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第7章「紫翠との熾烈な戦い。」
「全ての終わり、この人生に終止符を...。」
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「...俺は...いえ、私は......本日をもってマフィアから完全に関係を絶つと共に......サンという名前を、今此処にご返上致します。」
俺は、張り詰めた空気の中で、スーツをきちっと着こなし、目の前でフカフカの椅子に座っているコンシリエールに向かって頭を下げていた。
俺が、恐ろしい存在のコンシリエールにこんな態度をとる理由はただ一つ。
俺は、雅の夢を一番近くで応援すると決めていたからだ。
この仕事が終わると同時に、マフィアから完全に足を洗い...俺は、雅の事を一番近くで応援できる...まきだライブ事務所一本で、新しい俺を作っていくと心に決めていた。
だから、今...張り詰めた空気の中、目の前のコンシリエールに深々と頭を下げ、こうして許しを得ようと試みているという訳だ。
言っておくが...コンシリエールにこのようなお願いをするということは、すなわち...
『私はこの組織を裏切ります!!』
と言っているようなもの...。
仮にこの賭けに失敗すれば......俺の命は、空の彼方へと永久に消え去るという訳だ...。
つまり......俺の心臓は、今まさに爆発寸前のところまで、ドクドクと激しい鼓動を刻んでいる。
頭を下げている俺に対して、大きなため息をつくと、コンシリエールは低い声色でこういった。
「...お前は...なんのためにマフィアを捨てる??」
普段と口調の違うコンシリエールに若干緊張感を高めつつ、俺は頭を下げたまま、こう答えた。
「私は...雅という一人の男の子のために...マフィアの名を捨てます。雅...いえ、桜宮虎雅(さくらみや たいが)くんは...私の人生に唯一無二の花を咲かせてくれた...大切な大切な、小さい頃から今まで、私に未来を与えてくれた人なんです。...私は、私の人生の残り全てを彼のために使いたいと心から願っています。...当然、今までお世話になったコンシリエールや部下の皆さまには...頭が上がりません。ですが、それ以上に...私には、虎雅が必要なんです。虎雅がいないとダメなんです。」
俺は勢い余って、マフィアの暗黙の了解を大きく破ってしまった。
俺は、この組織の頭とも言える方の前で、頼み事をしていたにも関わらず、指示があるまで決してあげてはならない頭を、誤って上げてしまい...。
しまったと思った時には目の前で、厳しい表情をしているコンシリエールと目を合わせてしまっていた。
まずいと思った時には、もう遅かった...。
目の前で、眉間の皺を一段と濃くしたコンシリエールが、大きな声で俺にこう怒鳴りつけてきた。
「...この無礼ものが!!!!!...おい、お前ら...!!!」
コンシリエールの言葉を、最後まで聞き終える前に俺は、背後に立っていたコンシリエールの部下に口元を布で押さえられ、強制的に眠らされた...。
恐らく...俺が考えるに、この作戦は失敗しただろう。
俺は、紫翠同様にラットになって殺される可能性が高い。
その証拠に、普段温厚なコンシリエールが、俺と目を合わせた時のあの鬼のような形相...鬼瓦みたいな...その表情で、思い切り怒鳴りつけられたのだから。
あー、出来れば雅の顔を死ぬ前に一度でいいから見ておきたかったな~。
なーんて、今の俺が言えるわけないけど...。
やっぱり無理だよな...。
例え望まなくても、マフィアに生まれちまった以上は......普通の生活...なりたいものになる事なんて...一生叶うわけないんだよ。
クソっ、俺も皆みたいに何でもないごく普通の家庭に生まれていれば、もっと自由があったのかな??
今となっては...もうどうでもいい事だけど...考えちまうなぁ。
俺は、薄れゆく意識の中で、ふわふわと雅と出会った忘れもしないあの時の思い出を、何度も何度も繰り返し思い返していたのだった。
俺は、張り詰めた空気の中で、スーツをきちっと着こなし、目の前でフカフカの椅子に座っているコンシリエールに向かって頭を下げていた。
俺が、恐ろしい存在のコンシリエールにこんな態度をとる理由はただ一つ。
俺は、雅の夢を一番近くで応援すると決めていたからだ。
この仕事が終わると同時に、マフィアから完全に足を洗い...俺は、雅の事を一番近くで応援できる...まきだライブ事務所一本で、新しい俺を作っていくと心に決めていた。
だから、今...張り詰めた空気の中、目の前のコンシリエールに深々と頭を下げ、こうして許しを得ようと試みているという訳だ。
言っておくが...コンシリエールにこのようなお願いをするということは、すなわち...
『私はこの組織を裏切ります!!』
と言っているようなもの...。
仮にこの賭けに失敗すれば......俺の命は、空の彼方へと永久に消え去るという訳だ...。
つまり......俺の心臓は、今まさに爆発寸前のところまで、ドクドクと激しい鼓動を刻んでいる。
頭を下げている俺に対して、大きなため息をつくと、コンシリエールは低い声色でこういった。
「...お前は...なんのためにマフィアを捨てる??」
普段と口調の違うコンシリエールに若干緊張感を高めつつ、俺は頭を下げたまま、こう答えた。
「私は...雅という一人の男の子のために...マフィアの名を捨てます。雅...いえ、桜宮虎雅(さくらみや たいが)くんは...私の人生に唯一無二の花を咲かせてくれた...大切な大切な、小さい頃から今まで、私に未来を与えてくれた人なんです。...私は、私の人生の残り全てを彼のために使いたいと心から願っています。...当然、今までお世話になったコンシリエールや部下の皆さまには...頭が上がりません。ですが、それ以上に...私には、虎雅が必要なんです。虎雅がいないとダメなんです。」
俺は勢い余って、マフィアの暗黙の了解を大きく破ってしまった。
俺は、この組織の頭とも言える方の前で、頼み事をしていたにも関わらず、指示があるまで決してあげてはならない頭を、誤って上げてしまい...。
しまったと思った時には目の前で、厳しい表情をしているコンシリエールと目を合わせてしまっていた。
まずいと思った時には、もう遅かった...。
目の前で、眉間の皺を一段と濃くしたコンシリエールが、大きな声で俺にこう怒鳴りつけてきた。
「...この無礼ものが!!!!!...おい、お前ら...!!!」
コンシリエールの言葉を、最後まで聞き終える前に俺は、背後に立っていたコンシリエールの部下に口元を布で押さえられ、強制的に眠らされた...。
恐らく...俺が考えるに、この作戦は失敗しただろう。
俺は、紫翠同様にラットになって殺される可能性が高い。
その証拠に、普段温厚なコンシリエールが、俺と目を合わせた時のあの鬼のような形相...鬼瓦みたいな...その表情で、思い切り怒鳴りつけられたのだから。
あー、出来れば雅の顔を死ぬ前に一度でいいから見ておきたかったな~。
なーんて、今の俺が言えるわけないけど...。
やっぱり無理だよな...。
例え望まなくても、マフィアに生まれちまった以上は......普通の生活...なりたいものになる事なんて...一生叶うわけないんだよ。
クソっ、俺も皆みたいに何でもないごく普通の家庭に生まれていれば、もっと自由があったのかな??
今となっては...もうどうでもいい事だけど...考えちまうなぁ。
俺は、薄れゆく意識の中で、ふわふわと雅と出会った忘れもしないあの時の思い出を、何度も何度も繰り返し思い返していたのだった。
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