引きこもりの僕がある日突然勇者になった理由。ファイナル

ジャンマル

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引きされ

慎二

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  親殺しをさせた理由。んなもん特にない。あいつが、殺されるなら慎二がいい。そう言うと思ったってことだ。それ以外に理由はねぇ。
 だが、あいつ亡き後も俺は箱を探し続ける。
 日本への攻撃ーー俺の希望だ。俺から家族を奪った日本を許すな。俺から全てを奪った日本を許すな。
 だからーー復讐の為に箱を使う。パンドラを。

「支部長、依頼です」
「おう、行ってくる」

 それまではこうして今までの様な生活を送る。そしてーー時が来たら。絶対に。復讐してやる。
 日本人へ。

 今日の以来も密輸の取締か…最近多いな。ここもそろそろ離れ時か? いや、箱を見つけるまでの辛抱だ。
 復讐鬼とでも言うべきかな。この場合は。
 春斗に協力していたのは好き好んでじゃない。復讐のために利用したんだ。そして――今回も。一人の日本人へ、復讐を成功させた。いや、この場合は二人か。

「見つけたぜ」

 さて、密輸は罰当たりだからな。粛清させてもらうぜ。

「さーて、坊や。お遊びはそこまでだ」
「あ?」

 ばん。と、鳴り響く火薬のにおい。

「な、なにすんだてめえーー」
「……」

 ばん。
 ばん。
 ばん。

 三度音はなった。
 その鉄の苦いにおいと、火薬の煙たいにおいは、俺の身体を――いやした。

 ーーケビン・アルトベルト聞いていたよりはいい感じそうな人だけど、果たしてどうなんだろう。偽善。正義。どちらに属すのか。はたまたどちらにも属さないのか。僕はそれを見極める必要がある。
「伊勢谷さん、今日の任務です」
「うん」
 あの日以来、僕は一度勇者になることをやめた。それでも、父さんの意志を継ぎたいと思った。思いたかった。だって、彼が目指していた理想は遠い理想であっても、素敵で、感動的で、やらなければいけないことだったから。

 ーー争いのない社会。
 一人の男が目指した社会は、遠い理想にすぎない。それでも、理想を求めて散った男。悲しくも、皮肉なことに、争いの中で死んでしまった男。たとえ僕があった男が偽物だったとしても、彼が求めていた理想は変わらない。変えられない。
彼を知る唯一の人物出る、ケビンという男は、果たして何を思い、何を願ったのだろうか。
 その先に待っているものふがたとえ争いだとしても、僕は構わない。だって、その争いを止めればいいのだから。

「ねえ、美雨さん」
「はい?」
「僕にさ、合わせてよ。三国エルザって人に」
「でも、彼女は日本支部の中でもトップの問題児ですよ?」
「いいんだ。彼女に聞きたいことがある」

 僕の勇者としての道はーー新たに始まった。


 父さんに昔聞いたことがある。
 何でも叶う箱。何にでもなれる箱。
 聖女の地を浴び、聖女の死を見つめた箱は、何事にもなれる可能性を秘めた禁断の箱ーー
 パンドラ。
 そう言われた箱は、知るもの全てに不幸をもたらした。死を持って償われるその箱の存在は、もう隠しきれなかった。
 箱の存在は隠し通されてきた。しかし、その存在は、今、明かされようとしていたーー

「さて、日本人の諸君。今日は大事な話をしなければならない」

 そう言って始まった。

「フランスに、我が国は攻撃を仕掛けようと思う」

 その一言で、国民は黙り込んだ。何も言えなかった。何も言わなかった。

「フランスに、渡してはいけない! 禁断の箱、パンドラを!!」

 団結する国民。そしてそれは、フランスとの争奪戦を意味していた。
 ーー当然、国からの特務機関である僕達は最前線に送られる。
 せめて、二人はーー

「では、これよりフランス進行作戦を説明する!!」

 その言葉は何事も無かったかのように、受け入れられた。そして、箱を手に入れたものには絶対が約束された。

 そうして始まってしまった国家間の争い。
 僕達は当然ケビンと戦うことになる。
 ……そうなれば、勝ち目はないだろう。
 だけど、必ず箱を手に入れてみせる!!
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