ファンタジア!!

日向 ずい

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第1章 「俺たちの出会い。」

俺たちと優の出会い

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 それから、俺たち4人は晴れてバンドを組むことになった。

 でも、まだ名前もなくて...名前はどうしようかと話しながら、今日はバンドで使うための楽器の付属品をそれぞれ買いに、大学からそれほど遠くない楽器店に来ていた。

 店に入ると店の奥から店主のおじさんがゆったりと出てきた。

「やぁ、いらっしゃい。あっ、虎雅くんじゃないか!!最近、お店に顔を見せてくれないから、元気にしているのか心配していたんだよ...??(汗)」

 おじさんは、虎雅のことを目に留めると途端に嬉しそうな顔で、親しげに話しかけてきた。

 虎雅は、そんなおじさんに笑顔で軽く会釈するとこう言った。

「いや、すみません...。おじさんも、元気そうでなによりです。(笑)...最近は、少し大学の方も忙しくて...今日は、俺のバンド仲間を連れてきたんです。いい品が入っていたら、紹介してください!」

 「あ~、これはこれは。また、初々しい可愛い大学生のお客さんが来てくれて、おじさんも嬉しいよ~!ゆっくり見ていってね。」

 こう言うとおじさんは、俺たちに軽く会釈をして、店の奥へと消えていった。

 おじさんがバックヤードに消えてから俺は、隣に立っている虎雅にこっそりと耳うった。

「なぁ、虎雅???...お前...あのおじさんと知り合いなの???」

「ん??...あー、そう言えば、翔真にはまだ言ってなかったな...。俺が大学生になって初めて来た楽器店がここなんだ。おじさんのおかげで、俺はこれまでギターが上達したと言っても、過言ではないぐらい...。実は、ここのおじさんに...『優にーちゃーん、俺もう疲れた~!!帰ろーよー!!!(汗)』...???」

 虎雅が昔のことを懐かしむそんな顔をして話をしていたが、その声を遮るように大きな声を出した小さな男の子が、お店のバックヤードから走ってでてきた。

 そんな男の子を不思議に見つめていた俺たち4人は、同じくバックヤードから男の子を慌てた様子で追いかけてきた男の人に目を移した。

 男の子を追いかけてきた男の人は、慌てた様子で男の子の名前を呼んだ。

「もう...焚(たく)!?ダメだろ???今帰っても、お母さんとお父さんは、家にいないし、怒られちゃう...。だから、もう少しここに居ようか。ねぇ??(汗)」

 焚と呼ばれた男の子は、男の人の方を振り向くと頬を膨らませて、反抗した。

「優にーちゃんは、いっつもそればっかりじゃん!!!俺は、外で遊びたいし、お母さんとお父さんにも会いたいんだよ!!!なのに、なんでいっつも兄ちゃんばっかりなんだよ!!!(怒)」

 焚は、こう言うと優から背を向けて走って店を出ていこうとしたが、店の入口に立っていた奏也に頭からぶつかってしまった。

「あっ...えっと、ぶつかった...。あの...えっと...僕、大丈夫...???...えっ、ちょっと待って...。七緒...俺何もしてないのに、泣いちゃう...助けて...!!(汗)」

 奏也にぶつかった焚は、奏也の顔を見るなり、目に涙を溜めて今にも泣きそうな顔をした。

 そんな焚の様子に奏也は、途端に焦った顔を隣に立っていた七緒に向けると、七緒に助けを求めた。

 七緒は、奏也の様子に小さく息を漏らすと

 「あー、ごめんね...。えっと、焚ちゃんだっけ???...何があったのか分からないけど、お兄ちゃんの言うことはちゃんと聞いた方がいいよ???お兄ちゃんは、きっと焚ちゃんのことを心配しているからこそ、いつも一緒に居てくれているんだと思うし、ねぇ??お兄ちゃんのところで、もう少し大人しくしていようよ。」

 七緒は、焚の前にしゃがみ込むと焚の両腕を掴み、優しく微笑みかけた。

 七緒は、焚を宥めると優しく頭を撫でて、焚の背後に立っている優の方をじっと見つめた。

 そして、スっと立ち上がると焚の肩を掴み、そのまま優の方に歩かせて行った。

 優の前に来ると七緒は、ニコッと微笑みかけ、こう言った。

 「優...さん??でしたっけ??...偉いですね...。俺には、きっとこんなに小さな子のお世話なんて、できないと思います。ほんとに尊敬します。」

「...いや...その...ありがとうございました。...ほら、焚??お兄さんに頭下げて??(汗)...それでは、俺はこれで...。」

 優は、笑いかけている七緒に無表情で頭を下げると焚を連れて、お店のバックヤードへと戻っていった。

 優と焚がバックヤードに消えてからしばらくすると、綺麗なピアノの音色が聴こえてきた。

「...ねぇ、これってあの優さんが弾いているのかな???」

 こう言った七緒の横にたっている奏也は、首をかしげて七緒に尋ねた。

「...???だったら、何かあるの???...と言うよりも、俺はチョコレート食べたいんだけど...。ねぇ、ここのお店ってイートスペースあるかな???」

「...はぁ、奏也の馬鹿!!!...もう知らないよ...。...ねぇ、虎雅さん。虎雅さんは、どう思いますか???」

 マイペースの奏也に呆れた七緒は、目の前にたっている虎雅に声をかけた。

 七緒に声をかけられた虎雅は、七緒を振り返ると、目を見開いて驚いた顔をしていた。

「...七緒も分かるか??このピアノを...あの優という男性が弾いているのであれば、これは...本当にすごい...。」

  虎雅の様子に俺も不思議に思い、虎雅におもむろに尋ねた。

「どうして凄いんだ???...普通にピアノ演奏をしているだけだろ???」

「お前にも...分からないのか...。いいか、この曲が弾ける人は...世界で片手で数えられるほどしか、いないと言われているんだ。...何せ、この曲は複雑なピアノの指移動に加えて、ローテンポとアップテンポが、何重にも重なっていてとても難易度が高い曲だからな...。」

「さらに...もうひとつこの曲の難易度が高いと言われる理由は、楽譜がないんだ...。楽譜を作ったらいけないと、作者がこの曲を作った時に言ったらしく...それ以来、どの国でもこの曲の旋律を楽譜におこしたら、世界の裏組織に姿を消された上に制作した楽譜もこの世から消されてしまうんだ...つまりはね、とても取り扱いの難しい曲だということなんだ...。そんな曲を一体どこで...。(汗)」

 虎雅の言葉に、更に付け足した七緒を含め、そこに立っている4人は、じっと固まったまま、バックヤードから聴こえてくるピアノの旋律に聴き入っていた。
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