引きこもりの僕がある日突然勇者になった理由。ファイナル

ジャンマル

文字の大きさ
14 / 271
引きされ

終着

しおりを挟む
  ーーいつからだろうか。
 同じことを繰り返し、同じ出来事を繰り返し、同じ結末を見届けてきたのは。
 かれこれ、20年ーーいつしか、自分だけが長い時間の間生きていた。

 何度やっても同じ結末。何度変えても同じ結末。

 もうーーこんな人生は要らない。必要ない。

「ケビン」
「おう?」
「僕を殺してくれ」
「は、はぁ!?」

 頭がおかしくなったか。そう言われた。だがーーそうだ。否定しない。否定出来ない。
 最初から、頭がおかしかったんだ。父さんの意思を継ぐと決めた時から。僕の中の何かが、狂い始めていた。
 この世界線で美雨さんを助けて、一般の女性と結婚して、できた子供には慎二と名付けたーー僕と同じ。
 
 そうだ。何のために今までやって来たんだ……長い時間時を繰り返し、自分の役目を忘れ、自分の目標を忘れ。もうーーいいんだ。こんな人生。

「……箱の話を知ってるか?」
「な、なんだよ、改まって」
「パンドラだよ。なんでも叶えてくれる、ジャンヌ・ダルクの遺産だ」
「……その話、本当か?」

 この時点で、既にケビンは自分の野望のために動き出していた。それも分かっている。だからこそ、半蔵に全てを託した。日本支部で、ケビンを見捨てるように頼んだ……

 任務。そういう名目で、僕は死ぬことを選んだ。
 息子にーーいや、はるか未来の自分に、殺されることを選んだ。

「仕事は日本支部へ回せ!」
「い、いいんですか!? 支部長!」
「構わん! それがーー依頼主の望みだ」
「い、依頼主…?」

 ありがとう。ケビン。最後の無茶を聞いてくれてーー

「おい、美雨か?」
『え、はいそうですけどーー』
「今からいう話をよーく聞け!」
『は、はい!』

 それでーーいいんだーー

ーー数日後ーー

「伊勢谷さん!」
「ど、どうしたの、晴ちゃん」

 晴ちゃん曰く、美雨さんがさらわれたらしい。犯人は、黒フードの男らしい。

「助けに……行けますか?」
「うん、これでも七瀬さんに教わってたんだ。行けるさ!」

 そうだ。七瀬流の技を見せるいい機会だ!
 でも、なんだろう。この違和感は。この、胸騒ぎは。
 なにか、むしゃくしゃする。モヤモヤする。それにーーあの美雨さんがそう簡単にさらわれるか?

(ごめんなさい、伊勢谷さん……あなたに、辛い思いをさせちゃいますけど……それが、あなたのお父さんの選んだ道なんです)

 その後、僕の元に掛かってきた電話により、近くの倉庫にいることが分かった。
 そしてーー倉庫に向かった。

「美雨さんを返せ!」
『それは出来ない』

 機械のような声だった。
 まるで、招待を隠しているように。

「お前は何者なんだ!?」
『教える必要は無い』

 その答えは、殺せ。と言っていた。
 僕は、構わずに銃を向けた。

『そうだ、それでいい』
「抵抗……しないのか……?」
『抵抗してどうなる?』

 それは、誘拐した罪を償っての言葉だった。

「お前ーー死ぬのが怖くないのか?」
『辛いさ。ただ、今まで死ぬ思いをしてたんだ。それに比べたら楽さ』

 死ぬよりも辛いこと……? 一体、どういうことだ……?

『まあ、いい。娘は返す』
「え……」

あっさりだった。あっさりと、人質を開放した。

「お、お前、何がしたいんだ!?」
『この任務は俺を殺す任務だ。聞いてないか?』

 一体……どういうことなんだ……?
 事が進みすぎている。僕の知らないところで。

「聞いてない……でも、なんの関係がある!」
『それはーー』

 黒フードの男(?)がフードを外したーー

「う、嘘だろ……?」

 冗談だと思った。冗談だと思いたかった。
 だってーー

 死んでいるはずの男がそこにたっていたから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

処理中です...