引きこもりの僕がある日突然勇者になった理由。ファイナル

ジャンマル

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引きされnext

next

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 過去へ戻って来た。ここで、伊勢谷さんを探す。
 変わっていない場合どこに居るかは検討がついている。
「……この時間帯じゃ、急がないと……」
 この時間帯じゃ、もうすぐ施設の完成を見た後、行方をくらませてしまうから。だから――急がないと……!
 急いで走る。この場から走れば、全力ならば、つくはずだ。
 急いでバスに乗り込む。
 後2時間。後に時間しか、時間がない。
 バスに乗り込んでから、落ち着けなかった。

 失敗すれば、圭の事を裏切ってしまう。
 会えなければ、next自体無くなってしまう。そうなってしまえば、もう私が生きていける希望が無くなってしまう。
 あそこが――あそこだけが私の居場所だから。
 時計を見ながら、焦りながら、バスの定着ボタンを押す。
 降りてからは、全力疾走だ。

 バスに乗ってから40分。もうすぐ、到着する。
 バスが止まってからすぐ、私は降りた。そして、そこから一気に走る。
「間に合え、間に合え……間にあえ……!!!」

 急いで、ついても、誰もいなかった。
 美雨もおろか、伊勢谷さんも、誰も。
「え……?」
 後ろで鳴り響く銃声。
 この場は、戦場に変わっていた。一体、何故。どうして。わからない。わからないけど、この状況、かなりまずい。
 まずいというか、また、また……過去へ、飛ばないと……

 銃弾が、私の足を貫く。
 あれは、強盗団だ。おそらく、目当ては箱。

 どうすれば、いったいどうすれば。
 私は、考えるのをやめた。

「飛べええええ!」

 そうやって、幾度と繰り返してきた。何度も、彼が死ぬところを見てきた。それてもーー結局、報われなかった。救われなかった。

「ねえ、ヘレンはさ」
「?」
「コスモスの花、好き?」
「え、なんで?」
「コスモスの花言葉。平和なんだよ」
「へぇ……圭って物知りね」

 そんなくだらない会話だった。それが、最後に交わした会話だった。
 それ以降、彼とは話せていない。話してすらいない。
 もし話せてればーーそんな後悔だけが蘇る。

「もし、もしだよ? 私が、未来から来たって言ったら、圭はどうする?」
「そんな事言ったところで変わらないよーー」

 あの時、彼がなんて行ったかも覚えてない。
 私はーー所詮そんな人間なんだ。

「おい、キミ」

 話しかける人影があった。暖かく、冷たくーー人の肌の感触だった。
 久しぶりにーー人に会った。

「君、行方不明になってたって言うーー」
「へ、ヘレンです……」

 それは、確かに、伊勢谷さんだった。

 その後、私は無事に伊勢谷さんと、再会した。

「君、ヘレン=プランだよね?」
「は、い……」

 足を怪我していて、あまり声が出せなかった。かすれた声で、出来る限りの返事をする。
 その懐かしい声は、確かに伊勢谷さんの物だ。

「施設にこないかい? 親がいないこの為の施設を用意してるんだ」
「そ、そこにーー」
「ん?」
「花園、圭は、います、か?」

 息が切れる。それ以上に、足に激痛が走っていた。足を見れるだけの気力はない――それ以上に、圭の事が気になった。

「そんな子、いた気もするけどなあ……もう、多くの子がいて忘れてしまったよ」
「ですよね……」
「とにかく、治療しなくちゃ」
「は、い」

 そうやって運ばれた。施設に。

 ――

「みんなー。ご飯だよー!」
「ごめんな、ヘレンちゃん」
「いいんですよ。これくらいっ!」
「あのさ、ヘレンちゃん」
「はい?」

 引き止めなきゃ――ここで――引き止めなきゃ――

「僕は、旅に出ようと思うんだ」
「え?」

 声が出なかった。行動に移せなかった。
 どこかへ行ってしまいそうで、どこかで消えてしまいそうで、胸が苦しくなった。胸が張り裂けそうになった。

「世界にはもっともっと、救いを求めてる子たちがいる。そう思わないかい?」
「そう……ですね……」

 声のトーンがさがるのが自分でもわかった。それでも、「いかないで」そんな一言が言えなかった。

「もしかして――ついてきたい、とか?」
「そ、そんなこと! なくは、無いですけど……」

 ……

「ここは、任されてくれるかい?」
「それはいいですけど……」

 行かないで。

「じゃあ、行くよ」

 行かないで。

「ま、まって――」
「ん? まだ何か?」
「なんでも……無いです……」

 言えなかった。約束が――守れなかった。
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