしまっても、この力で救えるはずだ。この力なら、誰一人殺さずに止めれるはずだ。だから――信じさせてくれ。僕の中の神。
「晴ちゃん。任務、受けさせてくれ」
「どんな任務です?」
「三国流――いや、三国エルザを助ける。僕が必ず」
「分かりました! 検討を――祈ります!」
 ありがとう。そう言って、僕は電話を切った。これが僕の決断だ。みんなを救う。この、リターン・フューチャーで……!
 
 ……これから、どうしようか。決戦に備え、武器を新調するか。それが先だな。
「なあ、晴ちゃん」
「……? なんです?」
「武器を新調したいんだけどさ。今の武器、ハルトさんからもらっただろ? だからさ、武器の事あんま詳しくわかんなくて」
「ああ。そうでしたか。いいですよ? 今からです?」
 うん。と、答えると、晴ちゃんは「じゃあ準備してきますね」と、自室に掛けていった。
 ハルトさんからもらったこのデザートイーグル。これは、僕でも若干今でも使いにくいところがある。だが、武器としては明確な強さを誇る。それが、デザートイーグル。もっとも、これはハルトさん用の特殊チューンアップがしてあるものだったが。
 しかし、せっかく作るなら特注がいいな。何か、そういうところはないんだろうか? しばらく、晴ちゃんが普段にらめっこしているモニターの周りでうろちょろしながら考え込む。相手は忍者だから、少し小型のピストルがいいか? いや、それでは忍者以外では力不足が否めないな。なら、散弾銃にしてみるか? だが、散弾銃は少しリロードに時間を食う。まあ、死にかけたら能力を使えばいいのだが。うーん。
「伊勢谷さーん!」
 考え込んでいて、自分の空間に入っていた僕だが、しばらくしたら晴ちゃんが準備を終えて戻ってきた。それと同時に、僕も現実に戻る。
「えっとですね、ここから少し遠いですが、箱根に銃や刀の専門の職人がいるんです。ハルトさんもそこで特注したんですよ」
 特注って……じゃあ、これはデザートイーグルじゃないのか……!? と、思ったが、デザートイーグルをハルトさんようにチューンしたという意味だったらしい。だが、いきなり職人のところへ行っても、断られるのでは?
「あ、いえ。大丈夫です。彼は暇人なので」
 暇人って。それ、職人としては致命傷な気がするんだけど。まあ、いいか。きっと、すごすぎて人が来ないって事だろ。うん。そうしとこう。
「じゃあ、バスを手配しますね」
「ん? ん……!?」
 バスって、なんか特別なのか? いや、そんなことないだr……アイエエエエ!? 特殊任務用バス!? 特殊任務用バスナンデェエエ!?
「いやだって、普通は一般車両が入れるわけないじゃないですか。彼の職人としての腕は、一級品の三つ星ですよ?」
 いや、一級品も三星もあまり変わらないとは思うが。と、僕がぐだっているうちに晴ちゃんは乗り込んでいた。バスに。置いてかないでええええええ!!!
 僕が乗り込むのを見て、バスは発進した。こいつ、結構速いがいいのか?
 とまあ、バスの話はいいとして。晴ちゃんに、その職人について聞いてみる。
「はい。彼の名前は神代鉄。幼少時代から、鍛冶氏であった父に鍛冶を教え込まれてきたそうです。その結果、父を超える職人になったそうですよ」
 そんな凄腕なのか。でも、ハルトさんが知っていたのなら、美雨さんも……
 待てよ? 銃・「刀」専門って言ってたよな? もしかすると、三国さんの刀も彼が?
 僕がそんなことを考えるのを悟ったのか、晴ちゃんは続けた。
「三国さんの刀、「火ノ刀」も彼が打ったものです。そう聞くと、彼の腕がどれほどか。想像がつくんじゃないですか?」
 三国さんの刀は、過去・未来に干渉できるほどに素早い……いや、切れ味のあるといった方がいいのだろうか? 取りあえず、それほどの技は、彼女の技量だけではどうにもならない。刀も重要になってくるわけだ。しかし、一流と呼ばれる神代の打った刀ならどうだ。もし、もしもだ。彼の作る武器に、使用者のもっとも適した能力(技量)に見合った魔力が発生するのなら、本当にそれは専用の武器だ。そして、それを作ってしまう神代もまた、僕や三国さんのように、暗殺の対象になりかねない。だからこそ、今こうやって僕たちが特殊なバスに乗って移動する場所に住み着き、鍛冶氏として依頼を受けてきたのではないだろうか。
 使用者に合わせて能力が開花する武器。と、なれば、過去を再構築し、過去改変を行う僕の武器にはどんな能力が備わるのだろうか。
 それは、作った本人すらもわからないだろう。
 ……色々とあったわけだが、それはまあ。今やっている人気投票一位にでもなった時にでも話してやろう。嘘です。はい。まあ、何があったって言われても少し説明に困る程度の事だ。
 一応、今神代の前に居る。今から、お願いするのだ。
「えっと、あの」
「お前、伊勢谷ってやつか?」
 「そ、そうなんだ」と、答えると、何も言わなくていい。とりあえずはな。そう言って、奥に何かを取りに行った。
「あー。多分型を取りに行ったんですよ」
 型……? まだ、何を使うとも言ってないけど、そんなものあるのか? 「はい。あります」と、きっぱりという晴ちゃん。な、なんで知ってるんだ……
 ま、まあ。要するに、どんな武器がいいか決めとけってことらしい。一応、今の武器と合わせて二丁拳銃って言いたいんだけども……でも、相手はあまり遠・中が聴くようなタイプでもない。ダガーの二刀流でもいいかもしれない。
 と、晴ちゃんとどんな武器がいいか。という話に夢中になっているうちに、神代は戻ってきた。戻ってきて一番最初に言った言葉は、正直聞き間違いかと思ったが……
「お腹すいた」
 と、はっきり、僕の目の前でつぶやいた。えっ?えっ?? 何それ。食ってないの!?
「いや、昼飯は食った。そうじゃない、金をいくら出せるか。そういうことだ」
 回りくどすぎるわっ! と、突っ込みは心の中で。な。
「えっと、26万までなら……」
「……足りないがいいだろう。そんなこと言ってたら、ハルトさんに怒られちまう」
 やっぱり、こんなとこでも何かしらの関係を作っていたハルトさんは、いったい何者なんだ? まあ、顔が広いって事だろうけど……
 神代は、僕に構わずにどんどん進める。
「手を出せ」
 うん。と僕は頷き、言われたとおりにする。手に置かれたのは、シリコン製の型――のはずだが、その形は、僕の手に丁度フィットしている拳の形だった。これで、どうやって武器を打つんだ……?
「……大体分かった。サービスだ。ダガー2本も打ってやる」
「な、なんでそんなところまで……」
「……この型はな、触れた人にもっとも適した武器を示してくれるんだ。その結果が、お前にはそのハルトさんのデザートイーグル、もう片方はお前専用の銃。そう言っているんだ」
 なんだよ、そのチート工具。やばすぎだろ。つまり、事実上どんな武器でも作れるって事だろ? ヤベえな……
「待ってろ、すぐ終わる」
 ファ!? すぐって、武器打つの普通は数か月はかかると思うんですが……
 カンッカンッ。と、隣で4度ほどなった。鳴り終るのと同時に、「終わったぞ」と言われた。いや、そのスピードはおかしい。
「ほら、これがお前の武器だ」
 差し出されたものは確かに、武器だった。一丁の銃。そして、2本の小型のダガー。鍛冶師とはいえ、能力者……なのか?
「……武器を瞬時に打ち込み完成させる能力だ」
 やはり、彼もそうなのか。
 が、彼から渡された武器には重さ以上に、何かが足りなかった。
「お前の能力に合わせて武器は真の力を引き出してくれる。それの生かし方は、お前しか知らない。俺には、わからない」
 そう言うと、「終わったんだからとっとと出ろ」と、言われ追い出された。金は後から口座に入れろ、らしい。
 とはいえ、新しい武器は手に入れた。後は――半蔵と決着をつける。それで三国さんは助かる……はずだ。
「言ったでござろう? 次は殺し合うと」
 向こうから、来てくれた。これはチャンスだ。行ける。

―― ――

「なあ、半蔵を後は探すだけなんだけどさ。どうすればいいと思う?」
「うーん。果たし状……ですかね?w」
「えぇ……」
 半蔵をどうおびき出すか。そこで悩んでいた。何しろあいつは忍者だしな。どうおびき出せば……

―― ―――

 そして今に至る。
 え? 回想の意味ないだろって? ……せ、せやな。
 でも、そんなこと言ってられる時間はない。さっさと、作戦を展開せねば。
「伊勢谷殿の作戦なぞ筒抜けでござるよ……!」
 向こうが動き出すのと同時に、僕も銃を抜く。が、すでに装填は済んでいる。後は奴が印を組むのと同時に――
「残念でござるが、印など結ばないでござる」
 なん……だと……嘘だろ? それじゃあ、僕の作戦は――いや、まだいける。まだ、可能性はある。能力を使う。
「リターン・フューチャー……力を貸せっ!!」

 僕の叫びと同時に世界が、再構築されていく。彼が印を結ぶ。という事実に塗り替え、僕は再び元の世界線に戻ってくる。
 これで、作戦通りに行ける。誰も死なない世界線を作れるんだ。
「いくでござるよ!」
 そう言って、半蔵は印を結ぶ。その瞬間に、新しい、この「リターン・エンド」に込められた銃弾をトリガーを引き打ち込む。この銃弾は、世界線を変えたところで止まらない銃弾。ただ一つ、僕の能力の影響を受けない銃だ。それ故に、危険でもある。
「銃撃戦……甘いでござるよ!!!」
 彼の「銃弾が当たらない」という確定情報を、塗り替える。彼の、「頭に当たった」事にする。もちろん、これは賭けだ。彼が死ぬかもしれないし、死なないかもしれない。そんな賭けだ。この銃弾自体の威力はほとんどない。木を貫通できないくらいにだ。本来、この銃弾の使い方は、よけられる「確定情報」を塗り替えるのと一緒に、威力も上げるものだ。威力を上げること自体は干渉できるように作られているらしい。それが何故できるのかは知らない。
 が、今回は威力を上げない。上げてはいけないからだ。作戦は、世界線を塗り替え、彼の頭に当てる。そして、その銃弾の当たった衝撃で記憶障害を起こすというものだ。大きな過去改変は、タイムパラドックスを生む。だが、この程度なら……大丈夫なはずだ。
「つ……!」
 作戦通り、彼の額にあたった。彼は、その場に倒れ込む。後少し、あと少しだ。これで、彼に記憶障害が起きれば、この賭けは僕の勝ち。起きなければ僕の負け。単純だが、これは非常に大きな、それもリスキーなギャンブルだ――
 だが、そのギャンブルは――
 失敗した。彼を殺した。駄目だ。駄目だ。駄目だ駄目だ駄目だ!!! 世界線を変えればタイムパラドックスは免れない。そうすれば、何が起きるかわからない。だから変えられない。だから失敗は駄目だった。やってしまった。僕の気のゆるみがこんな悲劇を生んだんだ。やめろ。やめろやめろ! 僕を責めるな!! 僕は悪くない! 大体なんだ! わけもわからない会社に入って、わけもわからない責任を押し付けられて、わけもわからない能力を押し付けられて、なんなんだ。なんなんだよ! 僕の人生ってこんななのかよ!
『ほう。自分の人生を否定するか』
 なんで、なんでこんな時に出てくるんだよ。全部、お前が悪いんだろ? 全部、わけもわからない責任と力を押し付けたお前の責任だろ? 何がジャンヌの遺産だよ、そんなもの、幸運を呼ぶわけないじゃないか。第一、不確定要素を僕に押し付けただけだろ!? なんでそんなに偉そうなんだよ! わけがわからない! なんでそんな兵器の顔をするんだ。人が死んでるんだぞ。過去は変えられない。変えてはいけないことだってあるんだよ。何が世界を再構築だ。ふざけるな!
『この力は、お前も望んだではないか?』
 ああ。確かに望んださ。でも、それはこんな結末を作るためじゃない! 幸せな世界を作るためだ。それが出来ない力は望んじゃいない!
『その力を与えただろうに。今の貴様にあるのは、過去への干渉のためらいだけだ。タイムパラドックスが怖くて何が時間干渉だ』
 うるさい。僕にできるかよ。人の存在が消えるかもしれない重大な責任だぞ。それをやれって!? 何を言ってるんだ。それが出来れば苦労しない! 悩まない!
 できないから今こうして迷って、迷って迷って苦労してるんだ。神にわかるかよ、出来そこないの人類の心理なんて。
『……分かった。君からは能力を消そう。しかし、覚えておけ。黒箱を使ったものには、ジャンヌ・ダルクの人生そのものが反映されると』
 何を言ってるんだ。今頃。そんなもの、もう関係ない。能力は消えるんだろ? 関係ないだろ? はは……ははははは。そうだよ。最初からそうすればよかったんだよ。ああ。なんでそんな簡単なことに気付けなかったんだろうか。目を通せば、気づけたのに。
「ふふ……はっはっはっ! 何がジャンヌの遺産だ! そんなもの屁でもない!」
 僕は、地獄を見た。目の前のバスこちらに突っ込んでくる。僕は、動けなかった。まるで、はりつけにされているように。
「はは、なんだよ、これ。燃え盛ってんじゃねえか」
 貼り付け。燃え盛る火炎。ああ。そうか、これがジャンヌの遺産の真の意味だったのか。与えたものに希望を与え、ジャンヌの障害の結末となった火あぶり。それを使用者が受けてしまう呪い。何でもできる力と引き換えに、僕は命を失うのか。はは……そうか。なら、受け入れてやるよ。この結末を。それが答えなんだろ? 大天使……ウリエルさんよ。


「良かったのか? ケビン」
 天使は男に話しかける。その光景は、まるで旧知の仲のようだった。
「ああ。黒箱の所有者に最高の結末が訪れないなんて知れた事だろ?」
「……それも、そうか」
 黒箱。所持者に最高の英知と、最悪の結末を与える呪いを与える。その呪いは、手放したところで外すことはできない。一生の呪い。それは、最高の英知を手にしたものには絶対に訪れるものだ。ジャンヌ・ダルク。織田信長、木山ハルト。そのほかにも何人がこの呪いで死んだのだろうか? その始まりはジャンヌダルクと言われているが、実際はどうなのだろうか? これは、最高の英知を与える黒箱ではなく、最悪の害悪を残すパンドラの箱ではないのだろうか? 英知、力、地位を手にすれば、いずれ死ぬときは最悪の形になるだろう。そして今、僕もその一人になった。信じられないが、それが現実なんだ。黒箱は危険だ。あんなもの、必要ない。必要あるとすれば、それはもはや戦争だ。……ああ、そうか。戦争を止めるために僕は戦ってたんだ。でも、無理だった。自分の命の終わりにすら気づけないのに、戦争なんて規模のでかいものは止められない。ジャンヌ・ダルクも、同じ境遇なのだろうか……もし、もしも最後の願いがかなうのならば、ジャンヌ・ダルク。彼女に幸せを与えて欲しい。火あぶりにされず、戦争に駆り出されず。そんな一生を彼女に過去に居る彼女に与えて欲しい。
『最後の質問だ。お前、守護者にならないか……?』
 それでいい。もう、それしかない。命が続くのはもうありえないけど、せめて、この結末を止められるようになりたい。その為の力をくれるなら、喜んで引き受けよう。
『世界樹として……長き眠りにつけ。少年よ』
 これが、僕の最高の結末だったかもしれない。そう思うだけでも、僕は救われるようだった……

ーEND-
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