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引きこもりの僕がある日突然勇者になった理由。(NEXT)

永久の地獄

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 箱を探し始めて10分。未だに、手がかりはない。それどころか、ここにあるのだろうか。施設は一通り見たが、隠せるような場所はない。……心配になってきた。
「ここにないなら……」
 ヘレンの症状は曇っていた。見つからないという焦り、時間がないという焦り。その二つからだろう。かなり焦っていた。何回も体験しているだろうが……それでも、何回も失敗しているんだ。それは多分、箱を見つけられなかったからだろう。何回も何回も、数百。いや、何千と。そのたびに箱を使って、そのたびに苦しんで。もう、彼女自身がどうなってもいいと。呪いが重なりすぎたとき、どうなるのかは知らない。でも、死の呪いが重なれば、それほど効力も上がっていく。本当に、時間がないんだ。ヘレン自身にも、何が起きるかわからない以上、焦るのも仕方ない。最悪、存在が消える可能性もある。そうなれば、この世界も薄れていくだろう。そうなる前に何とかしないと。

 考え込んでいる僕たちの後ろで、足音がした。誰だ……?

 バンッ

 銃声が聞こえる。……いや、不吉なことが起きそうだった。
 遠くで悲鳴が聞こえる。これは……カエデ……?
 とっさに、ヘレンとそちらへ向かう。最悪の事態……それも想定していた。
 箱を狙うのは何も僕たちだけではないはずだ。そうなれば、他の組織の人間は不要となる。要するに……殺す。それは、組織的には安全考慮の作戦だろうが、それでも残された組織の人間とリアルファイトへ発展するだろう。これは、殺人の上で確実に成り立つ人間としての道理だ。
 それが不条理だろうが、関係ない。人を殺すということは、そう言うことだから。

 到着していた僕たちの前に広がっていた赤い海。それは、ヘレンを過去へ飛ばすきっかけとなってしまった。トリガーなんて、いつどこでやってくるかわからないんだ。
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