引きこもりの僕がある日突然勇者になった理由。ファイナル

ジャンマル

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出会い

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「さあ、魔女。覚悟はできたか?」

 問われたのは、私にとっては、人生最後の質問である。

「……もう、この世に未練はありません」
「ならば―――貴様の人生もここまでだ。我々兵士たちを騙し、我が国を騙した罪は重いぞ。魔女は魔女らしく……その人生、火あぶりで終わるがいい」

 火あぶり。私に言い放された宣告だ。この時代、魔女を殺すのには、火あぶりが最も多かった。魔女狩り、火あぶり、追放―――魔女は、発見され次第、『殺される』―――そして私は、フランスを百年戦争の勝利に導いた。
 しかし、私は、国を騙した魔性の魔女だ。それだけに……私の処刑には、シャルル皇太子も見ている。
 そこで、私は死ぬ。国を騙し、仲間を騙し、戦友を騙し―――そして、たった一人の親友すらも騙した魔性の魔女である私は―――ここで死ぬ。神も、そう言っている。
 親友……、私の唯一無二の親友、『リリ・アーデ・フェニミン』の話を、人生最後の話を、私は日記に書き記した―――

 ~~~~~~

 百年後のフランス。そこで、一つの日記が見つかった。
『アーデの手帳』
 その日記は、そう呼ばれていた―――
 今日は、その日記に記されていることを語っていこうと思う―――だって、私は、語りおじさんだからね。

~~~~~

 8月13日 ―リリと出会った―
 日記は、この一言のサブタイトルから始まっていた―――

 私は、とある施設に預けられ、育った。しかし、施設で友達がいるかというと、居ない。
 でも、施設に入って3年、私は15歳になるとき、私に初めて、友達が出来た。

「ねえ、あなた、いつも一人だよね?」

 それが、彼女の私に対しての最初の声だった。
 施設に居た私に話しかけてくれたのは、彼女が最初で最後だった。

「あ、あの―――」
「あ、いきなりごめんね? あなた、寂しそうだったから―――」

 実は私も、ずっとここで一人なんだ。彼女は、そんなことを、私に笑って話して見せた。
 そうして笑っていられるんだろう。私には、ずっとそれが謎だった。
 でも、彼女は続けるように私に言った。

「私も、声をかけるのは苦手なんだ。でも、あなたと私は似ている。そう考えると、話しかける勇気が出たの」

 だから、私たちはもう、友達だね。彼女の言葉に、私は涙が出てしまった。泣きながら、友達だよ。友達になれた。そう泣きながら彼女に言った。

 最初で最後の友達。私は、生涯彼女以外に友達は作らなかった―――

 8月25日 ―リリと初めてのお出かけ―
 日記は、何故か13日から25日までの間の期間を書いていなかった。
 それについては、ここの中に書いてあった。

 今日は、私の最初の友達、リリと初めて出かける。10時にあの噴水で待っててね。
 彼女から私を誘ってくれた。日記は、13日から今日までで飛んでいるが、私は、あの日からあまりにも嬉しくて、日記なんて忘れていた。それだけだ。
 リリを待っている間、私は、彼女に何かお礼が出来るか、それを考えながら噴水の近くのベンチに座っていた。

 考え込んでいる間に、時計塔の針は9時57分になっていた。時計塔を見ている間に、リリが到着した。

「あれ? もしかして、待たせちゃった?」

 彼女に待っていた、と言ったら、なんだか彼女が悪いことをしたみたいになってしまいそうだったから、
ううん、今、来たところだよ。そういってしまった。

「じゃあ、行こうか」

 行く場所、そういえば聞いてないや。言われてから思い出した。
 そういえば、どこに行くの? そう尋ねると、彼女は、言うの忘れちゃってたね。今から行くのは、あなたが多分、喜ぶ場所だよ。そう答える彼女に、それじゃ答えになってないよ。そう言って、二人でずっと、笑っていた―――

 ついた場所で、まず、私は彼女にありがとう。思わずそう言ってしまった。
 オルレアンの大橋―――私は、ずっとこれが見たかった。後で聞いた話だけど、彼女も来たのは初めてで、ずっと行きたいと思っていたらしい。
 そういえば、なんだか似ている気がした。そう言ってたっけ。ああ、だから、私がここに来たいってわかったのかな。

「ねえ、そういえば、この話、知ってる?」

 どんな話? 私は、興味本位と彼女の太陽のような笑顔をみて、そう答えた。

「もうすぐね、このオルレアンに、シャルル皇太子が来るんだって」
「え? あの、シャルル皇太子が!?」

 シャルル・マーニ。このフランスをまとめている皇太子だ。めったに姿を見せないという彼が、このオルレアンに来るというのだ。驚きを隠せなかった。

「だからさ、一緒に行こうよ」

 うん。それしか言えない。嫌なんて、彼女の前で絶対に口には出さない。

 それにしても、シャルル皇太子はなぜ、こんな何もないオルレアンに来るのだろうか―――それが、私には疑問だった。彼は皇太子。この国で一番偉く、この国で一番、お金に恵まれてる。そんな彼が、こんな街に来るのに、疑問を隠せなかった。
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