ファンタジア！！

第10章 「俺たちの運命を変える。」

「ファンタジアはこうして始まった...。」

 「あの...SINさん。...急に電話をすみません。いや...それが、少しお話したいことがありまして...。はい、分かりました。...いえ、こちらこそよろしくお願い致します。失礼します。」

 俺は、優に話を聞いた次の日の夜に、自分の家に帰ってから、SINさんに一本の電話を掛けていた。

 SINさんに電話を掛けることとなったのは、優に話を聞いた次の日の昼間、優がまだ練習部屋に来ていないときに、俺は周りに集まっていた月並みのメンバーにこう声を掛けた為である。

 「なぁ、みんなに提案があるんだが....。SINさんに言われていたアイドル...やらないか？？？」

 「えっ、急にどうして...。（汗）」

 そりゃ、そうなるわな...。

 うーん、どうしようかな？？？

 でも、優のことを助けるためにはみんなの力が必要な訳だし....。

 ...仕方ない。

 みんなには、内密にしてもらって...。

 俺は、こう決意すると、みんなに昨日、優が話してくれた内容を包み隠さず話すことにした。

 そうして話終わったあと、俺の話を聞いた翔真は相槌を打ちながら、こう呟いた。

 「...つまりは、優の父親がリストラに遭って、新しい仕事を探していたが...何故か...何処の会社も名前を見た瞬間に、不採用のハンコを押したって訳？？？」

 「まぁ、そういうことだな。」

 「....もしかしなくてもさぁ、それって....あの金持ちの先輩達が企んだことなんじゃないの？？？？」

 俺の言葉に、翔真が珍しく冴えたことを言ったため、俺は勢いよく背後の翔真を見つめると、声を荒げこう言った。

 「あっ....そうか！！！！つまりは、あの先輩達が、企業に対して圧をかけているってことか...！！！！クソっ、どこまで俺たちのことを苦しめたら気が済むんだが...。...でも、そうと分かれば....アイドルになることを条件に、SINさんにあの卑劣な先輩方を、なんとかしてもらう事が、先決なんじゃないのか？？？」

 俺のこの言葉に周りにいたメンバーは、少し考えた後...全員一致で首を縦に振ったのだった。

 そうして俺は、SINさんに電話を掛けると...アイドルとして、SINさんたちのいる事務所に入ることとなった。

 そう...すべては、優のため。

 優の家族を救うために、俺たちはアイドルになり、それで得たお金を優の家に入れることで、SINさんが先輩方の不正・悪質な嫌がらせを止めるまでの間、なんとかする事になった。

 そう、誰も反対することはなく......俺たちの中で、話がまとまったのだ。

 SINさんには、ちゃんと条件を突きつけて、渋々OKをもらったから、多分問題ないだろう...。

 縁がないと思っていたアイドルに、まさかこういった形でなるなんて、正直...誰も予想はしていなかった。

 辛いし気は乗らないが、オレたちは...アイドル『ファンタジア』として、新たな活動を開始する事となったのだ。