引きこもりの僕がある日突然勇者になった理由。ファイナル

ジャンマル

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引きされ

終着

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  ーーいつからだろうか。
 同じことを繰り返し、同じ出来事を繰り返し、同じ結末を見届けてきたのは。
 かれこれ、20年ーーいつしか、自分だけが長い時間の間生きていた。

 何度やっても同じ結末。何度変えても同じ結末。

 もうーーこんな人生は要らない。必要ない。

「ケビン」
「おう?」
「僕を殺してくれ」
「は、はぁ!?」

 頭がおかしくなったか。そう言われた。だがーーそうだ。否定しない。否定出来ない。
 最初から、頭がおかしかったんだ。父さんの意思を継ぐと決めた時から。僕の中の何かが、狂い始めていた。
 この世界線で美雨さんを助けて、一般の女性と結婚して、できた子供には慎二と名付けたーー僕と同じ。
 
 そうだ。何のために今までやって来たんだ……長い時間時を繰り返し、自分の役目を忘れ、自分の目標を忘れ。もうーーいいんだ。こんな人生。

「……箱の話を知ってるか?」
「な、なんだよ、改まって」
「パンドラだよ。なんでも叶えてくれる、ジャンヌ・ダルクの遺産だ」
「……その話、本当か?」

 この時点で、既にケビンは自分の野望のために動き出していた。それも分かっている。だからこそ、半蔵に全てを託した。日本支部で、ケビンを見捨てるように頼んだ……

 任務。そういう名目で、僕は死ぬことを選んだ。
 息子にーーいや、はるか未来の自分に、殺されることを選んだ。

「仕事は日本支部へ回せ!」
「い、いいんですか!? 支部長!」
「構わん! それがーー依頼主の望みだ」
「い、依頼主…?」

 ありがとう。ケビン。最後の無茶を聞いてくれてーー

「おい、美雨か?」
『え、はいそうですけどーー』
「今からいう話をよーく聞け!」
『は、はい!』

 それでーーいいんだーー

ーー数日後ーー

「伊勢谷さん!」
「ど、どうしたの、晴ちゃん」

 晴ちゃん曰く、美雨さんがさらわれたらしい。犯人は、黒フードの男らしい。

「助けに……行けますか?」
「うん、これでも七瀬さんに教わってたんだ。行けるさ!」

 そうだ。七瀬流の技を見せるいい機会だ!
 でも、なんだろう。この違和感は。この、胸騒ぎは。
 なにか、むしゃくしゃする。モヤモヤする。それにーーあの美雨さんがそう簡単にさらわれるか?

(ごめんなさい、伊勢谷さん……あなたに、辛い思いをさせちゃいますけど……それが、あなたのお父さんの選んだ道なんです)

 その後、僕の元に掛かってきた電話により、近くの倉庫にいることが分かった。
 そしてーー倉庫に向かった。

「美雨さんを返せ!」
『それは出来ない』

 機械のような声だった。
 まるで、招待を隠しているように。

「お前は何者なんだ!?」
『教える必要は無い』

 その答えは、殺せ。と言っていた。
 僕は、構わずに銃を向けた。

『そうだ、それでいい』
「抵抗……しないのか……?」
『抵抗してどうなる?』

 それは、誘拐した罪を償っての言葉だった。

「お前ーー死ぬのが怖くないのか?」
『辛いさ。ただ、今まで死ぬ思いをしてたんだ。それに比べたら楽さ』

 死ぬよりも辛いこと……? 一体、どういうことだ……?

『まあ、いい。娘は返す』
「え……」

あっさりだった。あっさりと、人質を開放した。

「お、お前、何がしたいんだ!?」
『この任務は俺を殺す任務だ。聞いてないか?』

 一体……どういうことなんだ……?
 事が進みすぎている。僕の知らないところで。

「聞いてない……でも、なんの関係がある!」
『それはーー』

 黒フードの男(?)がフードを外したーー

「う、嘘だろ……?」

 冗談だと思った。冗談だと思いたかった。
 だってーー

 死んでいるはずの男がそこにたっていたから。
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