引きこもりの僕がある日突然勇者になった理由。ファイナル

ジャンマル

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引き英

勇者講座2

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 英雄へと名をはせた男がいる。彼の名を、伊勢谷慎二。そして、彼の職業は、勇者だ。彼もまた、被害者である。パンドラの、神の被害者である。故に――彼には目的がなかった。何でも叶ってしまうから。なんにでもなってしまうから。それは神に等しい行為だった。神になれてしまう行為だった。
 青年は悩んだ。箱の使い道に。箱をどうするかを。箱に――何を願うのかを。神にでもなんにでもなってしまえ。そう言われた青年は、また箱の呪縛へ足を踏み入れよううとしていた――

「……これが、この世界線の……」

 見た目が変わっていた。まあ、それもそのはずだ。変わってなんぼだからな。まるで、ランダムキューブと呼ばれるダンジョンだな。これでは。何度やっても変わってしまう。何度見ても変わっている。それは、事実なのだから。

「……美雨」
「はい」
「僕はこれからどうなるかわからない」
「え……?」
「見つけてしまったんだ。禁断の箱を。禁断の果実に等しいものを」

 最初は混乱していたけど、何かを察したようで、すぐに返事をくれた。

「死ななきゃいいんです! 人間死ななきゃ平気ですっ!」
「ありがとう」

 これで――残すものは何もない。後は――

 さて、どうしたものだろうか。これから、どうするか。一人で乗り込み、箱を手に入れ、後は――うん。どうしようか。願い事をするのもよしだけど――

「ねえ、美雨」
「はい?」
「何でも叶う――って言ったらさ、どうする?」
「そりゃあ――」

 晴ちゃんを生き返らせる。だろうか。しかし、そんな甘い考えではなかった。

「永遠を望みますよ」
「え?」
「人間だれでも不老不死は憧れですっ!」

 そりゃあそうだけど……と、突っ込むのもなあ……取り合えず、僕は自分の願いを探すことにした。
 ――そう。旅をすることに。決めた。

「美雨」
「はい?」
「自分探しの旅――したいんだ」
「……」

 当然の反応だろう。それが普通だ。だけども――

「いいんじゃないですか? たまにはやるだけやってみても!」

 それは励ましの言葉だった。――ありがとう。これで頑張れる気がする。そして――僕は変わるんだ。英雄に。


 さて。まとめよう。誰でも英雄になれる方法を。
 小さなことから始めてもいい。役に立てばいい。そして――やがてそれは人類の偉業へとつながるかもしれない。未来永劫へ語り継がれるかもしれない。それは、勇者というのにふさわしいだろう。
 僕が勇者になったのは、父さんの時代から決まっていたことだけど、みんなは違うはずだ。率先して誰かの役に立とうとする。率先して誰かの役に立つ。
 同じように見えて全然違う。それに――英雄とは、人類のんし遂げなかったことをした人とのことを言う。

 誰もが英雄になることが出来る。科学でもいい。魔法でもいい。これまで人類がなせなかった「偉業」を達成すればいいんだ。人はそれぞれ違う。だからこそ、誰にでも英雄になる素質があるんだ――
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