13 / 102
第2章 「俺たちの仲間に!」
俺たちと一緒に...。
しおりを挟む
虎雅と翔真は、いつもの雰囲気で会話を繰り広げながら、いつの間にか優の家にたどり着いていた。
優の家は、とても綺麗とは言い難い...古い日本建築の家だった。
「...ここが...優さんの家??...なんか意外。」
「あぁ、間違いないだろう...お前、失礼だぞ??......でも、表札が...紫翠...では無い??」
虎雅と翔真が玄関前で、本当にここが優の家であっているのか話し合っていると、その声に気がついたのか、中から幼稚園??の制服を着た男の子が出てきた。
「お兄ちゃん達...誰???」
よく見ると、男の子は...この間、優と一緒におじさんの楽器店に来ていた子と同一人物だった。
翔真は、その事に気がつくと男の子の前に屈み、ニッコリと微笑みかけ、こう話し出したのだった。
「優さんは...君のお兄さんは、今家にいるかな??お兄さん達、優さんと少し...お話したいことがあって...。」
「ん???...あっ、あの時の変なお兄ちゃんたちか!!!...ゆう兄ちゃんだね??ちょっと待ってて!!」
こう言うと、小走りで家の中に入っていき、暫くすると中から、明らかに警戒心を露わにした優が、訝しげな顔をして玄関から外に出てきた。
「...っ!??」
虎雅と翔真のことを目に留めると、優は、焦った顔をして急いで家の中に戻ろうと踵を返した。が...
そんな優の様子に虎雅は、慌てた声をかけて引き留めた。
「あっ、ちょっと待ってください!!!...昨日は、大変失礼しました。...その...少しお話したいことが...『...なんですか...俺は、話すことなんて何も...』...その...悪魔の曲についてです...。『...っ!???』その~...少し...散歩でもしませんか...???」
虎雅の言葉に、一瞬肩をビクッとさせた優に、虎雅は有無を言わさない質問の仕方をして...あまり乗り気でない優を無理やり散歩へと誘ったのだった。
「...。」
「...。」
「...。」
虎雅も翔真も優も、ただ己のコツコツという歩みの音だけが静かに響く中、歩き続けていた。
そんな沈黙を破ったのは、翔真だった。
「あの~、優さんは...おじさんのこと嫌いじゃないんですよね...。ただ、怖かったんですよね...。」
「...っ!?いきなりなんですか!?...一体なんのことですか...??俺は、おじさんが大嫌いで『分かるんですよ。優さんが、心配そうにおじさんを見つめている...そんな様子を見ちゃったら...。優さんは、悪魔の曲の恐ろしさについて、既に知っていたんですよね...。』...だから!!そんな...っ......もう、黙ってても仕方ないか...。」
翔真の言葉に始めは、シラを切ろうと必死だったが、翔真に自分の内情を言い当てられ、もう黙っておくことは出来ないと悟った優は、大きく息をつくと...隣を歩く二人にゆっくりと話し出したのだった。
「...確かに俺は、変わっていくおじさんが怖かった...。おじさんは、俺が初めてであった時と、すっかり変わってしまって...君たちが初めてあの店を訪れた時、俺はバックヤードであの悪魔の曲を弾いていた。...俺が弾いている間は、おじさんは音を聴いているだけで、悪魔の曲を弾きたい...極めたいという感情からは解放されるんだ...。あの時から既におじさんは、狂ってしまっていた...。一度、お店が終わった時にどうしてもピアノが弾きたくて、弟達を寝かし付けてから、こっそりあの店を訪れたんだ。...いつもの様に、『やぁ...また、来たんだね!!さぁ、好きなだけピアノを弾いていきなさい。』と言って、バックヤードに招き入れてくれると思っていたんだ...でも、その日は違った。店は何故か真っ暗で...でも、鍵は開いていて...俺は、恐る恐る店の中に入ったんだ。そしたらバックヤードだけ明かりがついていて、怖々とバックヤードに足を進めると...そこには、眉間に皺を寄せて、苦痛を伴いながら、一心不乱にピアノを叩く...俺の知らないおじさんがいた...。俺は、ビックリしてしまった...おじさんが、今まで一度もあんなに荒くピアノを扱っているのを見た事がなかったから...。それに...ピアノを弾いている音が...あんなに雑だったのも...。正直...怖かった...おじさんが...おじさんでなくなるようで...とても怖かった...。だから、俺は君たちが俺をバンドに誘ったあの日に、おじさんから逃げるために...あの店を...あの店から離れることに決めたんだ。」
「...っ...。」
「...それは...。」
優の話を最後まで聞いた虎雅と翔真は、目を丸くして、とても重い話の内容に何を切り出したらいいのかを、ずっと考えていた。
優は、目に涙を溜めてただじっと、月の輝く夜空を見上げていた。
そんな優に翔真は、静かにこう言った。
「その...優さんは...。すみません...俺達も昨日実は、変わり果てたおじさんの様子を見てしまったんです...。おじさんは、俺たちに悪魔の曲の恐ろしさについて話してくれました。...危険物は...悪魔の曲だと...あの曲に取り憑かれれば、一生...終わりのないレールの上を走ることなると...。...だから、優さんがおじさんから逃げ出したのは...自己防衛です...。俺達も...昨日、豹変したおじさんに一回しか会ってないけど...もう、あの店に行きたくないと...おじさんに会うのが怖いと...そう思ってしまいました...。」
翔真の言葉にそれまで黙っていた虎雅も、続けてこう口にした。
「そうだ...翔真...俺も、俺もおじさんに会うのが...怖い...。だから、優さんは...あの場から逃げてよかったんです。自分の身を守るために...逃げるのが正解だったんです。」
虎雅と翔真の言葉に、さらに涙を流した優は、暫く泣き止むことができなかった。
またそんな優の姿を、虎雅と翔真は、優しい表情でじっと見守るのだった。
優の家は、とても綺麗とは言い難い...古い日本建築の家だった。
「...ここが...優さんの家??...なんか意外。」
「あぁ、間違いないだろう...お前、失礼だぞ??......でも、表札が...紫翠...では無い??」
虎雅と翔真が玄関前で、本当にここが優の家であっているのか話し合っていると、その声に気がついたのか、中から幼稚園??の制服を着た男の子が出てきた。
「お兄ちゃん達...誰???」
よく見ると、男の子は...この間、優と一緒におじさんの楽器店に来ていた子と同一人物だった。
翔真は、その事に気がつくと男の子の前に屈み、ニッコリと微笑みかけ、こう話し出したのだった。
「優さんは...君のお兄さんは、今家にいるかな??お兄さん達、優さんと少し...お話したいことがあって...。」
「ん???...あっ、あの時の変なお兄ちゃんたちか!!!...ゆう兄ちゃんだね??ちょっと待ってて!!」
こう言うと、小走りで家の中に入っていき、暫くすると中から、明らかに警戒心を露わにした優が、訝しげな顔をして玄関から外に出てきた。
「...っ!??」
虎雅と翔真のことを目に留めると、優は、焦った顔をして急いで家の中に戻ろうと踵を返した。が...
そんな優の様子に虎雅は、慌てた声をかけて引き留めた。
「あっ、ちょっと待ってください!!!...昨日は、大変失礼しました。...その...少しお話したいことが...『...なんですか...俺は、話すことなんて何も...』...その...悪魔の曲についてです...。『...っ!???』その~...少し...散歩でもしませんか...???」
虎雅の言葉に、一瞬肩をビクッとさせた優に、虎雅は有無を言わさない質問の仕方をして...あまり乗り気でない優を無理やり散歩へと誘ったのだった。
「...。」
「...。」
「...。」
虎雅も翔真も優も、ただ己のコツコツという歩みの音だけが静かに響く中、歩き続けていた。
そんな沈黙を破ったのは、翔真だった。
「あの~、優さんは...おじさんのこと嫌いじゃないんですよね...。ただ、怖かったんですよね...。」
「...っ!?いきなりなんですか!?...一体なんのことですか...??俺は、おじさんが大嫌いで『分かるんですよ。優さんが、心配そうにおじさんを見つめている...そんな様子を見ちゃったら...。優さんは、悪魔の曲の恐ろしさについて、既に知っていたんですよね...。』...だから!!そんな...っ......もう、黙ってても仕方ないか...。」
翔真の言葉に始めは、シラを切ろうと必死だったが、翔真に自分の内情を言い当てられ、もう黙っておくことは出来ないと悟った優は、大きく息をつくと...隣を歩く二人にゆっくりと話し出したのだった。
「...確かに俺は、変わっていくおじさんが怖かった...。おじさんは、俺が初めてであった時と、すっかり変わってしまって...君たちが初めてあの店を訪れた時、俺はバックヤードであの悪魔の曲を弾いていた。...俺が弾いている間は、おじさんは音を聴いているだけで、悪魔の曲を弾きたい...極めたいという感情からは解放されるんだ...。あの時から既におじさんは、狂ってしまっていた...。一度、お店が終わった時にどうしてもピアノが弾きたくて、弟達を寝かし付けてから、こっそりあの店を訪れたんだ。...いつもの様に、『やぁ...また、来たんだね!!さぁ、好きなだけピアノを弾いていきなさい。』と言って、バックヤードに招き入れてくれると思っていたんだ...でも、その日は違った。店は何故か真っ暗で...でも、鍵は開いていて...俺は、恐る恐る店の中に入ったんだ。そしたらバックヤードだけ明かりがついていて、怖々とバックヤードに足を進めると...そこには、眉間に皺を寄せて、苦痛を伴いながら、一心不乱にピアノを叩く...俺の知らないおじさんがいた...。俺は、ビックリしてしまった...おじさんが、今まで一度もあんなに荒くピアノを扱っているのを見た事がなかったから...。それに...ピアノを弾いている音が...あんなに雑だったのも...。正直...怖かった...おじさんが...おじさんでなくなるようで...とても怖かった...。だから、俺は君たちが俺をバンドに誘ったあの日に、おじさんから逃げるために...あの店を...あの店から離れることに決めたんだ。」
「...っ...。」
「...それは...。」
優の話を最後まで聞いた虎雅と翔真は、目を丸くして、とても重い話の内容に何を切り出したらいいのかを、ずっと考えていた。
優は、目に涙を溜めてただじっと、月の輝く夜空を見上げていた。
そんな優に翔真は、静かにこう言った。
「その...優さんは...。すみません...俺達も昨日実は、変わり果てたおじさんの様子を見てしまったんです...。おじさんは、俺たちに悪魔の曲の恐ろしさについて話してくれました。...危険物は...悪魔の曲だと...あの曲に取り憑かれれば、一生...終わりのないレールの上を走ることなると...。...だから、優さんがおじさんから逃げ出したのは...自己防衛です...。俺達も...昨日、豹変したおじさんに一回しか会ってないけど...もう、あの店に行きたくないと...おじさんに会うのが怖いと...そう思ってしまいました...。」
翔真の言葉にそれまで黙っていた虎雅も、続けてこう口にした。
「そうだ...翔真...俺も、俺もおじさんに会うのが...怖い...。だから、優さんは...あの場から逃げてよかったんです。自分の身を守るために...逃げるのが正解だったんです。」
虎雅と翔真の言葉に、さらに涙を流した優は、暫く泣き止むことができなかった。
またそんな優の姿を、虎雅と翔真は、優しい表情でじっと見守るのだった。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる