引きこもりの僕がある日突然勇者になった理由。ファイナル

ジャンマル

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伊勢谷慎二/miu√

絶対防衛上の勇者『下』

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 アイドルを護衛してはや2時間。次第にメンバーの額や頬には汗が流れていた。真夏の仕事だ。まあ、一応小型の扇風機をメンバー全員が所持しているんだが――どうも『涼しくない』と、使われないらしい。まあ、そんなもんだろう。というか、そんなんでいい。まあ、ここまで酷評だと圭がかわいそうだけどな。
 しかし、にしてもだ。暑い。暑過ぎる。どうにかして涼しく……ミニ扇風機……ぐぐぐ。使うしかないのか――ぐっ。

「慎二さん」
「ん?」
「もうじき終わりです」

 と、言う彼女の息も切れていた。そりゃそうだ。暑いしな。真夏の任務ってなんだかなあ。辛いよなあ?

「まず、うちさあ。扇風機あるんだけど寄ってかない?」
「あ^ーいいっすね^ー」

 って。そうじゃない。何故そこで淫夢語録が出るんだ。ぜんっぜん関係ないじゃないか! それに、それにだ。うん。あれだ。何でもない。
 やっぱし謎だなあ、美雨さん。

「なあ、美雨」
「はい?」
「何か変じゃないか?」

 そう。確かに何かの異変を感じていた。その異変は――確かに――

「終木神……!」
「終木神ってあの?」
「うん。そう、夢の中でって話したあの」

 終木神――何しに出てきた……!

「やあ、伊勢谷君。お久しぶり」
「終木神……!」
「まあまあ、そうかっかするな」

 かっかするなって……そりゃかっかするわ。かっかしないわけがないのだから。
 こいつは時たまこうして僕の中から現れる。要は一心同体になった。と言った方が早いだろう。全く、変な話だよな。

「今日は何しに出やがった」
「大したことじゃありませんよ……手伝ってあげようかと、ね?」
「んなこと言ってまたなんか企んでるんだろうが!!」

 そうだ。企んでるに違いない。きっと、ろくでもないことを。ろくでもない……か。でもこいつを信じてみるのも――ありなの……か?

「信じられないのも無理はないです。私はあなたに永久の1週間を味わわせようとした張本人ですしね」
「……」

 永久の一週間。封印された記憶の一週間。それは、僕を永久に一週間を味わわせるための物だった。それは永久にあの楽しかった一週間を過ごすというものだった。それは――能力による支配に必要だったらしい。僕たち――YIKのメンバーが邪魔だった。特に僕と三国さん。二人は危険人物だと彼はいった。時空切断とタイムリープ。その二つを奪い、僕たちを永久の時間に閉じ込める。そんな作戦だったようだ。
 はたして、そんなことして僕たちに何のデメリットがあったのだろうか。

「あの作戦の真の目的は木山春斗の存在にあったのですよ――」

 終木神の口から明かされる事実。その事実は紛れもなく筋が通っていたし、その通りだった。

「木山春斗の存在は邪魔でした。ですが、箱の力はあくまで奪うだけ。あれは所持している限り何度でも能力が発現します。だからこそ時空切断を奪ったのです」
「……タイムリープしても時空を斬れるからか」
「ええ。その通りです」

 ……その後、こいつの消滅と共に能力は三国さんに返還された。そしてこいつは僕と精神を一緒にするべく僕に食べられた。影となって。

「……今回だけは協力してやる」

 奴の力を借りることにした。何故なら、次の任務はライブの客入れじゃないからだ。
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