引きこもりの僕がある日突然勇者になった理由。ファイナル

ジャンマル

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引きされ

未来の君へ

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 ーー虚無感が残った。
 虚無感だけが残った。

刺されたのは事実だ。だがーー

「ど、どうなっている!」

 リターン・フューチャー。自分を自分に上書きしたのだーーだが、なんだろう、この感覚は。
 今まで感じたことのないほど、だるい。

『それはね、世界線干渉への罰だよ』
「え……?」
『君がクールタイムと呼んでいたもの。あれは世界線干渉への罰なんだ』

 意味がわからなかった。干渉への罰……?どういうことだ……?
 クールタイムが世界線干渉への罰? 何を言ってるんだ?

『聞いてないかい? 箱を持ったものの末路。君の父親の末路を』
「んなもん知るか!!」
「い、伊勢谷さん……?」
「あ……いや、これは……その……」

 離れていく。だんだんと。離れていく。手に取ってわかるように、人が僕から離れていく。

「た、確かに、私はお前を刺した! なのになんで……」

 化物。僕は、そう呼ばれた。……父さんも、同じ気持ちだったのかな?

 この虚しさを。この虚無感を。父さんは味わい続けたのだろうか?
 死ぬよりも辛いーーこの、化物と呼ばれ、人が離れていく感覚を。

「……世界戦を、変える……」
「それでいいのかい?」
「ケビンを生き返らせる」
『え?』

 ジャンヌ・ダルクすらも驚いた僕の言動に、果たして賛同してくれる人などいるのだろうか。

『い、生き返らせてどうするの!?』
「……僕の人生をやり直す」
『えっ!?!?』
「僕は今日から、伊勢谷慎二じゃない! ーー木山春斗だ!!」

 そうだ。父さんの意思を継ぐならそうするしかない。そうさせて欲しい。

『どういう意味か分かってるの!?』
「同じことを繰り返してもいい!!」
『……なら、止めないわ』

 ケビンを生き返らせる。そしてーー

「今日から僕は木山春斗だ」
「え、お、おう」

 もちろん、このケビンは父さんの記憶のない世界線のケビンだ。

「旅に出よう。ケビン」
「いいのか?」
「いいんだ」

 みんながいない世界線。そこで、僕は暮らす。
 新しい人生をーー

「で、どうするんだ」
「勇者を育成しよう」
「勇者だぁ? なんだ、それ」
「取り敢えず、まずはブラック企業を潰そう」
「お、おう?」

 こうして、僕の新たな人生が始まった。
 木山春斗としての人生を。決められた人生を。

 僕はーー生きていく。
 父さんと同じ結末になっても、それは仕方ないことだろう。それも含めて、僕は父さんの意思を継ぐのだから

 あれから数年。僕とケビンは、ベストパートナーになっていた。
 世界各地の紛争を止めたり、そんな危険な仕事ばかりでも、ケビンは僕に、付いてきてくれた。だから、彼には本当に礼を言わなきゃな。

「ケビン、行くぞ」
「あいよー」

 今は一段落、色々と終えて、新しい出発地へと乗り出そうとしていた。

「調整、終わったのか?」
「もちろん」

 あれから僕の正確は変わった。明るい性格から、少し大人しい性格へ。昔あったノリも、今じゃまるっきり面影がない。

「じゃ、俺は先行ってるぜ」
「ああ。じゃあ、向こうで会おう」

 そう言ってケビンと別れた。
  なあに、心配要らないさ。あいつは、今は離れるだけ。あとで、合流するんだもの。

「さーてっと……お仕事お仕事」

 今日の仕事は、麻薬の取り締まりである――

「おい、はやくよこせ!!」
「あー、すいませんねえ……あいにく、うち、宅急便なもんでね」
「何ふざけて――」
 
 ケビンの銃がうなりをあげる。

「次、無駄口叩いたら次は命取るぞ」
「す、すいませんでしたあああああああああ」

 と、ようやく僕は合流する。

「おう、まってたぜ」
「ごめん。遅れた。で、どうだ?」
「ばっちりだ」

 現行犯。僕たちは世界中の特務機関、「Redfox」から命を受けているから、現行犯で取り押さえられる権利がある。

「じゃ、俺は行くぜ」

 ケビンが向かった先は、南にある港だった――

 ケビン・アルベルト。
 redfoxでも図が抜けている程の実力者だ。
 一度は死んだーーいや、彼はもう本来ならばいてはいけない存在だ。
 でもーー俺の望んだ世界。全員が必ず生きて帰れる世界に……!

「さて…次の仕事か」

次の仕事はーーヤクザの取締か。
 こいつは骨が折れる。毎度毎度、腕をおられるわ、足を怪我するわ、本当はしたくない。でも、上層部に見捨てられたら僕達は終わりだ。
 
 ケビンは今港に向かってる。俺1人でーーか。

「はぁ…仕方ない…」
 
  特殊なチューンを施した俺のイーグルを見つめながら、何かを思う。

「……大丈夫、死ぬわけないからな」
 
  遺言……そんなもの要らないはずだーー


「おら、あんさん、覚悟できてんでしょうね?」
「か、覚悟ってなんだよぉ!」
「指詰めですよ。知ってるでしょ?」
「い、嫌だぁぁぁぁ」
「入った時点でーー」

 バン。
 火薬の匂いと発泡音が鳴り響く。

「な、なんだ!」
「Firefoxだ。現行犯で逮捕する」
「んだと、舐めやがってぇぇぇ」
 
 バン。
 
 二撃目は、容赦なく心臓を貫いた。

「抵抗するからですよ……さて、お前らはどうする」

 周りは黙り込む。

「全員逮捕だ」

 こうして、任務はひとつ終わった。
 視認が出た場合はFirefox内で機密に処理される約束だ。
 そしてーー

俺ととケビンは今、アメリカに旅立とうとしていた。
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