引きこもりの僕がある日突然勇者になった理由。Re:boot

ジャンマル

文字の大きさ
1 / 33

突然の出来事

しおりを挟む

 ――勇者。誰かを助けるために自分を犠牲にしてまで人を救おうとする人たちだ。勇者。どんな時代もみんなの憧れだ。これは憧れをいつまでも現実にできない一人の青年と、憧れをつかみ取った一人の男。そして――すべてを叶える箱の三つを巡る戦いである。

「ふふ……出来たぞ、今期のアニメ評価スレ! ついに僕もスレ主の仲間だ! あっ、スレ主って言うのは≪1とかよく書かれるあれだ。ふふ、そんな奴に僕もなったから大物だな。フッ」
「何がフッよ、お兄ちゃん」
「なっ、部屋に入るならノックくらいしろよ!!」
「なあにがノックくらいしろ、よ。気づかなかっただけなくせに」
「うっ、面目ない……」

 僕は伊勢谷慎二。とある理由で引きこもっている。まあ、その過去についてはおいおい話すとして、今必要なのは、この謎のかわいらしい生物の紹介である。こいつは『伊勢谷杏子』僕の実の妹である。まあ、そんな大した出来で紹介できるほどの属性を持っていないのが売りな残念な妹である。こんな妹をもって兄の僕も残念である。はは、我の前で土下座しろっ!!

「その顔、まーた人を蔑んでるんだね」
「うっ……」
「ま、だから引きこもりから卒業できないんだろうけど―」
「それはいうなって!!」
「ざんねーん! 先に言ったのはお兄ちゃんなんだしお相子だよー!」
「ぐぬぬ、我が妹ながら高度な作戦を……」
「別に高度でもないし」

 とまあ、こんなバカを毎日やっている兄妹だ。もっとも、妹も引きこもりだが……痩せてはいるな。むしろもっと食えってほどに。それでも引きこもりをやっている以上は、こう、なんか属性持たないとな。僕の場合は妹持ち。杏子の場合は残念な兄持ちのツンデレっ子、とかな! ふふ、我ながら褒めどころたっぷりであろう。褒めろ、褒めるがいい!

「ねえ、お兄ちゃん」
「んー?」
「私さ」
「おーう」
「彼氏……出来たんだ」
「は……?」
「だから、彼氏できたの!」
「はっはっはー、冗談だな!  引きこもりに彼氏なんてできるわけ――」
「私、昨日外出たし」
「それもそうだな」

 引きこもりの定義としてはまだ引きこもりのはずだよ? 我が妹よ。だが、それだけじゃなかった。妹は仕事も見つけたという。どうせ夜のバイトだ……って、それは捨ててはおけぬっ!! 兄として!! 健全な教育をっ!!

「仕事さ、危険な仕事なんだ」
「ふーん」
「勇者……って仕事なんだけど」
「はふう!?」
「RPGとかで見るようなもんじゃないよ? ブラック企業をやっつけていく仕事なんだ」
「ほお」
「でね? お兄さんもどうかって」
「だが断るっ!」
「だよね。じゃ、これで」
「まて、どこに行く! 妹よおおおおおおおお!」

 ま、どうせ男のところだろ。けしからん。とは言いつつも、安心してるんだよな、本心は。長い間妹は人とかかわろうともしなかった。そんな妹が、彼氏も作って仕事をするって言い始めたんだ。止めはしないさ。とは言いつつも悔しがってるのも本当だけど。
 さて、どうするかな。これから。妹いなくなってダメ人間卒業できない僕はどうするべきかを考え始めた時だった。

「勇者……育成協会……?」
『誰でも勇者になれるんです! あなたもどうですか?』
「これ、勧誘かよ……怪しい仕事の勧誘にしか見えねえけど……」

 さらに読み続ける。
『ブラック企業から押し付け仕事まで大歓迎! あなたの力で世界を救いましょう! 貧困、いじめ、格差社会。そんなものからこんなものまで、私たちはなんでもお受けしますっ!』
 突っ込みどころ満載だな、おい!!!! しかし、しかしだな。仮にこの仕事に就いたとしよう。それはもう引きこもりではない。だからどうしたというわけでもないが、僕は引きこもりに妙なこだわりがある。そのこだわりは人に話せないが。まあ、くだらないことだと思ってくれ。
 それにしても……いじめや格差社会まで減らすって、とんでもない機関だな……これどこが運営してるんだ……?
『運営:勇者育成協会本部』
 だああああああああああああああああ!!!! 怪しさまるだしだっつーの!! こんなのに釣れるやつがっ!! いたわ……可愛そうになってきたぞ、妹よ……しかし、待てよ? 勇者って名乗る癖に魔王とか、そういうRPGじみたことはやらないのな。

「ふう……変なサイト見て損した気分」

 この世界の秩序には存在しない何かだろう、と理解を経たところで、僕は思い出した。そう言えば、昔父さんがやろうとしてたことあるな、なんて。それもこんなんじゃなかったか? なんて思い出しつつもう一度サイトを見直す。経営者の欄だ。

「木山……春斗……?」

 なんだろう。何か引っかかる……

 引っかかるが話を変える。この世界は引きこもりが3割を超えた日本である。残りの7割は王族派の貴族となっていた。それは誇れることなのか? わからない。王族派の人間だとしてもそれが正しいとわかっている人間とそうでない人間だっているはずだ。
 王族ではない引きこもり達が主なブラック企業の当てつけの先だ。それを知って立ち上がったのがこの勇者育成協会だろう。でも、だとしても、王族派に逆らうのは憲法違反のはずだ……

 そんなこんなを考えながら僕はその日を過ごした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界なんて救ってやらねぇ

千三屋きつね
ファンタジー
勇者として招喚されたおっさんが、折角強くなれたんだから思うまま自由に生きる第二の人生譚(第一部) 想定とは違う形だが、野望を実現しつつある元勇者イタミ・ヒデオ。 結構強くなったし、油断したつもりも無いのだが、ある日……。 色んな意味で変わって行く、元おっさんの異世界人生(第二部) 期せずして、世界を救った元勇者イタミ・ヒデオ。 平和な生活に戻ったものの、魔導士としての知的好奇心に終わりは無く、新たなる未踏の世界、高圧の海の底へと潜る事に。 果たして、そこには意外な存在が待ち受けていて……。 その後、運命の刻を迎えて本当に変わってしまう元おっさんの、ついに終わる異世界人生(第三部) 【小説家になろうへ投稿したものを、アルファポリスとカクヨムに転載。】 【第五巻第三章より、アルファポリスに投稿したものを、小説家になろうとカクヨムに転載。】

レオナルド先生創世記

ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

処理中です...