引きこもりの僕がある日突然勇者になった理由。ファイナル

ジャンマル

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引き英

パンドラ

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  あの後、半蔵を探したが見つからなかった。おそらく――もう――死んでいる。燃え盛る火炎の中での生存は不可能だと僕たちは判断したからだ。仮に生存できていたとしても、腕の1本や足の1本無くなっていてもおかしくはないだろう。

「気を落とさないでください……伊勢谷さん」
「ありがとう……美雨さん」
「むむ」
「……? あっ……」

 忘れてた……まあ、仕方ないか。色々あった後だしね。それに――そうだ。忘れてた。箱を見つけたんだ。あの中に確かに。
 何かがずれ始めている。この世界線で。……僕が出るまでもないか? いや、出よう。僕が出よう。箱の事なら僕以外に適任者がいない。というか、この世界線では箱の一件の記憶はみんなにはない。ならば、僕が行くしかないだろう。

「伊勢谷さん?」
「ごめん。急用」
「えー」
「ごめんってば」

 ……仕方ないんだ。今回ばっかりは。箱は処分しなきゃいけない。そう決めたのは僕なのだから。
 仮に誰かの手を借りようものなら、それこそこんな世界にした意味がなくなってしまう。箱のない世界――平和な世界――それこそが僕の望んだ世界で、誰もが望む世界なのだから。

「じゃあ、行ってくる」
「必ず、戻ってきてね」
「うん」

 そう言って、僕は単身で乗り込むことにした。

 ジャンヌの遺産。パンドラの聖遺物。ゼウスの審判。様々な呼び方のある箱を、人はジャンヌの遺産、パンドラと呼んだ。その箱はすべてを叶え、すべてを捨てさせる禁断の箱だった。そして今――その箱がよみがえろうとしていた。
 僕の願い。それは、パンドラのない幸せの世界。の――はずだった。しかし――時空干渉。それを成すのは過去の僕だろう。未来が、変わったんだ。パンドラの消えない未来に。パンドラの存在する未来に、変わったんだ。

「冗談じゃねえぜ……全くよ……!!」

 そう言って飛び出した僕は、再び議事堂を目指した。
 二日たったが、議事堂はあの後閉鎖。完全な廃墟と化し、日本政府は総理大臣による政治を取り戻した。が――そんな議事堂に人影があった。

「お前は!!」
「ちっ、ばれたのか!?」

 間違いない……こいつだ……! 晴ちゃんを殺せと命令を出し、ケビンを復讐鬼へと変えた男だ!!!

「お前だけはあああ!!」

 ばあん。

 銃がうなる。そして、男が倒れる。そう――倒れたのは、僕の方だった。

 いき……てる……? そんな、なんで。ふと胸ポケットを見る。そこにはーー

「……お守り……」

 出る前、美雨さんから貰ったお守りが、僕を守ってくれたんだ。まあ、鉄製のお守りなんてやりすぎだけど。それでも、助けられたのに変わりはない。後で、感謝しないとな。
 ……にしても、どうするかな。これから。3対1か。覆らないよな。この状況は。まあ、それも仕方ないか。僕のやってきた過ちかもしれないからね。さてーーここからだっ……!!!

「はぁぁぁぁぁ!!」

 重心をぶらさずに撃つ。二発撃つ。1発は、見えないだろう。何故なら、真後ろだから。これが、父さんから教わった最終奥義、「ネヘモス」だ。名前に特に意味は無い。
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